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Jeordie White(a.k.a.Twiggy / Twiggy Ramirez)を知るためのブログ。時空をさかのぼって不定期更新中。May the force be with you!

ピーター・マーフィーと共演!【セッション】Live in Boston:前置き編(2006年6月23日)

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 ジョーディが、トレント・レズナー率いるナイン・インチ・ネイルズ(以下NIN)の一員として「With Teeth: Summer Amphitheater Tour」と題されたツアーで北米を回っていた真っ最中の2006年6月。ツアー会場のひとつ、ボストンのTweeter Centerで、ちょっと趣向の変わったセッションがおこなわれていました。

 趣向の変わった…というのもこのセッション、なんと、ライブ会場のバックステージにたった15名ほどの観客を入れて、ライブ当日におこなわれているのです。さすがにライブが終わった後ではないでしょうから、日中に開催されたのではないかと思われますが、窓のない室内ということもあり、時間帯が分かりません。この日と合わせて4回おこなわれたラジオ放送のための公開録音のひとつらしいのですが、番組の詳細や放送日時などは不明です。

 NINのYouTube公式チャンネルに全4曲の映像がすべて公開されているにもかかわらず、やたらと情報が少ないこのセッション(というかミニライブ?)。しかしながら、「よくぞこれを映像に残してくれた!」と、ジョーディ・ファンならずとも、NINファンや音楽ファンにはたまらない内容になっています。なぜなら、ジョーディとトレントが、彼らにとって大先輩にあたるバウハウスのボーカル、ピーター・マーフィーと共演しているのです。

 ここで、ピーター・マーフィーっていったい誰?と思ったあなた。

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見よ、このクールさ

 この写真でいちばん前に立っているのが、ピーター・マーフィーです。なんとなく、吸血鬼っぽいですよね…? 吸血鬼っぽい音楽をやっているのかな…と安易な想像をしてしまうかもしれませんが、その想像は当たっています。というのも、バウハウスは、現在「ゴシック・ロック」と呼ばれている音楽、すなわちNINやマリリン・マンソンらがのちに活躍するジャンルの開拓者的な存在なのです。バウハウスの結成は1978年ですが、そのダークで攻撃的、かつ削ぎ落されたシンプルなサウンドは2021年の今聴いても新鮮で、一言でいうと、しびれます。興味のある方は、ぜひ音源や映像をチェックしてみてください。とくにデビュー作の「In The Flat Field」は、前知識がなくても、一曲目から魂を半分どこかに持っていかれると思います。

 このままだとバウハウスについての記事になってしまいそうなので、セッションの話に戻ります。ライブセッションの出演者は、ピーター・マーフィー、トレント、ジョーディ、そして当時NINのプロデューサーであり、2021年現在NINの(トレント以外)唯一のメンバーであるアッティカス・ロスの4人。前述した通り、このセッションは「With Teeth」ツアーの合間におこなわれていますが、実はピーターも、再結成したバウハウスのメンバーとして一緒にこのツアーを回っています。つまり、一緒にツアーを回っている気心知れた4人による演奏というわけです。

 ただし、ジョーディがここに参加しているのは、やや異色といえるかもしれません。なぜなら、NINのベーシストであるジョーディが、このセッションにはギタリストとして参加しているのです。当時のNINのギタリストはアーロン・ノースですから、自然に考えると「トレントがベース、アーロンがギター」という選択肢もあったはずです。あるいは「トレントがギター、ジョーディがベース」パターンもありますよね。アーロンが暴れる危険性や、演奏する曲との相性を考えて、トレントがジョーディをギターに抜擢したのでしょうか。あるいは、トレントが単にベースを弾きたい気分だったのでしょうか。真相は謎です。

 さて、映像に入る前に、簡単にジョーディ&トレントとピーター・マーフィーの関係を見ておきましょう。まずは、ジョーディ。なんといっても下の写真を見てもらうのが、いちばんてっとり早いでしょう。

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顔がまだ子供

 お気づきでしょうか。バウハウスTシャツを着ています(笑)。1989年頃(18才頃)のジョーディです。時期的に、ジョーディがマリリン・マンソンの前に在籍していたAmboog-A-Lardのライブ中の写真ではないかと思います。もう1枚、こんな写真も見つけました。

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だいぶはしゃいでます

 ちょっと見づらいですが、肩車されているのがジョーディ。たぶん上の写真と同時期に撮られたもので、一緒に映っているのはAmboog-A-Lardのメンバーです。よく見ると、ここでもバウハウスのタンクトップを着ているんです。この2枚の写真だけで、どれだけジョーディがバウハウス好きだったかが伝わりますね! この頃すでにバウハウスは解散して数年経っているはずなので、もしかしたら後追いでファンになったのかもしれません。というわけで、少年時代に「バウハウスの一ファンだった」ジョーディです。

 一方、同時期のトレントは、Tシャツを着て無邪気にはしゃいでいるジョーディに比べると、一歩先を行っています。というのも、ピーター・マーフィーの1990年のツアー「Deep Tour」のオープニングアクトとして、NINのデビューアルバム「Pretty Hate Machine」のツアーをおこなっているのです(ややこしいですが、ピーターの前座としてNINのツアーをしたということ)。二人が一緒に映っている写真が見つけられなかったので、雰囲気だけでもつかむために1990年頃のトレントの姿を見てみましょう。

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Photo by Larry Busacca

 何か叫んでいます。この時トレント、25才頃です。デビューして1~2年しかたっていないにもかかわらず、すでに「トレント・レズナー感」を漂わせています(トレント・レズナーですから当然ですが…)。オープニングアクトとはいえ、1990年の時点でピーターとすでに同じステージに立っていたわけで、今回のセッション開催時(2006年)には、二人は知り合って少なくとも16年が経っていることになります。

 ちなみにマリリン・マンソンは1994年にNINのオープニングアクトを務めているので、ジョーディとトレントも知り合ってから約12年。ピーターほどではないですが、やはり長い付き合いです。

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ぼくたち、なんだかんだ長いっスね

 こうやって歴史を振り返ってみると、かつてピーターのオープニングアクトを務めたトレント、そしてトレントのオープニングアクトを務めたジョーディという、音楽的にはある意味、3つの世代にわたる共演であることが分かりますね。

 しみじみ思いをはせていたら、映像に入る前に、文章が長くなってしまいました。いったんここで区切ります。前知識はこれぐらいにして、さっそく映像を見てみましょう! 次回へつづく。

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意外と先輩たちと相性がいいトレント

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