2002年5月29日にマリリン・マンソン公式サイトにて突然発表された、トゥイギーの脱退(一回目)。自分の口からはメディアに何も語ってこなかったトゥイギーが、約半年間の沈黙を破り、イギリスの音楽週刊誌「Kerrang!」2002年12月7日号(第933号)で脱退後初となるインタビューに応じていました。
当時のファンが待ちに待っていたであろうこの号。海外のネットオークションにいくつか出品されているのを見つけたのですが、送料がおそろしく高くてなかなか手を出せず。ああ、国際郵便にも一律料金のレターパック的なものがあれば…。
というわけで、筆者がまだ現物を入手できていないため、こちらの記事を翻訳しました。
-------------
トゥイギー、マンソン脱退後の人生
「ぼくたちは今も友達だ」とベーシストが主張
トゥイギー・ラミレスが、マリリン・マンソン脱退の決断について本誌に独占告白。今後の展望についても初めて明かした。
過去10年にわたってマンソンの親友だったラミレスは、近日発売予定のアルバム『The Golden Age Of Grotesque』をレコーディング中だった5月にバンドを脱退。ラミレス離脱後、マンソンは「残念だけどライフスタイル的に、彼の心はもうマリリン・マンソンにはないように思える」とコメントしている。ラミレス本人は脱退を決意した理由について、これまで沈黙を貫いてきた。
「もし爆弾が落ちている時にコメントしていたら、感情的になり過ぎてしまってたと思う。だから口をつぐんで、自分が後悔するようなことを言わないようにしてたんだ」とラミレスは語る。「でも、別にこれといったことは起きなかったんだよ。ぼくたちはただ離れていき、お互いに違うことをしたいと思うようになっただけなんだ。波風立てずに何年も一緒に過ごしてきたから、いずれ何かが起きたはずさ。ぼくたち、かなりうまくやったと思うよ」。
「ぼくたちは、今も友達だ」とベーシストは主張する。「今年はクリスマスカードを送り合わないかもしれないけど、彼とは数週間前に話したんだ。新しいアルバムも聴いてみたいと思ってる」。
バンド脱退後は、露出を控えているラミレス。この半年間で公の場に姿を現したのは、地元LAでの数回のライブだけだ。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(QOTSA)のベーシストであるニック・オリヴェリ率いるサイド・プロジェクト「モンド・ジェネレイター」のライブ(会場:ザ・トルバドゥール)にゲスト出演したほか、エイメンのフロントマンであるケイシー・カオスと一緒に、ロック界のスーパー・グループことキャンプ・フレディが最近行った一回限りのライブにカメオ出演している。ケイシー・カオス、QOTSAのフロントマンであるジョシュ・ホーミ、そして元エイメンのドラマーであるシャノン・ラーキンと共にヘッドバンドという別バンドも組んでいるラミレスだが、現在主軸を置いているのは、QOTSAのプロデューサー兼マスターズ・オブ・リアリティの主宰者であるクリス・ゴス、元ブラック・グレープのプログラマーであるダニー・サバ―と一緒に取り組んでいる自身の曲作りである。新曲のデモを作るため、今週、カリフォルニア州のジョシュア・ツリー国立公園内にあるランチョ・デ・ラ・ルナ・スタジオに向かう予定だ。
「大きなバンドにいると、機械に巻き込まれたような状態になってしまいがちなんだ。マリリン・マンソンを脱退直後のぼくは本当にひねくれた人間になっていて、活動を続けることにあまり意味を見いだせなくなっていたよ」と認めるラミレス。「有名になることは、ぼくにとってどうでもいいことだった。だけど、音楽は大事なものだったんだ。自分を深く掘り下げて、そのことを再発見したよ。今まで以上にそう思うようになったんだ。今じゃ自分で歌も歌うし、曲だって20曲以上作ったよ。曲のスタイルはさまざまで、かなりハードな曲もあれば、メロディアスでビートルズっぽいコード進行のものもあるんだ。マリリン・マンソンという“幕”の下で曲を作る必要がないのは、新鮮だよ。すごく興奮しているし、みんなもきっと驚くと思う。かつて自分が音楽を始めた時と同じ理由、つまり純粋に音楽が大好きだから音楽を作るという境地に戻りつつあるんだ」。
ラミレスは、契約先のレコード会社を探したり新バンドを結成したりするよりも先に、本格的なアルバムをレコーディングするつもりだ。丸一年ツアーから遠ざかっていたため、再びライブで演奏したくて「そわそわし始めている」と認める。
