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Jeordie White(a.k.a.Twiggy / Twiggy Ramirez)を知るためのブログ。時空をさかのぼって不定期更新中。May the force be with you!

「ぼくは透明人間だよ!」単独インタビュー@Jeremiah's Nightclub(1995年12月4日)

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 1995年6月にスタートしたマリリン・マンソンの「Smells Like Children」ツアー。連日のライブで着実にファン(&敵)を増やしながら、10月には同名のEPをリリース。さらに次作「Antichrist Superstar」制作に向けて準備を始めるなど一気にパワーを加速させていたこの時期、まさにツアー真っ最中におこなわれたトゥイギーのインタビューを見つけました。

 米インターネットサービスAOLが関わった企画で、インタビュアーはメラニーさんというファンの方らしいということは分かったのですが、オリジナル記事(映像?)がおそらく現存しておらず、幸運にも複数のファンサイトやジョーディのサイトにテキストが転載されたことで生き残っている記事です。インタビューは、この日ライブが行われるJeremiah's Nightclub(ノースカロライナ州シャーロット)という会場でおこなわれています。質問の濃さにギアが入ったのか、あるいはマンソンが同席していないからか(笑)、トゥイギーがめずらしく饒舌に語っているインタビューなので、ご紹介したいと思います。(→出典はこちら

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メラニー(以下略)――ハーイ。大丈夫?

トゥイギー(以下T):(鼻水とくしゃみをしながら登場)ごめんね。ちょっと体調が悪くて、ぼーっとしてるんだ。

――ええ、具合悪そうね。休日は楽しんだ?

T:うん。みんなで遅くまでかなり飲んだよ。だから、ちょっと二日酔いってのもある。

――ああ、これで真実が明らかに…。

T:(笑)。

――マリリン・マンソンについて教えて。バンドとして、他の人の人生に強い影響を与える存在になりたい?

T:ええと、そうなってると思うよ。

――それが望みなの?

T:ぼくたちは、親に育てられてない子供たちを育てたいんだ。意味あるならね。

――コスプレをしてライブに来る人たちのことをどう思っているか教えて。

T:バンドの個性は押し出したいけど、別にみんながぼくたちのマネをしなきゃいけないなんてことはないよ。逆に、ぼくたちと同じ格好をしたら、その人がその人じゃなくなるってことでもない。自分がやりたいことならOKさ。ぼくたちのライブはハロウィン・パーティみたいだから、悪いことじゃないよ。もっと増えてほしいぐらいだよ。

――最近AOLに、あなたたちのオリジナリティを攻撃するような投稿があったの。カバー曲をやってるとか、アリス・クーパーのパクリだとか。直接話ができるなら、彼らに何と言いたい?

 正直言って、全然気にならないよ。だって、ぼくらは自分たちのためにレコードを出し、自分たちがやりたいと思ってその曲をカバーしたんだからね。それが気に入らなければ、それでいいんだ。気に入らなくても全然OKだよ。ぼくたちは今、みんなのためじゃなくて、自分たちが楽しむためにやってるんだ。この点に関しては、ぼくたちはすごく自己中心的だよ。お金を稼ぐことに関して、って意味じゃないよ。そこは重要じゃない。ぼくが言ってるのは、自分たちを楽しませるって意味で自己中心的ってことさ。ぼくたちがやっていることは、次のレコードに向かう一歩に過ぎないんだ。つまり、基本的にはマリリン・マンソンの終わりに向けてのね。ひょっとしたら、基本的にすべての終わりに向かってるのかもね。

――本気? それって、5年後には世界が存在していないみたいな、終末論的な見方をしてるってこと?

T:ぼくたちの世界にいれば、何もないと思うよ。でも、ぼくたちの世界は違うからね。

――違うって、どんなふうに?

T:ただ、違うんだよ。つまり、ぼくたちの現実のバージョンが違うんだ。

――自分たちだけの小さな世界にいるってこと?

T:ええと、「自分たちだけの小さな世界」じゃないよ。「世界」だよ。でも、世界は人によって少しずつ違うからね。

――オーケー。他の人が気に入るかどうかは気にしないと言ったけど、ファンについてはどう? 今夜のライブのために、メリーランドから車でシャーロットまで来る人たちを知ってるけど、これで36公演目になると言ってたわ。すごく献身的よね。

T:うん、誰のことを話してるか分かるよ。

――そういうふうに追いかけられるのは好き?

