2007年4月26日から5月3日の約一週間にわたって、オンラインでおこなわれたファンとのQ&A。今回は、いよいよ最終回です。→第1回、第2回、第3回
【開催日:2007年5月3日 出典:basetendencies.com】
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●こんにちは、ジョーディ。みんなの質問に答えてくれるなんてすごいね、どうもありがとう。子供時代についてネット上でいろいろ書かれているけど、音楽に囲まれて育ったの? お母さんとラモーンズにつながりがあったというのは本当? それと少年時代にバリー・ギブと会った経緯を教えて。(質問者:Anais Morr)
ぼくのお母さんは、キンクスとマウンテンのゴーゴー・ダンサー(グルーピー)をしてたんだ。ジャークダンスをロンドンに持ち込んだのは自分だと言っているよ。もしかしたら、チャビー・チェッカーとも踊っていたんじゃないかな。叔母さんのジジはラモーンズやビージーズと友達だったから、ぼくをバリー・ギブに紹介してくれたんだ。ぼくが音楽への興味を深めたいちばんの理由が、ジジ叔母さんさ。
●マリリン・マンソン脱退時、脱退を決意するような出来事があったのでしょうか? それとも他のミュージシャンと一緒に音楽を作りたくなった?(質問者:Anais Morr)
基本的にはマリリン・マンソン(バンド)で演奏することや、音楽を作るプロセスに愛着を持てなくなったんだ。バンドの中でぼくだけが変わってしまった。別の方向に成長し始めたので、その穴を埋めるために他のミュージシャンと演奏するようになったんだ。ぼくがいなくなったせいで、MMは代わりにもっと仕事ができる人を入れなきゃいけなくなったのさ。今は、そんな自分たちに何ができるか興味深いね。
●マンソン時代のクレイジーな行動で、後悔してることはある?(質問者:Anais Morr)
後悔なんてないよ!
●先月イギリスに行った時にNINのライブを3夜連続で見たんだけど、ぶっとんだよ! 毎晩、どうやったらあんなにすごいショーができるの?(質問者:Anais Morr)
ぼくにもわからない。
●ブライアン・ワーナー…じゃなくて(失礼)、マリリン・マンソンと一緒に仕事を始めた時のことを教えて。当時はAmboog-A-Lardに所属してたと思うけど、他のメンバーはどんな反応だった? 今でも彼らと友達なのはすごいよ。(質問者:Anais Morr)
彼らはキレていたよ! でも、人生で最高の決断だったよ。
●音楽関係の学位は持ってる?(質問者:Jake Robinson)
まさか。
●この手の質問にはうんざりだと思うけど、ずっと気になってるので教えて。脱退後にマリリン・マンソンの新作「Eat Me, Drink Me」を聴いて、脱退したのは正解だと思った? トレントと二人でアルバム聴きながら笑ってるとか?(質問者:JFergODU)
まだアルバムは聴いてないけど、優しくね。彼はぼくがいなくてもうまくやってると思うよ。MMに加入したことは、ぼくの人生で最高の出来事だ。脱退だって同じことさ。
●ブライアン・イーノの作品は好き? 影響は受けた?(質問者: Sam)
大好きだよ。
●まず言っておきたいのは、ずっと前からあなたのファンだってことだ、ジョーディ。あなたのベースの弾き方が大好きで、自分もベースを始めたいと思ってる(ギターは長年弾いてるけど)。初心者にはどんな種類やメーカーのベースがおすすめ?(質問者:Jared)
フェンダーのプレシジョン・ベースをゲットするんだ。
●スパイダーマン3とバットマンの続編、楽しみなのはどっち?(質問者:Kevin Spearing)
バットマン。
●GGアリンをどう思う?(質問者:murderjunkie97)
拍手はしないね。
●ナイン・インチ・ネイルズに加入していちばん良かったことは?(質問者:Annabel)
毎日、いつでもアリーの隣にいられること。
●こんにちは。19才です。音楽で食べていきたいと思ってるんだけど、音楽を始めるには年齢的に遅すぎると思う? いつも頭の中にはリフやビートが浮かんでいるのに、その音を外に出す方法がないんだ。前にエレキギターを買ってもらったけど、教会の音楽しか聴いていなかったせいでインスピレーションが湧かなかった。それと、最初にギターを弾いてからベースを弾くのと、ベースを弾いてからギターを弾くのとでは、どちらがおすすめ?(質問者:downintheparkx13)
ぼくならまずギターから始めるよ。ベースは後からでもいけると思う。遅すぎるなんて思わないよ。やってみろよ! がんばれ!