「バンドにいる時の感覚が恋しいんだ。マンソンとぼくは、一緒に素晴らしい作品を作ってきた。だけど、クリエイティブな意味で成功をおさめるためには、脱退する必要があったんだ。ぼくの人生は今、かつてないほど充実しているよ。いい時間を過ごしてるんだ」。
------------------
インタビューは以上です。脱退の経緯についてバンドやメンバーへの不満や悪口めいたものが一切なく、「ただ違うことをしたくなっただけ」「ぼくたちは一緒に素晴らしい作品を作った」と、どこからどう切り取っても穏やかな内容です。偉い! 優しい! 賢い! 本人が語るように対立的なものは本当になかったか、あったとしても語る気は一切なかったのでしょうね。
活動のペースを落として自分と向き合った結果、名声よりもクリエイティブな意味でいい音楽を作っていきたいと決意を新たにした様子ですが、このあたりの浮かれなさ、ミュージシャンとしての真面目さもさすがですね。
時系列的にはこのインタビューの後、トゥイギーは大晦日のパーティでドラマーのジョシュ・フリーズに再会し、翌年2月にア・パーフェクト・サークルに加入しています。きっと半年の充電期間を経てバンド活動やライブ演奏への意欲を再び取り戻した、いいタイミングだったのでしょうね。
記事に出てくるモンド・ジェネレイターやキャンプ・フレディですが、探せど探せど、トゥイギー参加時の映像や写真が見つかりません。どのバンドも公式な作品をリリースしておらず、そもそも音源がほとんど残っていないようですね。トゥイギーがいったいどんな姿でどんな演奏をしていたのか、知っているのは当時ライブに行った観客だけ…。うらやましい!
諦めきれず、脱退後の2002年下半期のトゥイギーを探していて唯一見つけたのが、下の画像。2002年10月9日に、スキンケアブランドのKiehl'sが主催したチャリティ・イベントに来場したようです。
この2枚の写真から読み取れることは…とりあえず、マリリン・マンソンを脱退後、眉毛が生えそろったということでしょうか。
今回のインタビューでは触れられていませんが、メタリカのオーディションを受けていたのもおそらく2002年後半のようですね。『Some Kind Of Monster』のDVDで一瞬だけ映像を見ることができます。(→こちらで記事にしました)
ちなみに、メディアに対しては沈黙を貫いたトゥイギーですが、ファンに対しては、間接的な形で脱退直後にメッセージを送っていました。5月31日、トゥイギー本人が出品するオークションも手がけるThe Manson Museumのグレッグさんという方が、掲示板に以下の書き込みをしています。何度読んでも泣けるので、最後に紹介しておきたいと思います。
今、トゥイギーと電話で話して、彼がバンドを脱退するという知らせに、僕たちみんながどれほどショックを受けているかを伝えました。実は僕も、みなさんと同じタイミングでこのニュースを知りました。バンドのメンバーには、仕事や私生活に関することは質問しないようにしています。そのため、ファンのみなさんから僕が受け取った、心の痛みや落胆の気持ちが書かれたすべてのメールのことだけ伝えました。トゥイギーは、「今のぼくはとても幸せで、バンドのメンバー全員とは今もまだ友達だし、何も恨みはない」と言っていました。だから、僕たちファンも、誰かを恨んだりしてはいけないと思うんです。トゥイギーはこれまで、革新的なバンドの欠かせないメンバーとして、僕たちに素晴らしい、忘れがたい音楽を残してくれました。本当のファンならば、トゥイギーの気持ちを尊重し、彼が話してくれた今後のプロジェクトが成功することを祈るべきだと思うんです。トゥイギーは現在進行中のいくつかのプロジェクトにとても興奮しており、またスタジオに戻るのが楽しみだと語っていました。そして、彼が一番心配していることは、ファンのことだとも言っていました。トゥイギーが音楽に全力を注げるように、僕たちは悲しまず、プロジェクトを一緒に盛り上げましょう。彼に僕たちのことを心配させないようにしましょう。そうそう、またオークション用に出品してもらう物についても話しましたから、そちらも楽しみにしていてください。ロック・オン、トゥイギー!
ファン思いのトゥイギーも素敵ですが、それを上回るグレッグさんの熱量と優しさがすごいですね!
以上、いろいろと染み入る「Kerrang!」インタビューでした。
★★目次★★