ジョーディが2003年に加入したバンド、ア・パーフェクト・サークル(以下APC)。実質的な在籍期間が約二年と短かったこともあって、彼が活動していた時期の映像は残念ながらあまり残されていません。とくにインタビュー映像となると、現在見ることができるものはごくわずかです。
そんな貴重な映像のひとつが、カナダの音楽チャンネルMuchMusicによるインタビュー。2003年9月、彼らの2ndアルバム『Thirteenth Step』発売直前に放送されたようです。画面の隅に「MOD」の文字が見えますが、探せど探せど、正式な番組タイトルが分からず…。【2021.11.16追記:背景の文字に気づきました。「Much On Demand」という番組のようです】しかしこれがなんとも楽しい内容でした! ジョーディと他のメンバー三名(メイナードは不在)が一緒に出演しているのですが、全員のエゴのなさといたずら心が発揮されて、番組全体がちょっとしたカオスと化しています(笑)。
公式な動画ではないためリンクは貼れませんが、ぜひみなさんも「Much Music A Perfect Circle」で検索してみてください。ちなみにYouTubeにあがっている動画は「パート1」「パート2」の二つに分けられていますが、実際は「2」→「1」の順番が正しいようです。そのため、本記事ではこの順番に入れ替えて紹介したいと思います。
それでは、さっそく見てみましょう。
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通りに集まっているファンの姿が映し出された後、インタビューが始まりました。今回の番組収録、どうやら公開スタジオのような場所でおこなわれているようです。トロントにあるMuchMusic(現Much)本社ビルの一階ではないかと思うのですが、確証はありません。スタジオ内にも観覧スペースがあり、所せましとファンの人たちが座っています。
まず登場したのはジョーディとドラムのジョシュ・フリーズ、そして女性MCの三人。なぜかジョーディだけ、マイクがありません(笑)。あとで登場するメンバーは使用しているので、マイク自体はあるはずなのですが…。あえて持たなかったのか、あるいは何らかの理由で持たせてもらえなかったのでしょうか? 女性MCが「今週火曜に発売されるAPCの『Thirteenth Step』よ」とアルバムを紹介し、質問に入りました。
記念すべき一問目にいったい何をたずねたのかと思いきや、「『Weak And Powerless』のビデオにもこのアルバムのジャケットにも気持ち悪い虫がたくさん出てくるけど、音楽とどう関係あるの?」。ふざけているのか本気なのかよく分からない、不思議な質問をぶつけました。この女性MC、名前が分からないのですがMuchMusicでは有名なビデオジョッキーの方だったみたいですね。存在感がとても素敵な女性ですが、大胆なのかそれとも天然なのか、この後も微妙な質問を次々と浴びせて二人を困らせるので、そのあたりもぜひご注目ください(笑)。
さて彼女の質問に、マイクを手にしたジョシュは…
と、ユーモアあふれる回答をしました。しかし、自信なさげに言ったせいか場に変な沈黙が流れてしまい、焦り気味に「いつもってわけじゃないけど…」と付け足すジョシュ。開始30秒にして、スタジオが微妙な空気に包まれました(笑)。あのパワフルなドラムを叩いている人と同一人物とは思えないほど、不安げな表情をしています。若干スベった感じになった上、女性MCに「怖がる人もいるってこと?」と真顔で返されてしまい、「そういうつもりじゃないよ。単にイメージの話さ」と頑張るジョシュ。その間、ジョーディは…
無言で、女性MCとジョシュの顔を交互に眺めています。まあ、マイクも持っていないことですし、このタイミングで会話に加わるのはジョーディじゃなくても難しいですよね(笑)。「ジャケットはそこまで気持ち悪くないよ。モノクロでも、暗い感じでもないし…」とアルバムを示すジョシュに、女性MCはわざわざディスクを取り出して中のデザインを見せました。「こっちは虫だらけよ。嫌な人もいるはず」。とにかく虫にこだわる彼女。よほど虫が苦手なのでしょうか!?
一応ここで見やすいように問題のデザインを紹介すると、こんな感じです。
正直そこまで気持ち悪くはない気もしますが、こればかりは生理的なものですからね…。たしかに、ミミズやうじ虫がダメな人はダメかもしれません。というか、おそらくアルバムのアートワークに関わっていないであろう二人には答えようがないのでは…と思ったその時、「それ、スパゲティだよ!」という声がしました。ジョーディです!
