1987年の放送開始後、多くのヘヴィ・メタルファンに愛されてきたMTVの人気番組『ヘッドバンガーズ・ボール』。本国アメリカだけでなく、世界中で各国版が制作された同番組ですが、そのラテン版にマンソンとトゥイギーの二人がゲスト出演していました。
放送は1995年。ダンジグとのツアー中らしいということ、また『Smells Like Children』の話題がほとんど出ていないことから、おそらく3月~5月頃に放送されたのではないかと思われます。
アメリカ国外での活動がまだ本格化していないこの時期。おそらく「マンソン以外のメンバーは基本しゃべらない」ことをあまり知らなかったのであろう司会者が二人に均等に質問を振った結果、トゥイギーから次々と珍回答が飛び出す楽しい回になっています。
例によって公式動画ではないためリンクは控えますが、ぜひみなさんも「Marilyn Manson: Headbanger's Ball Interview (1995) HD/HQ」であの動画サイトを探してみてください!
それでは、さっそく観てみましょう。
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ホテルの一室のような場所で、番組がスタートしました。トゥイギーとマンソン、そして司会者の男性が並んでスツールに腰かけています。
ご覧の通り、仲良く赤と黒でコーディネートしている二人。サングラスもTシャツも、マンソンが赤ならトゥイギーは黒…とアイテムごとに色が逆になっているのが面白いですね。司会の男性はいかにもメタル好きのお兄ちゃんという雰囲気ですが、Alfredo Lewinというチリ出身のテレビ&ラジオ司会者の方のようです。親しみをこめて、ここからはアルフレドと呼びたいと思います。
スペイン語で元気よく冒頭の挨拶をするアルフレドの横で、いまいち言葉が分かってないっぽいマンソンとトゥイギー。トゥイギーは右手でぽりぽり足を掻いています。
アルフレドに「きみたち、スペイン語は分かる?」と聞かれて「いや、分からないよ」と笑顔で正直に答えるマンソン。「トゥイギーは?」と名指しで呼びかけられたトゥイギーも、無言で首を振りました。よく見ないと反応していることすら分からない、無反応一歩手前の「ノー」です。
スペイン語どうこうというより、そもそも言葉を発する気があまりなさそうなトゥイギー。そんな彼には目もくれず、果敢にもマンソンがなにやらスペイン語を披露しました。「“ぼくの猿がきみのケツに”って意味だと思うんだけど」…って、いったいどこで教わったんでしょうね(笑)。いきなり繰り出されたナンセンスなジョークにウケるアルフレド。どうやらアルフレド、ユーモアが通じる人のようです! 言葉の壁をものともせずさっそくひと笑いとって、マンソンも嬉しそう。なかなかいい滑り出しです。
二人の出身地サウスフロリダは環境的にラテンアメリカに近いのかという問いに「そうだね。でもスペイン語は習ってなくて…」と、スペイン語でインタビューに応じられないのを少し気にしている様子のマンソン。律儀ですね~。しかしアルフレド、すっと真面目な表情になって「(実際の)画面にはスペイン語字幕が出てるんだ。だから何も問題ないよ」と声をかけました。
それを聞いたマンソンが「OK」とうなずくのを見て、「OK!」と弾けるような笑顔に戻るアルフレドですが…あのー、はっきり言って、惚れそうになるんですけど!? 見た目はマンソンたちよりも年下に見えますが、頼もしさがハンパありません。こんな人が一家にひとりいたら、家の中が明るくなりそうですね。
マンソンもすっかり安心したところで、本格的にインタビューが始まりました。
まずは彼らのアルバム『Portrait Of An American Family』について。文化圏が異なるラテンアメリカでは作品で描かれているアメリカに対する捉え方が異なる…と、ものすごくちゃんとした質問をするアルフレドに、「そうだね。一部のアメリカ人より、他の国の人たちのほうがぼくたちの音楽を理解してくれてると思う」とうなずくマンソン。そのまま、客観的に自分の国を見ることの難しさなどを雄弁に語っていますが、雄弁すぎて、もはやちょっとしたスピーチ状態です。トゥイギーも、髪をいじりながらあまり興味なさそうに聞いています。
