「Radio Alternativemusic」インタビュー後半です。(前半はこちら)
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——トゥイギー、あなたはアコースティック・ナンバー『Scabs, Guns and Peanut Butter』で作曲とボーカルを担当していますね。どのような経緯があったのでしょうか?
トゥイギー(以下T):うん、でも考えて作ったわけじゃないんだ。死んじゃった人間についてのバラード調のラブソングみたいなものだよ。
M:この大ヒット曲をたくさんの人たちが初めて耳にしたのは、ぼくたちが「フィル・ドナヒュー・ショー」に出演した時なんだ。トゥイギーが小型のカセット・レコーダーで、この曲を“演奏”したんだよ。あのカセット・レコーダーは、彼にとって演奏用の楽器のひとつなんだ。
~~ここから『フィル・ドナヒュー・ショー』出演時の映像挿入~~
観客の女性:あなたたちはなぜ、体中に悪魔のシンボルみたいなものをまとっているの? 音楽のせいでそうなってしまったの?
(♪突然鳴り響く音楽)
(話し始めたマンソンを無視し、トゥイギーの方に近づいてくるフィル・ドナヒュー)
フィル・ドナヒュー:面白いことをしてくれるね、トゥイギー。
~~『フィル・ドナヒュー・ショー』の映像終わり。再びインタビューへ~~
M:(番組を見て)みんながあの曲は何?って知りたがったから、EPに収録することにしたんだ。トゥイギー考案のサディスティックな一曲だよ。
T:(インタビュアーに何か聞かれて)うん、『Scabs, Guns and Peanut Butter』と『White Trash』のサウンドは…。
M:あの曲もアコースティックだよね?
T:そうだね、で…(何か言いかける)。
M:(インタビュアーに)『Scabs, Guns and Peanut Butter』っていうのは、かなり短い曲の方だよ。
T: 分かった?(インタビュアーに)きみが混乱してそう思ってしまうのも無理ないよ。欠落していたんだから。気に入らなかったね。
M:レコード会社は、クレジット表記も間違ったんだ。ミスプリントだらけで最低だよ。正しかったのは一ヵ所だけで、あとは間違いだらけだ。
——CDと同時に『Dope Hat』のミュージック・ビデオも制作しましたね。どんな内容か教えてください。
M:『A Portrait Of An American Family』の一曲目『The Family Trip』や、『夢のチョコレート工場』に出てくるボートのシーンに似てるんだ。そのあたりの要素を『Dope Hat』のビデオに落とし込んで、映像で再現したよ。子供向け番組に対する皮肉めいた作品にしたかったんだ。ぼくたちは子供が見るには危険すぎるバンドだと世間の親たちに思われているから、ミュージック・ビデオを子供番組風にすれば、いい皮肉になると思ったのさ。『H.R. Pufnstuf』とか、ぼくたちが子供の頃に見ていた子供向け番組みたいにね。そういうアプローチであのビデオを作ったよ。『夢のチョコレート工場』の、薬漬けでサイケデリックなバージョンってところかな。
——過去のツアーでは地元自治体との間に「問題」も生じていましたね。今回のツアーでトラブルは?
【記事の画像挿入】
ナイン・インチ・ネイルズのリーダー、バンド出演禁止に怒り
Deseret News|1994年10月20日|執筆:スコット・イワサキ
これ以上激しく怒るのは不可能と思われていたナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーが、怒った。
レズナーは、オープニング・アクトを務めるはずだったマリリン・マンソンの出演を中止させたとして、デルタ・センターのオーナーであるラリー・H・ミラーと、ディーディー・コラディーニ市長に対し辛辣なコメントを叩きつけた。デルタ・センターからの手紙には、マンソンのライブが「下品・猥褻・不道徳な行為、公然猥褻、悪趣味な行為を禁止する」という利用上の契約に反していると書かれていた。(※全文はこちらで読むことができます)
M:まだ最大のトラブルかどうかは分からないけど、ロサンゼルスにいた時に、トニー・ウィギンズが現れたんだ。彼のせいで、ぼくたちトラブルまみれになったよ。腹が立って、割れたビール瓶で彼の胸にでかい星を彫ったら、彼、血だらけになってたね。ついこの間…二週間前にカンザス州ウィチタに行った時は、誰かがステージに生きたニワトリを投げてきた。あれは面白かったね。いちばん最近の話だと、ピッツバーグでのライブで自分の胸を切りつけて、ぼくがステージ上で血を流してたんだ。そしたら警備スタッフが、血がかかったとかなんとか言ってキレて、ライブの後にぼくを殺そうとしてきたよ。逃げたね。
——マリリン・マンソンの次のアルバムはいつ頃リリースされるのでしょうか?
