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Jeordie White(a.k.a.Twiggy / Twiggy Ramirez)を知るためのブログ。時空をさかのぼって不定期更新中。May the force be with you!

きみのアレって…【DVD】「Backstage Pass 3 Uncensored!」(2005年)

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 世の中には、どういう経緯で製作されたのかがよく分からず、本編を観てもやっぱり、なぜこれが作られたのかがよく分からない作品というのが一定数存在しますが、そんな作品のひとつが『Backstage Pass 3 Uncensored!(邦題:バックステージ・パス3)』。2005年にDVDで発売された、55分のドキュメンタリーです。

 上のジャケット画像からも分かるように、出演者としてトゥイギーの名前が大きくクレジットされているので、ファンとしてはかなり期待して観たのですが…。結論からいうと、面白いのか面白くないのかさえ判断がつかない、謎の作品でした。冒頭からセクシーな女性たちの裸のオッパイやお尻の映像がガンガン出てくるので、「あれ!? これってもしかしてアダルト作品?」とパッケージを確認したのですが、とくに成人指定や年齢制限はされていないようです。

 本作を簡単に説明すると、アメリカ出身のメタルバンドであるソサエティ1のメンバーを中心に、約10名のミュージシャンたちが登場して、自分たちがツアー中に経験したクレイジーな出来事(要はエロい武勇伝)を語るインタビュー集。これだけなら、まあありそうな気がしますよね。で、謎なのがそのインタビューに、語られるエピソードとは何の関係もないポルノ女優が登場し、全裸で彼らの膝の上に横たわったり、あんなところやこんなところを刺激したり、全力で話をエロい方向に持って行ったりするのです。中には、体が反応してしまい話どころではなくなってしまうミュージシャンも…(笑)。ただし、全員がこの恩恵にあずかれたわけではなく、トゥイギーを含め何人かは、いたって普通の状況で一人で受け答えしています。うーん、謎多し!

 とにもかくにも、トゥイギーが語っているシーンを見てみましょう。彼の出演シーンは、あわせて二回です。まず一回目は…。

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やあ、ジョーディだよ

「やあ、みんな。ジョーディ・ホワイトだよ」。カメラに向かって、トゥイギー…というかジョーディが自己紹介をしています。テロップも“別名”トゥイギーとなっているので、ここからは、トゥイギーではなくジョーディの名前で記事を書くことにしましょう。名前の下の肩書は、ア・パーフェクト・サークル。ジョーディは2005年3月にはナイン・インチ・ネイルズの一員としてツアーに参加しているので、このインタビュー収録は、それより前におこなわれたのかもしれませんね。

「以前はマリリン・マンソンに10年いたんだ。初期の頃に目撃したことを話すよ」と、ゲイリー・ニューマンのカバー曲『Down In The Park』のレコーディング中(おそらく1994年夏?)に起きた出来事を話し始めました。ただし、「ぼく自身が関わった部分については、カメラの前では話せないけどね」。ここの判断がなかなか賢明だと思うのですが、他の出演者が基本的に自分の体験を語る中、ジョーディは目撃談という形をとった上でその場にいたメンバーについても個人名を伏せ、「ある人が」「名前は出せないけど…」というふうに話をしています。

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こう見えて慎重派

 で、内容はというと、彼らを追いかけるファンの一人だった耳の不自由な女の子に、バンドのみんなとホテルで“あること”をした…というもの。文字にすると過激を通り越して、女の子側の様子に少し痛々しさが漂うのでここに詳細を書くのは控えますが、このエピソードを語る時のジョーディの表情が…

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悲しそう

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とにかく悲しそう

 見ての通り、だいぶ表情が暗いです。少なくとも武勇伝を語る顔ではありません。女の子がどうやって音楽を楽しんでいたのかを想像したり、騒動の最中にどんなことが起きたのかを身振り手振り交えて説明するジョーディですが…

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振動で音を感じていたんじゃないかな

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こんなふうに体に…

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で、この表情

 もともとの顔立ちもあるのでしょうが、とにかく終始悲しそうな表情で、ほとんど笑うこともなく淡々と語っています。女の子側の視点で話している部分も多いため、その時の彼女の心情が伝わってきて、聞いているこちらまで落ち込みます。はっきり言って、ジョーディの話を聞いて「ワオ! ロックスターってすげえな!」的にテンションが上がる人は、おそらく、一人もいないのではないでしょうか。
 悲しそうな表情のままホテルでのエピソードを話し終えたジョーディ。「詳しい話は、マンソンの自伝『The Long Hard Road Out of Hell』に書いてあるよ」とさらりと付け加えました。おそらく自分には一文の得にもならないであろうマンソン個人の本を、バンドを脱退して彼と関係が途絶えていた時期にさりげなく宣伝するという…(笑)。損得勘定をあまりしないタイプなのか、それとも根っからの友達思いなのでしょうか。

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彼の本、読んでね!