T:ああ、好きだよ。全部のライブに来て、アメリカ中ぼくたちを追いかけてくれるんだ。時々、ちょっと不安になったり、デジャヴに陥ったりすることもあるけど。二週間、同じ人たちが最前列にいるのを見てるとね。でも、素晴らしいことだと思う。

――デビュー前後からずっとマンソンを聴いてきたファンの中には、バンドがここまで人気を得たことに不満を抱いている人もたくさんいるわね。まるで、誰にも話したくない秘密みたいに。

T:うん、ぼくたちはすごく個人的なバンドだと思うよ。

――じゃあ、ビッグになりたくないの?

T:いや、できるだけビッグになってから辞めたい。選択の余地はないね。つまり、さっき言ったみたいに、ぼくたちの世界は終わるんだから。でも、ファンのみんなは、ちゃんと自分を持っている人たちだよ。ビッグになったからといって、ぼくたちのことを嫌いになってほしくないよ。

――社会で最大の没落はなんだと思う?

T:最大の没落? いい意味で? それとも悪い意味で?

――悪い意味で。とくにアメリカ社会は、どこがおかしいと思う?

T:えーと、アメリカで起きているおかしなことは全て、いいことだと思うよ。そろそろ思い切ったことが起きる必要があるね。人々は政治的に正しい、想像上の世界に身を置いてるけど、そんなものは存在しないんだ。自分に満足したいがために、他人を愛したり、良い行いをしたりしてるのかもしれないけど、それってすごく利己的だよ。他人のためじゃなく、自分のためにやってるんだからね。

――あなたはニーチェやアイン・ランド*1の哲学に触れているみたいね。「利他主義は究極の悪である。なぜなら人々は強制されているだけで、本当は良い行いなんかしたくないのだ」と。

T:うん、同感だよ。つまり、ぼくはかなり利己的な人間だと思うけど、そのことを絶対に人に謝る気はないからね。アメリカの最大の没落は何かという話だけど、ぼくは、アメリカそのものだと思う。それって悪いことじゃなく、良いことだと思うよ。だって、変化をもたらしてくれるから。悪いものから良いものが生まれ、良いものから悪いものが生まれる。善と悪はまさに同じものなんだ。すべての物事には二つの側面がある。悪いことばかりじゃないさ。ぼくたちがそこに貢献しているか、すくなくとも助けになっていることを願うよ。でも、助けるということは、物事を悪化させることになるかもね。なぜなら、それがぼくたちにとって「助けること」の定義だから。

――共感する哲学者はいる?

T:ニーチェやアントン・ラヴェイ*2の哲学を尊敬してるし、彼らの言葉も引用するんだ。だけど、誰かひとりを信奉したりはしないよ。信奉する相手を選んでしまったら、自分を制限することになるからね。ぼくたちはニーチェを読むのが好きだけど、彼の言うことを何もかも信じてるわけじゃない。賛同はするけど、ぼくたちって偽善者だからね。マリリン・マンソンにはマリリン・マンソンの哲学があるよ。ニーチェやラヴェイとは似てるけど、別物だ。もっとバランスが取れていて、両性具有的で、それに、もうちょっと無感情なんだ。

――多くのメディアがマリリン・マンソンを悪魔主義者だと報じているけど、気にならない?

T:そりゃそうだろうね。まったく気にならないよ。もっとたくさんの人にそう理解してもらいたいぐらいさ。いや、待てよ。もっとたくさんの人が「理解してくれない」方が嬉しいな。ぼくは自分のことを「〇〇主義」とか「〇〇主義者」だとは思わないよ。だって、主義がころころ変わるんだからね。毎日違うことを、たくさん経験したいんだ。

――本質的にみんなそうだけど、自分で気づいてないだけなのかも。

T:そうだね。多くの人が、あまりにも簡単に自分のアイデンティティを手に入れてしまうんだ。何かになるために大学に行ったり、自分を定義するものをお金で買ったりしてさ。社会で「迷子」とか統合失調症とか、精神異常だとか呼ばれてるような人たちは、実はたいていの人間より賢いと思うよ。彼らに診断を下す精神科医なんかよりもね。賢いからこそ、ひとつのアイデンティティに囚われないんだ。ぼくたちは誰にだってなれるし、あらゆるものを信じられるし、いろんなことができる。それなのになぜ、一人の人間にならなきゃいけないんだ?

――ツアー中に起こった最も印象的な出来事は?

T:トニー・ウィギンズだろうね。今夜、ここにいるかも。パフォーマンスするかもしれないよ。ああ、彼はクレイジーさ。

 ――あなたたちは彼を友達だと思っているの?