M:年明けにレコーディングする予定だから、1996年かな。1996年6月6日にはぜひ何か出したいと思ってるよ。
——マリリン・マンソンのライブではいろいろクレイジーなことが起きますね。今夜のライブを観に行く人たちにアドバイスをお願いします。
M:ステージには近付きすぎないようにね。それと、今日のライブを観に来てくれる人にちょっとしたお願いがあるんだ。放送ではタイトルを言えないんだけど、もしみんながぼくたちのEPを持ってくれてるとしたら、その中にフランキーという名の“紳士”について歌った曲があるんだ。
~~ここからサイン会の映像挿入~~
レポーター:すみません。
男性:何?
レポーター:あなたは、マリリン・マンソンのマネージャーのフランキーですか?
男性:ツアーマネージャーだけどね。そうだよ。
レポーター:『F**K Frankie』について少しお話を伺いたいのですが。
男性:(首を振って)ノーコメントだ。
レポーター:つまり、あれはあなたにとって自慢できることではないし、話したくない内容だってことですね?
男性:実は、何も知らないんだ。
レポーター:***したことはあるんですか?
男性:ノーコメント。
レポーター:なるほど。マリリン・マンソンとのツアーはどんな感じですか?
男性:この目をよく見なよ。オレのこの目が全てを語っているよ。
レポーター:いろんなものが映っているようです。苦痛とか…フラストレーションとか…。
男性:(頷きながら)苦痛さ。
~~サイン会の映像終わり。再びインタビューへ~~
M:今夜、観客のみんなにはぜひ、あの曲で描かれている出来事に参加する機会を得てもらいたいと思ってるよ。素晴らしいだろうね。
(インタビュー終わり)
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以上です。よくぞこれを発掘してくれた!と叫びたくなるほど見ごたえのあるインタビュー映像でしたが、何度見ても不思議なのが、二人が『Scabs, Guns and Peanut Butter』がどの曲かを説明する際の「♪ラーララララララー」です。歌おうと合図したわけでも、それどころかお互いの顔すら見ていないのに、こんなにぴったり息を合わせて歌えるものですかね!? 本人たちは普通に会話の一部という感じなのがまたすごいです。阿吽の呼吸、というかもはや以心伝心ですね。
インタビュアーが『Scabs~』と『White Trash』の2曲を混同したっぽいのがきっかけで生まれたこの奇跡のシーンですが、肝心の、このくだりで語られている内容がいまいちよく分かりません。トゥイギーが何かが「欠落していた」と言っているのは、CDのクレジットにタイトル表記の間違いがあった、ということなのでしょうか…?
ちなみにトゥイギーが作ったこの『Scabs, Guns and Peanut Butter』。実は再生スピードを落として聞くと、“ちゃんとした曲”が現れるのを皆さんはご存知でしょうか。YouTubeでも、「Scabs Guns and Peanut Butter Slowed Down」で検索すると見つかると思います。これを初めて聴いたとき、筆者は感動しました。確かにアコースティックな曲調、そしてはっきりと分かるトゥイギーの歌声。珍曲どころか、名曲です。こんなに美しく哀愁ただよう曲を、チップマンクス化させて自ら台無しにしたトゥイギーはやはり変人です。
それにしても今回のインタビュー、なんといっても二人のヘッドフォンの調子が悪いっぽいのがファンとしてはポイント高いです(笑)。必死でヘッドフォンを押さえるトゥイギーの姿に、ときめかないトゥイギーファンがこの世にいるでしょうか? いや、いない! マイクが一本しかないこと、缶コーラが用意されていたこと、あとトゥイギーの席の位置がインタビュアーに近い側であることなど、ちょっとしたあらゆる要素が、ファンの心をつかみにかかってきます。ありがとう、Radio Alternative!
というわけで、H.R.といえばギーガーだけじゃなかったのね…という謎の「H.R. Pufnstuf」の画像を最後に貼りつけて、この「クールで小さなタイムカプセル」の記事を締めくくりたいと思います。
★★目次★★