ベルギーのブリュッセルを拠点に活動する四人組バンド、Emptiness。彼らにとって5枚目となるアルバム『Not For Music』(2017年1月20日発売)のプロデュースを、ジョーディが手がけていました。リリース直前、カルチャー誌VICE系列のウェブサイト「Noisey.com」に彼のインタビューが掲載されていたのでご紹介します。ブラックメタルへの愛やスター・ウォーズの魅力など存分に語っています。
変貌自在なベルギーのエクストリーム・メタル・バンド、Emptinessのニューアルバム『Not For Music』をストリーミング公開。トゥイギー・ラミレスがスラッシュメタル、スター・ウォーズ、そしてトゥイステッド・シスターの魅力を語る
執筆:J Bennett 掲載日:2017年1月11日 カバー写真:Monty Jay/mjph0to 写真提供:Season of Mist
「自分が好きな作品のタイトルが分からないなんて、偽善者だと思われちゃうね」。トゥイギー・ラミレスは携帯で、タイトルは思い出せないが最近ハマっているというアンダーグラウンド界のドゥーム/スラッジ系エクストリームメタル・バンド、ザ・ボディのアルバム情報を探している(結局、『I Shall Die Here』と判明)。ここは、ラミレスの自宅から数軒先にあるウェストハリウッドのレストラン。最近どんな音楽を聴いているかたずねたところ、このような答えが返ってきた。脱退と復帰を経て、長年マリリン・マンソンのベーシストとして活躍しているトゥイギー・ラミレス(本名ジョーディ・ホワイト)。ア・パーフェクト・サークルやナイン・インチ・ネイルズでの功績でも知られている。一方、こちらはあまり知られていない事実だが、彼は数年前から本格的にブラックメタルに傾倒している。それが高じて今回、ベルギーのブラックメタル界の異端児であるEmptinessの新作アルバム『Not For Music』のプロデュースを手がけることになった。
T:そうだね。音楽の好みに関しては年を重ねるにつれて、ちょっとずつ実存主義的になってる。といってもぼくは、ピンク・フロイドの大ファンなんだ。最高に好きなバンドだよ。『Dark Side Of The Moon』はいちばん気に入ってるアルバムだ。たくさんの人に愛されてるし、確実に史上もっとも人気のあるレコードのひとつだよね。ただ、ぼくが幼い頃に初めて聴いたレコードのひとつでもあるんだ。子どもが聴くには、かなりめちゃくちゃな作品だと思うよ。その時の記憶が残っていて、今でも怖いんだ。
――マリリン・マンソンのメンバーで、あなた以外にブラックメタルを聴く人はいるんですか?
T:ぼくだけが、ちょっと変わり者なのさ。ブラックメタルでみんなを拷問してるよ(笑)。
――Emptinessとはどのように知り合ったのでしょうか。
T:彼らのひとつ前のアルバム『Nothing But The Whole』を偶然見つけたんだ。ジャケットのデザインがかなり恐ろしくて、素晴らしいんだよ。どうやって見つけたかは覚えてないけど、聴いてみたらすごく気に入ったんだ。ピンク・フロイドを聴いたときに近いものを感じたね。音の質感やアンビエントな響きが最高でさ。それで、他のアンビエント系ブラックメタル・バンドも聴くようになって、結局、最初に生まれたノルウェーのブラックメタル・シーンを研究し始めたんだ。当時のぼくにはまったく理解できなかったのにね。彼らに対して、メーキャップとかショッキングなイメージしか持ってなかったんだよ。「ロード・オブ・カオス」(旧邦題「ブラック・メタルの血塗られた歴史」)に書かれている話はとても興味深かったけど、音楽には全然惹かれなかった。だけどEmptinessのおかげで、メイヘムやダークスローン、特にバーズムを再発見することができたんだ。ヴァルグは最高さ。面白い人物だし、彼のレコードにも心を揺さぶられたよ。雰囲気とか演出されていないサウンドが、まさに激痛を思わせるんだ。
