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Jeordie White(a.k.a.Twiggy / Twiggy Ramirez)を知るためのブログ。時空をさかのぼって不定期更新中。May the force be with you!

トゥイギー in リンチ・ワールド【映画】『ロスト・ハイウェイ』(1997年)

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 まるで奇妙な夢の中に迷いこんでしまったような独特の世界観と映像センスから、日本でもファンが多いデヴィッド・リンチ監督。なんといっても『ツイン・ピークス』シリーズが有名ですが、彼が1997年に監督した映画『ロスト・ハイウェイ』に、トゥイギーがマンソンと一緒にカメオ出演していました。トレント・レズナーがプロデュースを手がけたサウンドトラック盤にマリリン・マンソンが参加(オリジナル曲『Apple Of Sodom』とカバー曲『I Put A Spell On You』を提供)した流れで、特別出演したようです。二人にとっては記念すべきスクリーン・デビュー!

 デヴィッド・リンチは筆者も大好きな監督の一人なので、映画自体は15年ぐらい前に観たはずなのですが、はて、どのシーンに出ていたのか…? というか、当時はマリリン・マンソンが関わっているとは知らずに、出演シーンはおろか、音楽にもたいして注意を払わずに作品を観たので、映画の内容自体うろ覚えです。えーと、謎の男が出てきて、主人公が現実を裏返しにしたような世界にスリップしていた気が…って、よく考えたら、ほぼ全部のリンチ作品がそんな感じでした。確実に他の作品と記憶が混ざっています。うーん、どんな話だったっけ!?

 というわけで、久しぶりに観直してみることにしました。普段、同じ映画を二度見ることはめったにないのですが、トゥイギーのためなら、135分という作品の長さも苦になりません。それに、内容を思った以上に忘れていたため、まるで初めて作品を観るような気持ちで鑑賞することができました。自分の記憶力のなさに感謝です。

 さて、トゥイギーの登場シーンですが、出演時間はなんと約3秒! たとえではなく本気で、瞬きしていると見逃してしまいそうな短さでした。何も知らずに映画を見て、「あれ、今のってもしかしてマリリン・マンソンのトゥイギー?」と気づいた方がもしいたら、たぶんその人は、「たまたま彼らが映画に出ていることを知らなかった」かなりのマンソン・ファン、かつ、なかなかの動体視力の持ち主ではないでしょうか。

 しかし、たった3秒といえど、トゥイギー・ファンとしては、「デヴィッド・リンチの世界にトゥイギーがいる」「彼が(いちおう)演技をしている」という感激に加え、演じた役柄の面白さもあいまって、彼のディスコグラフィーに太字で書きたいような内容です。

 いったいどんな登場をするのかというと…(※物語の内容にはほとんど触れていませんのでご安心ください)

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左側がトゥイギー

 一緒にいるのは、主人公の妻役のパトリシア・アークエット。たぶん全裸のトゥイギーが、同じように全裸の彼女と並んで体育座りをし、手前に立っている男(マンソン?)を無言で見つめています。彼女の肩に手をまわしているようにも見えますが、はっきりとは分かりません。

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チラッ

  一瞬パトリシアを見つめたかと思うと、再び男に視線を戻し・・・

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なにか考えている様子

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ジィーー・・・

 男(画面に背を向けているのではっきりとは分からないですが、たぶんマンソンの局部?)を、ものすごい目力で凝視しています。台詞はなし。というかこの部分、音声なし。

 なんか、やたら画面が青っぽくて画像が粗いな…と思ったあなたは、鋭い! これ、実は映画内に登場するブルー・フィルム(本物の殺人シーンなどを含む素人製作のポルノ映画)の中のワンシーンという設定なのです。ここに他の女優やマンソンも登場するのですが・・・

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キャー!!(という音声は入っていない)

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殺されたっぽいマンソン

 説明がないのではっきりとは分かりませんが、トゥイギーの役柄は、どうやらこのブルー・フィルムの中に登場する「ポルノ女優のひとり」みたいなのです。もちろんマリリン・マンソンのメンバーとしての出演という背景はあるにせよ、人生初めての映画出演がデヴィッド・リンチ作品で、役柄は映画内映画のポルノ俳優役、しかも男優ではなく女優というのは、たぶん、世界中でトゥイギーだけではないでしょうか。ファンとしては、実に誇らしいですね(笑)。