●再結成ブームだけど、もう一度見たいバンドはある?(質問者:Lysann)
ロジャー・ウォーターズとピンク・フロイドのツアー。最強!
●初めて行ったコンサートは?(質問者:Lysann)
ZZトップかKC&ザ・サンシャイン・バンドじゃないかな。
●こんなこと聞くのは失礼だけど、いちばん泣いたのはいつ?(質問者:twiggy_manson666)
たぶん、生まれたとき。
●デイヴ・ナヴァロの本に書かれた自分の姿をどう思う?(質問者:Joseph)
90年代とドラッグのせいにしてくれ。みんな、面倒には巻き込まれないようにね!
●多くの人が、(とくにMTV Cribsでの)あなたのチャーミングな話し方は、トム・グリーンから盗んだと言っていますが?(質問者:Joseph)
前にも聞いたことあるけど、わざとじゃないよ。彼はすごく面白いよ。
●あるビデオでは無敵のゴスの死神みたいだと思ったら、別のビデオではジャーニーの曲に合わせて踊りながら飛び跳ねるキュートな青年に見える。いろんな面を持っているのがあなたの魅力であり、同時に謎でもあるんだけど、自分ではどう思ってる?(質問者:Joseph)
スティーヴ・ペリーは最高さ!
●「Fade to Black」の冒頭のリードギターって、無限の宇宙に広がる広大な星空の下で車のボンネットに座っているような気分にさせてくれるよね?(質問者:Joseph)
まさにそうだね!
●あなたにとってファンとは? とくに、一桁台の頃から応援している私たちのことをどう思ってる?(質問者:Julia)
えーと、一桁ってことはないんじゃないかな。最初は少なくとも10人はいたと思うよ。ははは。
●なにか宗教を信仰して育ちましたか? 今はどう?(質問者:Holly)
いや、ぼくのお母さんは決してぼくに宗教を押しつけなかったよ。今は、いろいろな本を読んでいるところ。どれも、ある意味では理にかなっていると思う。自分がどの地域で生まれたかにもよるんじゃないかな。
●Goon Moonのビデオはオリジナリティがあって、素晴らしいね。ファンのみんなもあなたがやることを楽しんでいるみたい。今後、予算をかけて、いわゆるMTVで流れるようなプロフェッショナルなビデオを作る予定があるのか、それともこのまま自分で作った動画をYouTubeにアップしていくつもりなのか教えて。Goon Moonはそういう方向にいかないようミス・モスにコントロールされているとか? あなたには目的地が分かってる?(質問者:Curara)
早くプロフェッショナルなビデオを作れるといいなと思ってるよ。どこに連れて行かれるのかは、まだ分からない。できれば月(Moon)がいいね。
●9.11の同時多発テロを知ったときの状況を教えて。(質問者:Ashley)
寝てたよ。友人のジョージ(MTV Cribsを見てね)が電話で起こしてくれて、「ついにやった、奴らがついにやったんだ! テレビをつけろ!」と教えてくれたんだ。
●ハイ、ジョーディ。自分の曲を作るのと、メイナードやトレントみたいに高度な要求をするミュージシャンの曲を完成させるのとでは、どっちが難しい?(質問者:Alyssa)
どちらもそれぞれにチャレンジングだよ。音楽を作ることは、いつだって最高にやりがいのあることなんだ。
●マンソンの自伝「The Long Hard Road Out Of Hell」の中で、彼は、あなたが一時期、マリリン・マンソンよりもNINの一員になりたがっているように見えたと書いています。10年後の今、それが現実になったわけだけど、今後NINの曲作りに参加する可能性はある?(質問:Sierra Ortiz Carlos)