T:えーと、彼はぼくたちを殺そうとしたけど、いい意味での殺意だったんだと思うよ。そう願うね。実際には、いい意味じゃなく、ぼくたちを憎んでたから殺そうとしたんだといいんだけど。でも、彼は今夜ここにいるだろうね。たぶん、ぼくたちを殺さないと思うよ。

――ウィンストン・セーラムでのライブでは、1曲目の途中でフェンスが壊れてしまったよね。そういうことがあると、怖くなったりしない?

T:いや。ぼく個人としては、バリケードは大嫌いだ。あんなもの、なけりゃいいのに。

――なかったらどうなると思う?

T:ぼくも知りたいよ。ステージに上がってきた人たちに、瓶かなにかで殴られたことがあるけど、ほら、ステージに物を投げるとかそういうことが起きるのって、しょうがないよ。その人たちにはそうする必要があるんだ。

――インタビューは好き?

T:もちろん、好きだよ。

――ドクター・スース*3作品の中でお気に入りは?

T:やっぱり「キャット・イン・ザ・ハット」だね。両親がいなくなった家に猫のあいつがやってきて、トラブルを起こす話。とにかく名作だよ。

――主人公の猫と自分が重なる?

T:どっちかっていうと、オリヴィア・ニュートン=ジョンの方が重なるんじゃないかな。ぼくは、トニー・ウィギンズとオリヴィア・ニュートン=ジョンの影響を受けてるのさ。つまり、ドクター・スースは死んでる。この世にいない人だ。別に「お気に入りのドクター・スース作品は?」という質問に対して、否定的な意味で「彼は死んだよ」って答えてるわけじゃないよ。ときどき、ぼくの発言はそういうふうに引用されちゃうけどね。

――死といえば、あなたはどんなふうに死にたい?

T:別に死にたいわけじゃないけど、たぶん、ドラッグかな。痛みがないから。

――苦痛が嫌いなの?

T:嫌いじゃないけど、大好きでもないよ。というか、気にしないって感じだね。ただのドラッグなんだから。死んだとしても、自分では気づかないよ。

――海賊版が出回っている昔のデモを公式にリリースする予定は?

T:他の人が出してくれてるなら、それでいいんじゃない?

――今後、昔の曲をレコーディングする可能性は?

T:何曲かなら、あるかもね。

――「ジェバ」(JEVA)って言葉の意味は何だと思う?

T:ジェバ? うーん…きっと、世界の終わりに関係することじゃないかな。

――もし一日だけ透明人間になれるとしたら、何をしたい?

T:ぼくは透明人間だよ。

――わたしには見えてるけど。

T:でも、見えないこともあるんだ…。マリリン・マンソンも時々、見えなくなるよ。ぼくたちは、小さな子供たちの心の中にいるからね。

――あなたが考える完璧な幸福とは?

T:すべてを失うことかな。命じゃないよ。それだと、感情がなくなっちゃうからね。だけど、すべてを失ってしまえば、楽しみができるんじゃないかな。

――他の人のどういうところを尊敬してる?

T:優しさだね。ぼくにとっては難しいことだから。別にぼくが意地悪ってわけじゃないけど、ほら、わざわざ人に親切にするなんてね。あ、それからトニー・ウィギンズのことも尊敬しているよ。彼はすごく親切だからね。

――逆に、軽蔑する人は?

T:人生をコントロールしてる人かな。だって、そんなの嘘だし、ただの見せかけだから。人生はコントロールなんてできないよ。その人たちはなにもかも分かってるつもりなのかもしれないけどね。

――じゃあ、あなたは自分の人生をコントロールできないことを認めるのね?

T:いや、完璧にコントロールしているよ。でも、ぼくがコントロールしているのはカオスであり、ナンセンスだ。ぼくは自分が何をやってるかよく分かってるよ。ナンセンスなことだらけなんだ。

――クラッチ*4とのツアーはどうやって実現したの?

T:一緒にツアーしようって頼んだんだよ。

――変な組み合わせに思えるけど。

T:間違いなく、変な組み合わせだよ。でも、どんなことにも意味はあるからね。

――ツアーは好き?

T:ええと、基本的にぼくにとっては自分の家だね。もう2年ほどツアーに出ているから。分かるのはそれぐらいかな。

――好きな匂いを教えて。

T:若いティーンエイジャーには、体臭みたいな独特の匂いがあるんだ。いい匂いでも、悪い匂いでもない。子供やティーンエイジャーではなく、「若い」ティーンエイジャーだけが持つ匂いだよ。この匂いが、たまらなく好きなんだよね。

――『チキ・チキ・バン・バン』に出てくるチャイルドキャッチャー(子供狩り人)みたいね。

T:別に、そこからきてる発想じゃないよ。

――フロリダには懐かしい思い出がある?