 また今の話について、最後に「これは90年代初期の話で、今とは状況が違う。最近はそういうことには関わらないようにしているよ」とも付け足していました。

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大人になりました

 ロック・ミュージシャンが私生活で好き放題やる時代はもう終わった、とも受け取れる発言ですが、ジョーディ以外にも、同じようなことを語っている出演者がいました。それは、フーバスタンクのマークー・ラパレイネン。偶然ですが、彼もジョーディと同じくベーシストです。

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この人がマークー

「バンドのメンバーの背中に女の子が飛びついてきた」と、ロックミュージシャンの体験談としては史上三本の指に入るであろうパンチの弱いエピソードを披露した上で、「過激なエピソードなんてないよ。今は80年代とは違う。ぼくのバンドはみんな物静かで、ツアーバスでは本を読んだりしているよ」。変に隠したり恥ずかしがったりすることなく、率直に語っていました。これはあくまで想像ですが、今回のインタビューでトゥイギーやマークーをはじめ数人の「裸の女の子をはべらかせてない組」は、もしかしたら本人たちがその申し出を辞退していたのかもしれませんね。

 さて、エロい話を披露するというよりも、過去の罪を告白するような悲壮感すらただようジョーディでしたが、ほかの出演者たちがポルノ女優とちゃっかり楽しんでいる映像のあと、もう一度登場しました。カメラのこちら側にいるスタッフ(おそらく監督のマット・ゼイン?)が、やや言いにくそうに質問を投げかけるのを、じっと待っています。

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なんですか?

 いったい何を聞かれているのかと思いきや、「世界中の女性から寄せられた情報によると…その…きみのアレはかなり大きいんだってね。本当かい?」。気持ちがいいぐらい、知性ゼロの質問ですね! それを聞いたジョーディも思わず…

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なんじゃそら

 面食らった様子で、目玉をぐるりと回しています(笑)。クスリとも笑わず、慎重に言葉を選びながら…

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一応考えてはいる

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比べたことないよ

「比べる機会がないから、分からないよ。みんなが言うなら本当なのかもね。そういうことにしておこう」と、穏やかな声で答えました。表情と回答に、「どっちでもいいっス」感がにじみ出ていますね(笑)。まあ、10年前のジョーディに同じ質問をしたら、何のためらいもなくこの場でズボンを降ろした可能性もなきにあらずですが…。

 というわけで、以上がジョーディの出演シーン。

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 冒頭でもお伝えしたように、とにかく企画意図がよく分からない作品なので、いろいろ作品情報を調べてみたのですが、どうも、ソサエティ1のメンバーである監督のマット・ゼインがもともとポルノ監督をしており、『Backstage Sluts』『Backstage Sluts 2: No Ass No Pass』というアダルトビデオ(いずれも1998年作品)シリーズの延長上でこのドキュメンタリーが作られたようです。出演者の一人であるプレストン・ナッシュ(ドープ/ソサエティ1)が、自己紹介の際に「今日はこのスタジオで、トゥイギー・ラミレスと作業中だ」と語っているので、たまたまソサエティ1とスタジオで仕事をしていたジョーディが、その場で頼まれてインタビューに応じた…というのが筆者の想像なのですが、どうでしょうか。

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監督のマット・ゼイン

 DVDの紹介文には「過激でセクシーなロック・ミュージシャンの舞台裏を徹底解明」「超豪華アーティストの酒池肉林の世界」と、70年代か80年代だったら成立したかもね!という魅力的な文言が踊っており、もちろんそれは嘘ではないのですが、むしろ2005年という時期に一部のミュージシャンたちがどういう立場に置かれていたかが哀愁とともに伝わってくる、くどいですが面白いんだか面白くないんだかよく分からない作品だったので、興味のある方は、ぜひ探してみてください。

 あ、間違っても、家族に見つかる状況では絶対に鑑賞しないように気をつけてくださいね!(笑)

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え、これってDVDになってるの?

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★作品情報

【タイトル】バックステージ・パス3 UNCENSORED
【レーベル】ハピネット・ミュージック
【出演】ベン・ムーディー(元エヴァネッセンス)、ジェイソン・ミラー(ゴッドヘッド)、マーク―(フーバスタンク)、トゥイギー(ア・パーフェクト・サークル)、プレストン・ナッシュ(ドープ)、マット・ゼイン/シン/ダート(ソサエティ1)、ヘイト・ダディ(ウルフ・パック)ほか

参照:IMDb

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