このままではスペイン語字幕をつけるスタッフが大変そうと判断したのかどうかは分かりませんが、アルフレド、いいタイミングで「自己紹介してもらっていいかな。ボーカル担当のマンソン氏と…」とトゥイギーに話を振りました。意外にも、「トゥイギー。ベース担当だよ」と、ややゆっくりですが落ち着いた声で答えるトゥイギー。横でマンソンが心配そうに見守っているのが笑えます。万が一彼が答えなかったとしても、秒でフォローできそうな万全の態勢です。
バンドのメンバー構成を確認後、アルフレド、次はトレント・レズナーとの出会いが彼らに与えた影響についてたずねました。「小さなバーから始まって去年はナイン・インチ・ネイルズ、今はダンジグとツアー中だね」とのアルフレドの言葉に、「うぬぼれないようにしてるよ」と謙虚に答えるマンソン。「5年間頑張った結果、トレントのレーベルに所属できることになったんだ。彼はぼくたちの音楽を信じてくれた。地元にはたくさんファンがいたけど、アメリカではまたゼロからのスタートで…」とその苦労を語ります。
その間トゥイギーはというと…。トレントの名前が出たせいか最初ちょっとだけ身を乗り出したものの、マンソンが話し始める前に興味を失ってしまいました(笑)。
どうやら自分の手元が気になるようです。よく見ると、右手に中ぐらいのサイズのばんそうこうが貼られていますね。
ラジオやテレビでは流してもらえない曲が多いから、自分たちの音楽を届けるためにもツアーをしているというマンソン。それを聞いたアルフレドは「少なくともヘッドバンガーズ・ボールでは『Lunchbox』と『Get Your Gunn』のビデオをかなり流しているよ。すごくいい作品だね」と応じた後、「ところでトゥイギー」と、ふたたび名指しでトゥイギーに声をかけました。いったい何かと思ったら、「バンド名について教えてくれる? マリリンとマンソンという、二つの要素のバランスみたいなものを表してるのかな。どういう意味なの?」。こ、これは…どう考えても100%マンソン向けの質問ですね(笑)。
質問を聞いているんだか聞いていないんだか、静かにゆらゆら揺れているトゥイギーの様子に「話すのがあまり好きじゃないみたいだね」と思わず笑うアルフレド。マンソンも面白そうにトゥイギーを見つめています。こりゃ、このまま何も答えない流れになりそうだなと思ったその時…トゥイギーが口を開きました! ちょっと大きすぎる音量でBGMがかぶせられているためはっきりと聞き取りにくいのですが、その答えは…
思わず「え?」と聞き返すアルフレド。アルフレドの笑い声だけでなく、現場にいる他の誰かの笑い声も聞こえますが、トゥイギーはそれ以上何も言わず、ひとりで静かにうなずいています(笑)。
もちろん、これはトゥイギーが作った曲『Scabs, Guns And Peanut Butter』のタイトルそのままのジョーク…ということが今なら分かりますが、アルフレドの反応から想像するに、この時点ではEP『Smells Like Children』がまだ発売されていなかったのではないでしょうか? だとしたら、完全に意味不明な発言です。
謎回答の余韻冷めやらぬ中、後は頼もしいマンソンが引き取りました。マリリン・マンソンの名前の由来と意味について、これまたスピーチのごとく流暢に語る彼の横で、不気味に笑ったりゆらゆら揺れながら話を聞いているトゥイギーの姿をご覧ください。
特に何をしているわけでもないのに、表情と動きが絶妙にクレイジーです。マンソンの真面目な話を聞いているアルフレドも、トゥイギーの様子が視界に入ってしまっているのか、若干半笑いです(笑)。
しかしそこはプロのアルフレド。マリリン・マンソンという名が、対立するいろんな概念やカテゴリのバランスを表しているというマンソンの説明に「バランスだけでなく、バランスの欠如も表してるね」と素晴らしい補足を加えた上で、ここで彼らのビデオを流すとアナウンスしました。「曲名は『Lunchbox』!」と気合を入れて紹介するアルフレドをよそに、あいかわらずトゥイギーは…
とにかく自分の手元が気になるようで、あの中ぐらいのサイズのばんそうこうをひたすらいじり、ぺろっとはがして見つめています。一人でただばんそうこうをいじっているだけなのに、いったいなぜこんなに気味が悪いのでしょうか!? 観る者に得体の知れない恐怖感を抱かせるトゥイギーの魅力が確認できたところで、番組はいったん『Lunchbox』のミュージックビデオに切り替わったようです。
というわけで、この記事もいったんここで区切りたいと思います。続きは次回!
★★目次★★