T:どうかな。今は、なにもかもが違っているからね。

――故郷の知り合いとは連絡を取り合っているの?

T:ごく限られた人とだけね。あそこに帰ると、ぼくたち暗殺されるんじゃないかと思うよ。意地悪な人ばっかりだからね。でも、それでいいし、そうあるべきだよ。ぼくたちを憎む人がもっといていいぐらいさ。

――最も過大評価されている美徳は何だと思う?

T:わあ、すごい質問だね。過大評価されている美徳は…(変な顔で首を振りながら)これが答えだよ。(同じことをしながら)なにもかもが過大評価されていると思う。

――あなたも含めて?

T:もちろん。

――トレントとは『Antichrist Superstar』でも一緒に仕事をするの?

T:うん。他のプロデューサーとも一緒にやると思うけど、トレントとは引き続き組む予定だよ。

――あなたたちが疎遠になっているという噂もあるけど。

T:そんなことないよ。『Smells Like Children』のレコーディング中、トレントがストリッパーの男性たちをスタジオに呼んだことはあるけどね。場のノリに関係するとか言って。エンジニアのショーンにも白髪の女性用ウィッグをかぶらせてたよ。信じられないと思うけど、本当の話なんだ。誓うよ。ストリッパーは筋骨隆々の男ばかりで、ひどかったよ。ショーンはウィッグをかぶらされて、派手なイヤリングまでつけさせられてさ。ものすごく派手なイヤリングをね。

――NINとのツアー終盤、ある晩のステージであなたたちが恥をかかされたという記事を読んだけど。

T:あれは楽しかったね。

――楽しいツアーだったってこと?

T:うん、そうだね。ぼくたちは「あるもの」を取り返したよ。それが楽しかったな。何をしたかは言えないけど、うまいこと取り返したね。

――いちばん好きな単語は?

T:いまは、「ニガー(nigger)」がいちばんのお気に入りかな。悪意はないよ。この言葉が持つ意味について議論を始めるつもりはない。でも、ベールをはがしたいんだ。ぼくらは、この言葉にかけられたベールをはがしたいんだよ。すごく力強い言葉だけど、そこまでの力はないはずだ。本当はこんなこと突っ込みたくもないけどね。つまり、突っ込みたいけど、突っ込みたくない。黒人のことを言ってるんじゃないよ。この単語は黒人、あるいは「アフリカ系アメリカ人」とは関係ないんだ。ぼくにはもう、人をなんて呼んだらいいのか分からないよ。毎日新しい呼び方が生まれるなんて…。

――ええ、わたしたち「政治的に正しく」なきゃいけないものね。マリリン・マンソンは全然そうじゃないけど。

T:ぼくたちは何かの主義を持ってるわけじゃないし、人種差別者でもない。ただ、ぼくたちってだけだ。存在してるだけなんだ。だからこそ「Rock 'n' Roll Nigger」をカバーしたんだよ。それがぼくたちの気持ちさ。ぼくたちは、のけ者扱いされてる。だれも、ぼくらみたいな子供を気にかけてくれないんだ。というわけで、「ニガー」はお気に入りの言葉だよ。いい意味でね。ぼくは、他のどのバンドよりも、ドクター・ドレー*5のようなアーティストに共感するね。

――ラップを聴くの?

T:いや、聴かないよ。音楽とか、歌詞のことを言ってるんじゃないんだよ。そういう話じゃなくて、そのバンドが何を支持してるのかが重要なんだ。

――検閲に賛成か反対か、みたいなこと?

T:ちがうよ。検閲には賛成だ。だって、検閲があるおかげで、もっと悪いことができるんだからね。法律が多ければ多いほど、破るべきルールも増えるのさ。なにもかも順調だと、うまくいかないんだよ。検閲はぼくたちをより過激にさせるだけだ。検閲に賛成する人たちこそ、だれよりも邪悪な人間だと思うよ。

――じゃあ、ソルトレイクシティ(ユタ州)などの都市でライブが禁止されたときは、どう思った?