「スパゲティ?」と思わず笑う女性MCに、「そう、スパゲティなんだ」と繰り返すジョーディ。ジョシュもすかさず「カリカリの中華麺だよ」と言って笑っています。
虫問題が一件落着したところで、女性MCが次の話題にうつりました。「今のメンバーが集まった理由を教えて。友情? それともビッグなバンドを作るのが狙いだったわけ?」。ほがらかにたずねていますが、なかなかパンチのある質問です。ぱっと答えたのは意外にも、ゆらゆら揺れながら質問を聞いていたジョーディ。
「たまたまそうなったんだよ。あるパーティでジョシュに会ったら、バンドはベーシストを探してて、ぼくはやることを探してた。それで加入したら今度はギタリストが必要って話になって、まっさきに浮かんだ候補の一人がジェイムス(・イハ)だったんだ。ビリー(・ハワーデル)がメールを送ったらOKしてくれたよ。そんなふうに話が進んだだけで、計画したわけじゃないんだ」。嫌な顔ひとつせず、自分とジェイムスがAPCに加わった経緯を語りました。ちゃんと答えるところに、誠実さが伝わりますね。その間、かなり険しい顔で女性MCを見ているジョシュの姿をご覧ください(笑)。
が、ジョシュの視線に全然気づいていないタフな女性MC。「本物のバンドって音楽を作るのにもお金がかかるでしょ。なのに初めてバンドを組むときみたいに、“おい、あのイケてる奴を入れようぜ!”みたいな軽いノリだったってこと?」と、なかなかの挑発をかましてきました。ジョーディよりも早く反応したのは、ジョシュです。ちなみにジョシュ、雰囲気が落ち着いていることもあってかお兄さん感がありますが、1972年生まれなので年齢的にはジョーディの一つ下ですね。
ジョーディは前からビリーの知り合いだったし、ジェイムスとも2~3年前のサマーソルト(フェスティバル)で会っているということで、「別に有名バンドのメンバーを探そうとしたわけじゃない」と説明するジョシュ。ジョーディが元マリリン・マンソン、そしてジェイムスは元スマッシング・パンプキンズとどちらも“有名バンド”出身ということで穿った見方をする人がいたのかもしれませんが、APC側にとってもジョーディたちにとっても失礼な話ですよね…! とはいえ、冷静な対応をしたジョシュはさすがです。
しかし、ジョシュの丁寧な説明に対してなんと無反応の女性MC! 彼らに息つく暇も与えず、次の質問に移りました。今度は何かというと、「このCDはコピーコントロール仕様になってるわね」。当時日本でも論議を呼んだ、コピーコントロールCD(CCCD)のことですね。正直に「どういう意味?」とたずねるジョシュの横で、ジョーディも自分が持っているアルバムを確認しています。
「新しい技術が使われていて、複製やリッピングができないってことよ」と息巻く女性MCに、「そりゃいいね」とジョシュ。バンド側も決定に関わったのかと聞かれて「関わってないけど、気に入ったよ」とさらりと交わしました。一方ジョーディは…
と、そもそも今初めて自分たちのアルバムを見たと衝撃発言。番組冒頭で、手に持ったCDを凝視してると思ったら、そういうことだったんですね。虫だのコピーコントロールだの以前に、音楽以外はなんにも関わってないっぽいジョーディです(笑)。すがすがしいですね!
さて二人の正直な返答に、続けて「バンドのビジネス面におけるメンバーの役割を教えて」とこれまた答えにくそうな質問を投げかける女性MC。が、緊張も解けてだいぶ調子が出てきた様子のジョシュ、「巻き込まれないようにしてるよ。ぼくはただのドラマーさ。ほっといてくれ」と会心の一撃! 間髪入れず、ジョーディも横から「そうさ」と同意しますが、なぜか顔を異様にマイクに近づけています。
他のメンバーはどうなのかと聞かれると、再びマイクに顔を近づけ…
ジョシュの姿に励まされたのか、ジョーディもふざけはじめました(笑)。ひそかに二人の反撃スタートです! バンドのミーティングはいつやってるのかという質問にジョシュが「ほぼやらない」と返せば、ジョーディも「やったことない」。さすがに突っこまれて「さあね。どうかな。たぶんないよ。ないよね?」とジョシュを見ながらのらりくらり答えるジョーディですが、この流れの中でなんと、鼻をくっつけてマイクを嗅ぎ始めました(笑)。軽く嗅いだ後、もう一度鼻をマイクに押し当てています。
マイクを嗅ぐという行動だけで笑えますが、嗅ぎ方がまた面白いですよね(笑)。ジョシュも思わず笑顔になっています。どんな匂いがするのかと女性MCに聞かれ、「ぼく的にはいい匂いがする」とちょっと恥ずかしそうに答えたあと、自分でも笑っちゃうジョーディ。何も考えずに、つい衝動的にやっちゃったんでしょうか。
彼らの様子を見て女性MCもリラックスしたのか、「本当? いろんなバンドがこのマイクにキスしたり床に落としたりしてきたけど」と、この日初めて話をいい方向に広げました! 彼女の言葉を聞いて、マイクに手を伸ばすジョーディ。
あらためて匂いを嗅いでから、ジョシュにも嗅いでみるようすすめました。
ジョーディに声をかけられたジョシュ、真顔で女性MCのマイクに鼻を近づけてから、自分のマイクと嗅ぎ比べています(笑)。
で、「こっちの方がいい匂いがする」と、女性MCが持っているマイクを指さしました。「そうだよね」とジョーディ。
「香水か、香りつきリップをつけてるのかな?」とたずねるジョシュの横で、またもマイクを嗅ぐジョーディ。トゥールTシャツ姿のファンたちがカメラに抜かれる間、うしろでジョーディの「シューーーーーーーーーッ」という音声が流れるという、なかなかシュールな展開になりました。ダースベイダーも顔負けの呼吸音です。
心ゆくまでマイクの匂いを堪能したらしいジョーディ。女性MCに今の気分を聞かれ…
そして、この笑顔。
よほどいい匂いだったんでしょうね(笑)。楽しそうに利きマイクをする二人の姿に笑っていたら、長くなってしまいました。いったん区切ります。
次回につづく!
★★目次★★