――元マリリン・マンソンのベーシスト、フレッド・サブランとポッドキャスト『Hour Of Goon』を配信していますね。どのようにして始まったのでしょうか。
T:きっかけは、『The Force Cult』っていうスター・ウォーズのポッドキャストに出演しないかと誘われたことだったんだ。ゲスト出演をしてから、レギュラーになったよ。その後、妻や友達にすすめられて、ぼくも自分のポッドキャストをやってみようと思ったんだけど、一年ぐらい煮詰まっちゃってたんだ。で、ある日、やる決心をして、友人のフレッド・サブランに電話して一回録音してみたら、楽しくて。子どもの頃にカセットテープを作ったときみたいな感覚だったよ。ぼくがロニー・ジェイムズ・ディオ役、友達がジャーナリスト役で、彼の質問にぼくが答えてたんだ。あるいは、もっと後になってミックステープを作ってる時みたいな感覚だね。そういうわけで、曲やアルバムを作るようにポッドキャストをやってみようと思ったんだ。ポッドキャストの紹介用にちょっとした雑音を作ったり、ある話をしてる時は、その場にいるように聴こえるようにいろんな効果音を入れたりしてね。ドクター・ディメントとかチーチ&チョンの古いレコードに近いね。大満足だよ。あまり個人的な話はしないけど、まるでセラピーに通うみたいに、二人で毎週いろんな話をしてるんだ。
トゥイギーと女性ボーカルの組み合わせというと、一番に思い浮かぶのはやはり、1998年に本家のツイッギーと「Twiggy & Twiggy」というそのまんまな名義で共演した「I Only Want To Be With You」(『デッドマン・オン・キャンパス』サウンドトラック所収)。「I Only~」が、一言でいうとなかなかの珍品に仕上がっているのに対し、今回の「Dominos」は曲とボーカル、演奏がいい感じになじんでいます。トゥイギーが成長したのか、それとも、前回は選曲にそもそも無理があったのでしょうか(笑)。
今回の意外ともいえる共演ですが、どうも、トゥイギーとザックはもともと友人だったようですね。筆者が、英語に苦戦しながらこつこつ聞き進めているトゥイギーのポッドキャスト番組「Hour Of Goon」にも、ザックとのエピソード(もしかしたらザック本人?)が出てきそうな気配が…。もし「Dominos」のことについて触れられていたら、この記事に追記したいと思います。
今週の「Hour Of Goon」は、ジョーディとフレッドに寄せられた質問をザック(・ウェブ)が読み上げます!
今日はみんなの質問に答えます/シャツとキャンディバーとマック&チーズ/衝動買いしたものは?/子供の頃にジョーディが買ったギターとスターウォーズ・グッズ/ジーン・ジニー/ジョーディが飼っていた猫セイディとジャック/本番前の儀式/音楽もバンドも苦手なジョーディが聴く曲/NINのステージ中に腹痛に襲われたジョーディ「バケツを!」/頻尿のザックとフレッド/タートルネックは好き?/一番好きなレコード/ボウイの遺作について/音楽を始めた経緯と影響を受けたミュージシャン/スター・ウォーズのキャラになるなら?/好きなビリー・ゼインの映画は?/アップルパイv.s.カボチャパイ/好きな街/ハットをかぶっている人は信用できない/初めてタトゥーを入れた時の話/オアシス関連のタトゥーは3つ/ジョーディの話題に喜んでいたギャラガー兄弟「トゥイギー!」/奇妙な体験/スープ好きな三人/「Hour Of Goon」の展望/一緒に行ったライブ/バリー・ギブのライブでオリヴィア・ニュートン=ジョンに会ったジョーディ/ワカモレの歌/終わりの挨拶後に話が止まらない三人/ウォーキング・デッドを語るジョーディ「ニーガンはヤバい」/ピーター・ガブリエル/ワカモーレ!
