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Jeordie White(a.k.a.Twiggy / Twiggy Ramirez)を知るためのブログ。時空をさかのぼって不定期更新中。May the force be with you!

「ハワード・スターン・ショー」その④ やるなよ! 絶対やるなよ!(1997年)

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 続きです。(前回の記事はこちら→

 さて、番組も折り返し地点を過ぎたところで、話題はオジーとマリリン・マンソン共演の話にうつりました。意外にも、今回のオズフェストが初共演だという両者。ハワードに「昔からオジーのファンだったの?」と聞かれたマンソン、オジーの音楽との出会いを語りはじめます。

「キリスト教系の学校に通っていた時、毎週金曜日にセミナーがあったんだ。ちなみに、みんながお祈りしている間、ぼくは女の子の財布からお金を盗んだんだけどね」というマンソンに、ハワードが「まさに悪魔だね」とニヤリ。そのセミナーでは、なんとレコードが逆再生でかけられていたようで、「選ばれたレコードのひとつが、ブラック・サバスだったんだ。すぐに夢中になったよ」。つまり、”聴いてはいけない”音楽の一例として、実際の楽曲が生徒の耳に入らないよう逆再生でかけられたレコードのひとつが、ブラック・サバスだったというわけですね。なかなか強烈な出会いです。

「尼僧がブラック・サバス(黒い安息日)を紹介したってわけか」と皮肉をいうハワードに、マンソンが「カトリックではなくキリスト教だから、尼僧じゃないけどね」と律儀に答えていますが、このあたりの違いは、日本人にはなかなか掴みづらいですよね。

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キリスト教の教育を受けた成果がこれさ

 マンソンの話に触発されて、ハワードも自身の経験を語ります。「ぼくが通っていた中学校はめちゃくちゃで、生徒はみんなドラッグを試してたんだ。ぼくは何の知識もなかったよ。で、ある時、保健の授業に警官がやってきたんだけど、彼が持ってきた巨大な木箱には、ありとあらゆる種類のドラッグが詰まってたんだ」。そういって、ハワードがその箱の大きさや中身について説明をするのですが…

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こんなに大きくてさ・・・

 問題はここからです。熱弁するハワードの話を、とんでもない表情で聞いている(というか、たぶん聞いていない)人物が画面に映し出されます。それは…トゥイギーです(笑)。

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カメラに抜かれてますよ

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ぼんやりハワードの方を見つめてから・・・

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左手で・・・

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鼻ほじってます

 なんというひどい姿でしょうか!? いいですかみなさん、ここの彼の姿をよく覚えておいてください! なんでかというと、この瞬間が、のちのち番組の伏線になってくるんです。

 話を続けるハワード。その警官が、処方薬からヘロインまで、箱の中に並んだ薬を指さしながら「これはお酒を飲まなくても酔っ払った気分になる薬で、これは幻覚が見える恐怖の薬…」とひとつひとつ説明したのだと言います。その話を、トゥイギーとは反対に、身を乗り出して聞いている人物がひとり…それは、オジーです(笑)。

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ワオ!! あの薬ね!!!

 ここ、ロビンが「ちょっと! オジーが薬の話に夢中になってるわよ」と大笑いしてますが、これはなんといっても、誰よりも早く気づいたロビンがすばらしいですね。きっとさりげなくみんなの表情に気を配っていたのだと思いますが、彼女のこういうところが、きっとハワードと番組にとって大きな力になっていたに違いありません(しかし、そのロビンでも気づけなかった事態がのちに発覚しますが…)。ロビンの指摘を受けて、正直者のオジー、「うん、あの時のことを思い出しちゃったよ!!」と薬のことを考えただけで辛抱たまらない様子。横のマンソンも「その箱はどこ? どこ?」とオジーの心の中を代弁してあげたりと、もう、見事なチームワークです(一人を除き)。

 警官が親切にも薬の効果を詳しく教えてくれたおかげで、その後、ありとあらゆる薬を試したというハワード。オジーが「子どもは、やるなって言われるとやりたくなるんだよね」と、めずらしく普通のことを言っていますが、オジーが言うと、普通のことも普通じゃなく聞こえるという不思議。ここまでの発言があまりにもぶっとんでいるため、一瞬「どういうこと?」と戸惑ってしまいましたが、たぶん、普通のことを言っています。人の思考回路を根本から変えてしまうオジー、おそるべし。

 さて、ハワードの話もひと段落したところで、しばらくおとなしくしていたマンソンが、「まだ試してない薬がひとつあると思うよ」と口を開きました。それは、「シーモンキー・パウダー」。水につけると孵化するという、日本でも子供向けの実験キットとかで見かけるあれです。画像検索したら、苦手な人は悲鳴を上げそうなグロテスクな姿をしていたので、ここでは代わりに、かわいいパッケージの画像を貼ることにします。