物事がそういうふうになったのは興味深いね。NINの曲作りにはぜひ参加したいと思っているよ。TR(注:トレント・レズナー)とはACSS(注:Antichrist Superstar)で一緒に素晴らしい作品を作った。彼は誰にも頼らず素晴らしい仕事をしていると思うよ。
●私はマリリン・マンソン時代にあなたが着ていたドレスを6着持っています。「Sweet Dreams」のビデオのドレス、「Tourniquet」のビデオの中で回転している時に着ていたドレス、1998年にステージで着ていた紫の「Mechanical Aimals」(注:Mechanical Animals)のドレス、ゴールドの「Dope Show」(注:The Dope Show)のビデオのドレス、ブラウンのアレキサンダー・マックイーンのドレス、2001年にステージで着ていた赤のストライプが入った黒とグレーのパッチワークのドレスです。今までにお気に入りのドレスはあった? 今でも時々ドレスを着ることがある?
細かいところに気をつけて!!!!
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以上、Q&A最終回でした。いやー、いい質問ばかりですね! ファンのみなさんの熱量が伝わるようです。これ、実際にはどれぐらいの時間だったんでしょうね。文字で読むとかなりのボリュームですが、意外と短かったんでしょうか? 今でこそ世の中にはTwitterなど相互にやりとりできる便利なツールがいろいろありますが、2007年というと、まだFacebookが登場したばかり…ぐらいの頃ですよね。(おそらく)世界中の誰でも参加できる形で、しかもこうして記録が残る形でおこなわれたと考えると、あらためて貴重なQ&Aだと思います。
さて今回の内容ですが、最終回にふさわしく、かなりつっこんだ質問が多いです。ファンのみなさん、攻めましたね~。ジョーディも構えることなく、率直な思いを語っています。とくに音楽に関するまじめな質問には、真剣に答えているのが印象的ですね(なぜ毎晩いいライブをできるのかは分からないようですが…)。やはりここは、ジョーディに対するファンのあふれる愛と敬意が伝わったのでしょうか。
ではひとつひとつ補足を…といきたいところですが、今回は、簡単にはいかなそうです。とにかく、情報量が多すぎるのです。バンドやミュージシャンの名前がばんばん出てきて、全部を追っていたら、ちょっとした辞典が作れてしまいそうです。もちろん筆者には辞典をつくる気力も能力もありませんので、気になったところだけつまみ食いしていこうと思います。
まず、少年時代にバリー・ギブと会った…というエピソード。バリー・ギブといえば、そう、第2回のQ&Aでファンの人に彼のランチボックスをもらったという、あのビージーズのバリー・ギブです。え?子どもの頃に会ってたの?と思ったら、こんな写真を見つけました。
なんと、子ども時代のジョーディと、バリー・ギブではありませんか! バリーにぎゅっと肩を抱かれたジョーディが、嬉しそうに満面の笑みを浮かべています。撮影の日付は分かりませんが、おそらく70年代後半でしょうか。ピンク・フロイドやZZトップのコンサートに行っていたのも、この頃かもしれませんね。素敵な写真です。後に、ジョーディ自身もインスタグラムに投稿していました。
マリリン・マンソン関連の質問もあいかわらず多いですね。自分が脱退した後のマンソンに関するちょっと(というかかなり)意地悪な質問に、「(彼に)優しくしてあげて」と言ってるのが泣けます。ジョーディ、あんた…いいやつだね! 当時のクレイジーな行動について「後悔なんてない」と言い切っているのもかっこいいです。ちなみにマリリン・マンソン加入前に在籍していたAmboog-A-Lardというのが、こちら。
