リンゴ・スターを父に持ち、ザ・フーやオアシスでの活動でも知られるドラマーのザック・スターキーが、現在の妻であるスシュ・リグズと取り組んでいたプロジェクト「SSHH」(スシュ)。2017年に発売された彼らのセカンド・アルバム「Issues」に、トゥイギーがマリリン・マンソンのドラマーだったギル・シャロンと共にゲスト参加していました。
「Issues」は、若い癌患者を支援することを目的として企画されたカバー・アルバム。驚くことに、どのトラックにもオリジナル曲に携わったメンバーが参加しています。セックス・ピストルズやスモール・フェイセスなどの楽曲が並ぶなか、トゥイギーは、ザ・ビッグ・ピンクの「Dominos」でベースを担当。そのレコーディング風景が、ミュージック・ビデオとしてSSHHのYouTube公式チャンネルで公開されています。
このビデオ、トゥイギーの自然体でリラックスした姿が垣間見れて、なかなか貴重! ドレスやスーツに身を包んでいない「素顔」バージョンのトゥイギーを、わずかな時間ですが堪能することができます。ただし、ベースの音は、いつも以上にヘヴィーでダーク。それがかえって楽曲が持つポップさを引き立てて、不思議な味わいをかもしだしています。
では、さっそく見てみましょう。ちなみにスシュと共にボーカルを務めているのが、ザ・ピッグ・ピンクのボーカルであるロビー・ファーズ。ザックはギターを弾いています。ドラマーはあまり他の楽器を演奏しないイメージがあったのですが、ザック、ギターも弾くんですね!
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出だしから、笑ってしまうほどゴス色全開のトゥイギーのベースと、力強いギルのドラムが響くなか、スシュとロビーの美しいコーラスが始まりました。
イントロから要所要所で繰り返されるベースラインが非常に印象的ですね。原曲ではどうなっているのか確認したところ、もともとのベースはかなりシンプルでさわやかな感じでした。下の動画が、オリジナル・バージョン。ぜひ、今回のカバー・バージョンと聴き比べてみてください。イントロだけでなく間奏やアウトロ部分も、大幅にアレンジが加えられていることが分かります。
自然に考えると、この暗くて美しいベースラインを考案してアレンジを加えたのは、トゥイギーである可能性が高いですよね? だとすると、楽曲の良さを生かしながら大胆にダークなテイストを盛り込んだところに、やはり、彼の隠しきれない才能とセンスを感じずにはいられません。さすが、マリリン・マンソンとア・パーフェクト・サークル、ナイン・インチ・ネイルズを渡り歩いてきただけのことはある、安定の暗黒担当ですね!
スシュのややハスキーで素敵な歌声も、トゥイギーとギルのリズム隊二人によるダークな世界と絶妙にマッチしています。
トゥイギーと女性ボーカルの組み合わせというと、一番に思い浮かぶのはやはり、1998年に本家のツイッギーと「Twiggy & Twiggy」というそのまんまな名義で共演した「I Only Want To Be With You」(『デッドマン・オン・キャンパス』サウンドトラック所収)。「I Only~」が、一言でいうとなかなかの珍品に仕上がっているのに対し、今回の「Dominos」は曲とボーカル、演奏がいい感じになじんでいます。トゥイギーが成長したのか、それとも、前回は選曲にそもそも無理があったのでしょうか(笑)。
キャッチーなメロディと共に繰り返される「女の子たちがドミノ倒しになる~♪」という、なんのこっちゃ!な歌詞ですが、いろいろ調べてみても、やっぱりなんのことなのか分かりませんでした。ロビー、教えておくれ。
さて、曲の話はこれぐらいにして、ビデオに映っているトゥイギーの姿を確認しておきましょう。例によって油断すると見逃すこと間違いなしのわずかな時間ですが、リズムをとりながら気持ちよさそうに演奏する様子を見ることができます。
よく見ると、左手に結婚指輪が光っていますね。終始、真剣な表情でベースを弾いています。うーん、かっこいい!
さて、ファン的にポイントが高いのは、後半の2分22秒のあたり。録り終えた音源をみんなとチェックしている様子のトゥイギーが、曲に合わせて、スシュと一緒に踊っています!
両手を交互に振って、とても楽しそうです。トゥイギーのご機嫌なダンスに、スシュも笑顔です。
スシュがギターを演奏する姿が一瞬挟まれた後、再びモノクロの場面に。あっ、よく見ると…
右端に、トゥイギーがいますね! カメラが近づくと、ここでもやはり曲にあわせて、気持ち良さそうに体を揺らしています。
横でギル、奥でザックも思い思いに体を揺らしています。一人一人、曲に聴き入っている感じが、最高ですね! きっと、みんなが納得いく仕上がりになって、満足した気持ちに浸っていたに違いありません。
エンディングに向けて、演奏のテンションもどんどん高まっていきます。
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以上が、ミュージックビデオです。
歌が終わった後のアウトロで、ベースとギターが「ひねくれた感じ」になっているのが、面白いですね。きっと、原曲にはなかったこのあたりの不穏な要素こそ、ザックが求めていたものだったのではないか…と思わせる、当時のインタビューを見つけました。こちらです。
「ザック・スターキー率いるSSHH、『Dominos』のMV公開」というタイトルに続いて、見出しに「マリリン・マンソンの二人組、トゥイギーとギル・シャロンがゲスト出演」の文字があるインタビュー記事。この中で、ザックが二人を呼んだ理由を、「この曲のヘヴィーなバージョンを作りたかったんだ。あの猫たちは、ヘヴィーだからね」と語っています。
ユーモアあふれる独特な表現に、どうしてもお父さんの血を感じてしまうのは、筆者だけでしょうか。
今回の意外ともいえる共演ですが、どうも、トゥイギーとザックはもともと友人だったようですね。筆者が、英語に苦戦しながらこつこつ聞き進めているトゥイギーのポッドキャスト番組「Hour Of Goon」にも、ザックとのエピソード(もしかしたらザック本人?)が出てきそうな気配が…。もし「Dominos」のことについて触れられていたら、この記事に追記したいと思います。
ところで、ザ・ビッグ・ピンクのドラマーがあまりにもかっこいいので調べたところ、アキコ・マツウラという日本人女性の方でした。ele-kingにインタビューが掲載されていたので、興味のある方はぜひ。
というわけで以上、トゥイギーのダンス姿が楽しい「Dominos」MVでした!
★★目次★★