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愉快なシーモンキー一家

 さすがのオジーも吸ったことがないというこのシーモンキー・パウダー、マンソンが「吸わせた」という人物がVTRで登場しました。

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そのスキンヘッドは・・・

 マンソンと仲良しということでもおなじみ、スマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンです。映画『プライヴェート・パーツ』のプレミア会場で、なぜかマンソンがマイクを持って彼にインタビューをしています。マンソンに「さっきぼくたちはシーモンキー・パウダーを吸ったわけだけど、映画の感じ方は変わった?」と質問され、カメラを見つめたままノーコメントを貫くビリー。「言葉の代わりに、彼の頭が物語っています」と、本物のレポーターばりに報告を締めるマンソンですが、もはやちょっとしたコントですね!

 で、このVTR、わずか10秒ちょっとなので、二人の楽しい掛け合いを見て満足してしまいそうですが、二人の後ろをよーく見てください。

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ビリー、うしろ、うしろ!

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ビリーの頭に手をのばすトゥイギー

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いたずら成功!!

 映像に「その瞬間」が映っていないのでかなり分かりづらいのですが、二人が話している最中、うしろからそっと近づいてきたトゥイギーが、たぶん、ビリーの頭をなでてます(笑)。トゥイギーが頭をなでた後、横にいる男性がトゥイギーの顔を見て楽しそうに笑ってますが、これ、おそらくドラマーのジンジャー・フィッシュではないでしょうか。だとすると、シーモンキー漫才を繰り広げるマンソン&ビリー組のうしろで、トゥイギー&ジンジャー組がひそかにいたずらを仕掛けていたという、一粒で二度おいしいビデオということになりますね! はたしてビリーは、自分の頭をなでられたことに気づいたのでしょうか。それとも、シーモンキー・パウダーを吸引したせいで、トリップ状態だったのでしょうか。真相は闇の中ですが、このわずかな時間で抜かりなくいたずらを仕掛けたトゥイギーに感服です。

 誰も気づいてないところでやりたい放題のトゥイギーが確認できたところで、ふたたびスタジオの映像に戻ります。

 自分たちがドラッグをやることについて「過酷なスケジュールをこなすためでもないし、やめなくちゃいけないとも思ってない。バランスを見つけたい」「やる必要はないってことを知るためにやるんだ」と、率直な考えを述べるマンソン。肯定・否定どちらかではなく、両方をひっくるめた上で俯瞰的に物事を考え、それを言語化できるところは、やはりマンソンの持ち味ですね。で、それを聞いたハワードがロビンに「きみはどう思う?」と問いかけますが、ロビン、間髪入れずに…

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「オジーは一線を越えたけどね!」

 アハハハ!と笑い飛ばして、ちょっと真面目な方向に行きかけた空気を、何のためらいもなく元の道に引き戻しました(笑)。トゥイギーも笑顔です。スタジオにふたたび笑いが起こり、オジーも饒舌に語りだしました。ここの流れが大好きで、何度か映像を見返しているのですが、これって、ハワードはもちろんのこと、番組が始まってからの短い時間で、ロビンがオジーやマンソンともある意味信頼関係を築いていたからこそ、成し得たことだと思うんですよね。

 さて、空気がやわらかくなったところで、マンソンが「オジーとも一緒にドラッグをやった」的なことを語っているように聞こえるのですが、筆者にドラッグについての知識がほとんどないこともあって、このあたりから、みんなが正確にどういうことを言っているのかがよく分かりません。「オジーには物足りないけど、もしラインが一本しかないとしたら、オジーはマンソンとその一本を分け合って一緒に吸引する」という理解で合ってるのでしょうか…? で、その流れを受けてハワードが「トゥイギーはそれでいいの?」とトゥイギーに聞き、トゥイギーが「えーと…いいよ!」と笑顔で答えている、というのが現時点での筆者の理解(限界)なのですが、正直言って、違っているかもしれません。すみません(涙)。

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「トゥイギーはそれでいいの?」(仮)

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突然みんなに注目されるトゥイギー

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「えーと・・・いいよ!」(仮)

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笑ってます

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すごく笑ってます

 番組の終了まで残り約5分というここにきて、あらためて「トゥイギー・ラミレス」のテロップが出されました。

 そうなのです。ここまで「ノー」「ア~…シュア」の二言しか発しなかったトゥイギー、そしてそのことに対して全く不満を抱いている様子もなく、ただただこの場にいることを楽しんでいたトゥイギーが、ハワードにマンソンにロビン、そして番組スタッフ総がかりの企み(と愛情)により、ここから一気に主役に躍り出るのです。

 本人にその気がなさそうなのに、いったいどういうことでしょうか。というわけで、続きは次回

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