左端にいるのがジョーディです。マンソンの自伝によると、ちょうど彼らがファーストアルバムを製作している真っ最中にマンソンがジョーディに電話をかけて、「マリリン・マンソンに入らないか?」と誘ったそうです。さすがにその場では返事しなかったみたいですが、結果的にジョーディはすぐAmboog-A-Lardを脱退しちゃったわけですから、そりゃー、他のメンバーはキレますよね(笑)。普通だったら「もう、あいつとは一生口聞かねえよ」状態になりそうなのに、その後の関係が良好というミラクル。そこは「誰とでも仲良くなれる」ジョーディの人徳なのか、それともAmboog側の懐がめちゃくちゃ深かったのでしょうか。
ナイン・インチ・ネイルズでいちばんよかったことは?という質問には「アリーの隣にいられること」と答えていますが、アリーとは、いったい…? 響きが女性っぽいですが、聞いたことのない名前です。スタッフか誰かなのだろうか…と頭を悩ませた結果、ひょっとしたら、キーボードの「アレッサンドロ」の愛称なのかも?という可能性に思い至りました。なぜなら、アレッサンドロはステージでいつもジョーディのすぐ後ろにいるのです。だとすると、スッキリしますよね。が、これは完全に筆者の憶測です。うーん。アレッサンドロ、アレッサ…アリー。ありえそうです、アリだけに!
さて、残りは駆け足で。本人も見てねと言っているMTV Cribs(2001年に出演した番組)ですが、2021年現在、「正式に」見る方法がありません。多くのファンが涙をのんでいます。MTVよ、今からでもいいから配信してくれ! スティーヴ・ペリーはジャーニーの元ボーカル。ジョーディがジャーニーの曲にのってダンスする姿は、A Perfect CircleのDVD「aMOTION」で確認することができます。その時々で見せる姿が別人、というか別の生き物になるのは、本当に彼の大きな魅力ですよね。トム・グリーンは現在も活躍中のコメディアン。非常に面白いのですが、話し方が似ているかどうかまでは筆者の耳では分からず。
ドレスを6着所有しているというファン、シンプルにすごい! 家宝ですね。ただ、ここのジョーディの回答が、よくわかりません。原文は「Attention to detail!!!」なのでそのままだと「細部に注意!」ですが、どういうことでしょうか。悩みに悩んだ結果、質問者がタイトル表記を微妙に間違ってるので、それをやんわり指摘した冗談ではないかと解釈し、このように訳しました。間違っていたらすみません。GGアリンは、超過激なパフォーマンスで知られるアーティストです。Goon Moonのビデオについて、「もっとちゃんとしたもの作ったほうがいいんじゃ」ということをファンの方がオブラートに包んで伝えているのが面白いですが、本人も分からないという行き先。いつかまたGoon Moonを再開して探求してもらいたいものです。
筆者がいちばんぐっときたのは、音楽を始めるのは今からでも間に合うかと悩むファンへのあたたかいアドバイスです。ジョーディの優しい人柄が伝わりますね。それと笑ったのは、「面倒に巻き込まれないようにね!」でしょうか。デイヴ・ナヴァロの本、日本語版がないので筆者は手を出せずにいますが、相当クレイジーな行動が描かれているにちがいありません。
というわけで全4回、いかがだったでしょうか。笑える回答から、ぐっとくるまじめな回答まで、ジョーディが日頃どんなことを考えて音楽を作っているのか、そもそもジョーディってどういう人なのか?が垣間見える、楽しいQ&Aでしたね。大急ぎで駆けぬけたので、もし新たに気づいたことがあったら、今後追記していきたいと思います。いつかまた、こういう機会が訪れることを心から願いつつ…
最後は、「無限の宇宙に広がる広大な星空の下で車のボンネットに座っているような気分にさせてくれる」というメタリカのこの曲を聴きながら、一緒に余韻にひたりましょう!
★★目次★★