T:ぼくたちを見ることができなかった子たちに、申し訳なく思ったよ。でも、そういう場所ではぼくたちのメッセージが、より強い影響力を持っているってことだと思うんだ。禁止運動を支えた人たちは、そのことを分かってるはずだし、ぼくたちのいちばんのファンだとすら思えてくるよ。彼らはぼくたちを強力な存在とみなしたんだ。「悪者」を見つけたから、飛びかかったのさ。その悪者のせいでその人たちは激怒し、彼らの仲間を宗教に回帰させた。ぼくたちのライブを中止させてくれた彼らに、お礼を言いたいぐらいさ。ライブに来れなかったファンのみんなには申し訳ないけど、禁止運動がもっと起こればいいのにと思ってるよ。そうすれば、ツアーをしなくて済むからね。

――でも、あなたはツアーが好きだと言ったわよね。

T:その通り(ニヤリ)。

――まあ、それはそれとしてってことね。

T:いい終わり方だね。そういうことさ。

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 以上です。いやー、どうですか。このひねくれっぷり(笑)。二日酔いでぼーっとしてると油断させておいて、とにかく、最初から最後まで、とがりまくってます。きれっきれのナイフです。しかもそのナイフを、一見そうとは分からないように知性とユーモアでコーティングしてるという…。トゥイギーこの時、24才。おそるべし。世の中に対する見方やものの考え方が老成しすぎていて、こわいぐらいです。まあ、善と悪は表裏一体…というあたりは、ちょっとスター・ウォーズ要素が入ってる気もしますが(笑)。ファンとメディア側の意見を両方とらえながら、鋭い質問を次々に繰り出したメラニーさんも、只者とは思えません。いったい何者でしょうか!?

 まあしかし、なんといってもこのインタビューのハイライトは、「透明人間になったら何したい?」という、たいていの人が人生で一度は聞かれて返答に困る質問に対する、「ぼくは透明人間だよ」という斜め上の回答でしょう! 速攻で「いや、見えてるけど」とメラニーさんにツッコまれるところを含めて、極上の漫才を見たような幸せな気分にさせてくれます。

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きみたち、見えてますよ。オバケごっこに興じるマンソン(左)とトゥイギー(右)

 あと、マンソンのみんなを親切にも殺そうとした「優しい友達」、トニー・ウィギンズというのは、この時の彼らのツアーバスの運転手です。とにかくめちゃくちゃな人だったらしく、マンソンの自伝やいろいろなインタビューにも、よく名前が出てきます。

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見るからに「親切そう」な、トニー・ウィギンズ

 どの回答からも、社会に対して、表面に見えているものだけではなく本質的なところを捉えようとするトゥイギーの強い意志がうかがえます。その後10年や20年がたっても、基本的に言ってること・やってることが全くぶれていないので、逆にいうと、彼を形づくっている思想や哲学は、この時すでに完成していたのでしょうね。社会で「病んでいる」とされる人がいかに誤解されているかと語るくだりは、ファンはもちろん、(心を病んで家を出てしまったという)彼の実のお父さんに対する最大の擁護でもあるようにも聞こえます。

 それからトゥイギーの発言で筆者がいつも感心させられるのは、自分たちを批判してくる人間たちに牙を向けることなく、肯定しちゃうことです。それも、「みんな違ってていいよね☆」的ななまぬるいものではなく、対立するものがあることで物事はバランスがとれるんだ、その一部に自分たちがいて攻撃されるのはいいことなんじゃない? 的なクールなスタンスです。同時に、(おそらく、ファンの中でも叩かれがちであろう)さまざまなファンに対して、「どんな楽しみ方でもOK!」と肯定する優しさもあり…うーん、こりゃ、ファンはついていきますよね(笑)。

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基本、誠実な人たち

 こういったインタビューを読むと、マリリン・マンソンというバンドが今も昔も変わらぬ信頼を、とくに若い人たちから得ている理由があらためて分かるような気がします。言葉に誠実さがありますよね。ふだんはマンソンの影に隠れて目立たないトゥイギーの立役者ぶりが分かるインタビューでもあります。構図的には、決めのシュートをばんばん放つマンソンの横で、ぶれることなく着実なパスを出し続けるトゥイギーとでもいいましょうか。まあ、二人ともスポーツには全然興味ないと思いますけどね!

 というわけで、ポリティカリー・コレクトの風がますます強くなっている今、こういうインタビューを真剣に、そして笑いながら読める人たちがなんとか生き残ってほしい(自分も含め)…と思う筆者でした。ところで、「ジェバ」っていったい何なんでしょうね!?(笑)

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これはジャバ

★★目次★★

*1:アメリカの小説家、脚本家。ロシア出身。

*2:「サタンの聖書」などの著書で知られる悪魔主義の教祖。マンソンとも直接交流があった。

*3:アメリカの絵本作家。児童文学史に残る数々の名作を世に送ったが、近年(2021年)、いくつかの作品が人種差別的な描写を含んでいるとして、出版停止になったことでも知られている。

*4:アメリカのヘヴィロック・バンド。1991年結成。

*5:アメリカのラッパー、プロデューサー。