 どういう流れで物語の中にこのフィルムが登場するのか、そしていちばん上の映画のポスターにいる二人の女性がどちらもパトリシア・アークエットに見えるのはなぜなのか・・・は、ぜひ映画を観て確かめてみてください。もちろん音楽も、マリリン・マンソンやトレント・レズナーだけでなく、スマッシング・パンプキンズやデヴィッド・ボウイ、ルー・リード、ラムシュタインなど、そっち方面の音楽が好きな人にはたまらない楽曲が流れます。リンチ・ワールド的には、ちょっと違和感があるような気もしましたが、映画の音楽自体は『ツイン・ピークス』でもおなじみのアンジェロ・バダラメンティが手がけています(トレントが手がけたのは、サントラ盤)。デヴィッド・リンチがヘヴィ・メタルを好んでいるという話は特に聞いたことがないので、もしかしたら、ちょっと若い空気を取り入れてみたかったのかもしれませんね。

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なんか若い人に流行ってるって聞いてね

 トゥイギー自身が他のデヴィッド・リンチ作品に言及している記事や映像は筆者はまだ見たことがありませんが、マンソンは94年頃に、よくツイン・ピークスTシャツを着用していました。

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コートニー・ラブといっしょの二人

 トゥイギーもマンソンも、いわずとしれた大の映画ファンですから、作品に出演することができて、きっと嬉しかったでしょうね。まあ、トゥイギーが本当に出たかったのは『スター・ウォーズ』かもしれませんが…(笑)。

 映画に関わった経緯とカメオ出演について二人が話しているインタビュー映像を見つけたのですが(1997年3月15日放送のRed TV『The Buzz Interview』)、どうやらデヴィッド・リンチがマンソンにコンタクトをとり、マンソンがトレントを紹介したという流れのようです。マンソンが、「撮影では、監督に女性たち(の胸?)を掴んでセックスしろって言われたんだ」と明かし、横で(いつものように)それまで一言もしゃべっていなかったトゥイギーが、「ホントだよ」と言ってニヤリとしています。

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ホントだよ

 このインタビュー、もう少し詳しく紹介したいのですが、筆者が現時点で英語をちゃんと聞き取れておらず、翻訳の正確さに不安が残るので、後日ちゃんと準備をしてから、あらためて別の記事で取り上げたいとおもいます。

 それと、もうひとつ映画で嬉しかったのは、エンドロールにトゥイギーの名前が出てきたことです! 見てください、これです。

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いちばん下に…

 役名「ポルノ・スター #2」の横に、「トゥイギー・ラミレス」の名前が! その上のマンソンは、「ポルノ・スター #1」。カメオ出演だとエンドロールに名前が出ないパターンも時々ありますが、ちゃんとクレジットされていて感激しました。ポスターでも効果的に使われていますが、文字のフォントが『ロスト・ハイウェイ』フォントなんですよね。このフォント、欲しい・・・。

 というわけで、映画についてほとんど語らないままここまできてしまいましたが、映画もなかなか面白かったです。デヴィッド・リンチ作品は、どれが彼の代表作になってもおかしくないぐらいハズレがないので(『デューン/砂の惑星』以外は…)、それらの中では少し埋もれてしまいがちかもしれませんが、中年男性が抱える不安と恐怖をいつものリンチ節全開で描いており、「ああ、このリンチ・ワールドにあと10時間ぐらい浸っていたい…」という安定の陶酔感をもたらしてくれます。いつもの顔ぶれも登場しますが、やはりなんといってもパトリシア・アークエットが圧巻です。あまりの魅力と色気に、映画の中の「あの人」や「あの人」や「あの人」が夢中になるのも納得です。

 万が一まばたきをしてトゥイギーのシーンを見逃したとしても、じゅうぶん見ごたえのある楽しい作品なので、まだご覧になっていない方は、ぜひチェックしてみてください!

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あおり運転ダメ、ゼッタイ。

 ★作品情報
【タイトル】Lost Highway(邦題:ロスト・ハイウェイ)
【製作年/国】1997年/アメリカ、フランス
【公開日】1997年1月15日(日本公開は1997年6月14日)
【作品時間】135分
【フォーマット】ブルーレイ、DVD、VHS

★★目次★★