冒頭のあいさつは苦手/寝る前のルーティーン/顔も声もイケメンのピギーD登場/またプライム・ナウの魅力を語るジョーディ/スター・ウォーズと食事/ホラー映画談義/アーノルド・パーマー/ジョシュ・フリーズの言い間違い/映画『スティーブ・ジョブズ』感想/映画『ウィッチ』にがっかりしたジョーディ/We love you レイニー/吠えまくるチューバッカ/映画のエンドロール見る?/フランス語風「コーラをください」/グー・グー・ドールズはパンクバンドだった/ブレア…誰?/映画のロケ地が近所に/ドン・ノッツに似ているがダンスは踊れないジョーディ/思い出したくないジョーダッシュ・ジーンズ/デイヴ・グロールはいい人/豪華ゲストが参加したジョーディの誕生日パーティ(2002年頃)/フレッドが働いていたアメーバ・レコードに来店したのは…/ロジャー・ウォーターズ/デイヴ・メイスンをピンク・フロイドのメンバーと勘違いしていたジョーディ/スター・ウォーズのグッズを買う基準/ベースの話を一秒もしなかったベーシスト三人
ジェフ・デイヴィス(Harmontown Podcast , Who's Line Is It Anyway?, Highway To Heaven)がジョーディとフレッドの「Hour Of Goon」に登場! ウィ―――! マジでおかしくなっちゃった。
ジョーディたちの声が好きなジェフ/ぼくたちはローエナジー/本日もピザを食べながら/ジョーディ、『Blood Bath』出演/ピザ談義/毛をピンク色に染めているジョーディの犬/ジェフの初恋/なぜかスター・ウォーズの海賊版を持っていたジェフの母/マッドマックス/ドガの描きかけの絵を見て泣いたジェフ/アート談義/幽霊見たことある?/今でも怖い映画/「Hour Of Goon」の大ファンなジェフ/スーツの良さ/初めてのメーキャップ/5秒だけ結婚していたフレッド/昔の俳優のような魅力を持つビリー・ゼイン/プレイボーイ・マンションでの出来事/ウェイト、ホワーット?/ロジャー・ウォーターズに会ったジョーディとフレッド/スターたちに会った話/『グリース』の曲を歌っていたら…/バウハウスとツアーを回ったときの思い出/間違ったことを言えるのがポッドキャストの良さ/初の2時間超え
ホラー風オープニング/今日はゲストなし/ホラー・コンベンションに参加したジョーディ/ジョン・カーペンターとの対面/外出の頻度が減った二人/飛行機の座席について/映画館の予告編が長すぎる/スター・ウォーズのグッズ話止まらず/R.E.M.解散の理由/ガンズ・アンド・ローゼズのメーキャップ期/スレイヤーの新作感想/ゲストで来て欲しい人/シェイク・シャック/好きなパンの食べ方/料理本出せば?/フレッド・ファッキン・ブリトー/赤いセーターの男の正体は?/汗臭い/ダニー・トレホ/好きなお寿司のネタ/もうすぐ日本に行くジョーディ/これ以上犬を増やさないで/♪マーマレード「Reflections Of My Life」
ジョーディとフレッドが歪んだ認識を共有する、今週の「Hour Of Goon」! 名誉ある「無口なグーン」のザック・ウェブも加わって…。
「Hour Of Goon」ステレオオーディオ初登場/力になってくれたジェフ・デイヴィス/ドーナツ店でピーター・ジャクソンに会ったフレッドとジョーディ/幸せな人たちが嫌いなジョーディ/ブランチ/ハンバーガーを食べるのに一時間並ぶなんて/深呼吸しよう/テレビドラマが面白い/「lol」は嫌い/ジョーディとフレッドのメールの内容/水がない/ネット注文で届いた荷物を開封し始めるジョーディ/番組Tシャツのイラスト募集/裁判員を務めたことある?/お互いをいい人だねと褒め合う三人/好きなバター/マーマレードの「Reflections Of My Life」について
何度見ても、どういう情報を扱っているのかよく分からない「Brightest Young Things」というおしゃれなウェブサイトに、トゥイギーのインタビューが掲載されていました。記事は2012年のハロウィンの日に公開されていますが、記事の中に出てくる会場名をツアー日程と照らし合わせたところ、インタビュー自体は10月17日におこなわれたようです。いきなりいぶかしげな顔をしているトゥイギーですが、いったい何を聞かれたのでしょうか。トゥイステッド・シスターTシャツ姿の写真とともに、お楽しみください。(→元記事はこちら)
もはや、解説するのもばかばかしいですが(笑)、せっかくなので、いくつか補足をしたいと思います。まず、「Holy Wood (In the Shadow of the Valley of Death)」のレコーディングをおこなったお化け屋敷というのは、奇術師フーディーニが住んでいたという噂で知られる「ザ・マンション」(通称フーディーニ・マンション)という、LAにあるレコーディング・スタジオのことだと思われます。レッチリやスリップノットがレコーディングした場所としても知られています。
7枚目に登場したのは、いわずとしれたイギリスのロックバンド、オアシスの6thアルバム「Don't Believe The Truth」。ジョーディが大のオアシス好きであることはファンの間では有名で、本人もさまざまな場所で公言しています。オアシスのデビューアルバム「Definitely Maybe」がリリースされたのは1994年。マリリン・マンソンのデビューアルバム「Portrait of an American Family」も同じ年にリリースされていますから、国は違えど、ほぼ同期のような存在でしょうか。年齢的に言うと、ジョーディはノエル・ギャラガー(兄)の4つ下、リアム・ギャラガー(弟)の1つ上です。
さて、いよいよ終盤に近付いてきました。「このレコードは本当に素晴らしいよ」といって取り出したのは、クイーンズライクの「Rage For Order」(邦題:炎の伝説)。クイーンズライクは、80年代から活躍するアメリカのヘヴィメタルバンドです。「ヘヴィメタルやクイーンズライクを絶対聴かないような人たちにこのレコードを紹介したんだ。このレコードは1986年発売だけど、みんな、時代をすごく先取りしていて90年代に発表された作品みたいだって言うよ」と熱く語るジョーディ。フレッドもすかさず「これって、『Operation: Mindcrime』より前のアルバムだよね?」と補足します。
さて、いよいよ最後の一枚になりました。聖書の教えを広めるクリスチャン・メタルという、神さまもびっくりなジャンルを開拓したストライパーのデビューアルバム「The Yellow And Black Attack」。1984年の作品です。「本当にこのバンドが好きで」としみじみとレコードに見入った後、「どこまで話していいか分からないんだけど、実はぼく…」。何を言い出すのかと思いきや、
独立系レコードチェーンAmoeba Musicが送る「What's In My Bag?」。毎回さまざまなアーティストをゲストに迎え、お買い物中に見つけたものを教えてもらうという人気シリーズに、ジョーディが登場。ハリウッドにある店舗の一角で、楽しそうにレコードを紹介していました。どうやら気になったものだけではなく、すでに持っているお気に入りのレコードもまざっている様子です。
2. Stars of the Lid - The Tired Sounds of Stars of the Lid
次に手にとったのは、Stars of the Lid の「The Tired Sounds of Stars of the Lid」。「他のレコードほどじゃないけど、大好きだ。眠るのにもぴったりだよ」。調べたところ、トータル再生時間が2時間を越える3枚組のアンビエント・アルバムのようです。
この部分、筆者の英語力があやしくてどうもスッキリ理解ができないのですが、ジョーディは「眠るためにわざわざこれを手に入れるのは無意味だよ。だって、ディスクを変えるにはずっと起きてなくちゃいけないからね。裏返すと、3枚組だから6回ってことだよね?」と言っているのでしょうか…? いや、それならフルで聴かずに途中で眠ればいいんじゃ…(笑)? その後「It's a lot of people, it's a lot of work, so...」と続けているのも、残念ながら筆者の英語力ではいまいち理解しきれず。
5枚目はW.A.S.P. の「Animal (F**k Like A Beast)」。こりゃまた、すごいジャケットですね! 股間からノコギリ出てますけど…。このレコードにはいろいろと思い出があるらしいジョーディ。「よく冗談で言っていたんだけど、この作品はぼくたちーーつまりぼくとマリリン・マンソンに影響を与えたんだ。なぜかというと、ちょっと馬鹿げていて、ホラー・ロックみたいだから」と、ここでもジャケット裏面をカメラに見せるジョーディ。
さらに、「ぼくたちはいつもナイン・インチ・ネイルズをからかってたんだ。彼らが "fuck you like an animal "のアイデアを思いついたのは、この"fuck like a beast "からだってね」。これは、ナイン・インチ・ネイルズの「Closer」の歌詞のことですね。まさにこの曲が収録されているアルバム「The Downward Spiral」がリリースされた1994年、マリリン・マンソンはオープニングアクトとしてナイン・インチ・ネイルズと一緒にツアーを回っていますから、からかう機会はたくさんあったにちがいありません。
話を続けるジョーディ。「ギターのクリス・ホルムズは――"The Decline of Western Civilization Part II"を観たことがある人なら分かると思うんだけど、彼がプールにいる素晴らしいシーンがあるんだ。プールサイドには彼の母親がいて、クリスはウォッカを2~3本くらい一気に飲み干していて…。すごく不穏で悲しくて、そして面白いんだ」。この作品、日本では『ザ・メタルイヤーズ』というタイトルで公開されたドキュメンタリー映画みたいです。