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Jeordie White(a.k.a.Twiggy / Twiggy Ramirez)を知るためのブログ。時空をさかのぼって不定期更新中。May the force be with you!

お母さんのパンツを…【雑誌】「Seconds Magazine」第40号(1996年)

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 80年代のパンクシーンを追った『American Hardcore』の著者であるスティーブン・ブラッシュが1986年に創刊した音楽雑誌、Seconds Magazine(セカンズ・マガジン)。マンソンが表紙を飾る第40号(1996年発行)に、マンソンのロング・インタビューの“おまけ”のような形で、トゥイギーの単独インタビューが掲載されていました。

 聞き手は、のちにトゥイギーが表紙を飾った同誌の第48号(こちらで記事にしました)でもインタビュアーを務めた、ボイド・ライス。彼自身、「NON」名義で活動しているミュージシャンです。

 記事内に、『Antichrist Superstar』のプロモーション・ツアー中、クリーヴランド公演のリハーサル時に取材したとの記述があることから、インタビューはおそらく1996年10月19日におこなわれた模様。

 見出しに「短い会話」とあるので、あまり期待せずに読んだのですが、なかなかのボリューム&もしトゥイギーのお母さんがこれを読んだら卒倒しそうな面白い内容だったので、紹介します。

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ボイドとトゥイギー・ラミレスの短い会話

ーーSECONDS(以下略):マリリンと、有名人とのセックスについて話してたんだけど。彼、キスも暴露も嫌がってたよ。きみは、コートニー・ラヴとのファックについて詳しく教えてくれるよね?

ラミレス(以下R):それって、自慢するようなことなのかな?

ーー頼むよ。知りたいんだ。

R:具体的には、どういう質問なの?

ーー「私ってワイルドなの」っていうイメージで人々を翻弄する女性たちをたくさん見てきたけど、彼女たちって実は、誰かの気を引きたいとか認めてもらいたいとか、そんな風に思ってるとても内気な女の子であることが多いんだよね。コートニーが評判通りの女性なのか知りたいんだ。彼女は本当に、ワイルドな女性なの?

R:見かけと違って、実は彼女ってとても優しいんだ。相手が有名人だからって、特別なことは何もないよ。二人の関係は、より興味深いものになったかもしれないけどね。実際、近親相姦的な感じが強くなったよ。

ーーそもそも、どういうきっかけで関係が始まったんだい?

R:一緒にツアーに出ていた時、ぼくが手当をもらえるように、彼女はしょっちゅうぼくを殴ってくれてたんだ。すでに語られていること以外で、コートニーについて語れることなんて何もないよ。いいことであれ悪いことであれ、誰もが彼女のことをあれこれ言ってきたからね。

ーー前は、コートニーのことが好きじゃなかったんだ。でもある日、「ちょっと待てよ。正直な話、いったい彼女のどこが嫌いだっていうんだ?」って思ってさ。彼女はまさに、彼女自身が表現している通りの存在だよね。同じように「カミール・パーリア*1」が何者か聞かれたら、ぼくはバッカナリアの生ける女神だとか、異教徒の女神だと答えるだろうね。だって、カミールはそういう価値観を取り入れているから。本当の自分じゃない状態の人間は、自分はこういう人間だと主張したりしないんだ。

R:いや、コートニーはとても強い女性だよ。いい人だと言ってもいいと思う。つまり、友達としては、“イヤな女”なんかじゃないんだ。彼女は、きみが思っているような女性じゃないよ。すごく優しくて、素敵な人なんだ。まあ、めんどくさいところはあるけど。あまり人には見せない一面があって、本人も見せたくないと思ってる。他のみんなと同じようにね。

ーー「この女性はメディアに注目されるのが好きだから、誰に何を言われても気にしないんだろう」と思っていたよ。

R:そういう話って、聞く分には楽しいよね。でも実際にその人と一緒にいると、「ちょっと待てよ。彼だって、自分と同じようにただの人間なんだ。メディアが作ったゴミみたいな話の裏側には、別に何もないんだ」ってことが分かるんだ。

ーーニューヨーク中の人が足を運んだ、謎のライブについて教えて。マリリン・マンソンのギタリストとナイン・インチ・ネイルズのメンバーが出演したシークレット・ライブのことなんだけど。どうやって実現したんだい? ディー・スナイダーのバックでトゥイステッド・シスターの曲を演奏していたのは、きみたちだよね?

R:あはは、ああ、あれのことね! ははは! えーと、当時ナイン・インチ・ネイルズにいたロビン・フィンクとは、かなり親しかったんだ。ライブの後は、いつも一緒に遊んでた。本当に仲が良くて、みんな、ぼくらがゲイだと思ってたよ。たくさんの時間を二人で過ごしたな。一緒にジャムをやったりしてね。ジャムなんて言葉は、使ってなかったけど。ツアー中、ロビンの部屋で一緒に、ギターでヘヴィメタルの曲を演奏するふりをしてたんだ。トゥイステッド・シスターに聞かせてるつもりでやってたんだけど、かなり笑えたよ。それがツアー中に現実になったんだから、すごく変な感じだね。その後、二人でトゥイステッド・シスターの曲を全部覚えて、「ねえ、トゥイステッド・シスターの曲だけでライブをやろうよ」って言ったんだ。で、ディー・スナイダーに電話して、彼がやってくれるかどうか聞いてみようってことになって。彼、やるって言ってくれたよ。実は、ぼくたちのことを信じてなかったけどね。冗談だと思ってたみたいで、一週間かけて説得したんだ。

ーーきみたちが本人じゃないと思ったってこと? それとも、きみたちが本当にやるとは思ってなかったってことかい?

R:その両方だよ。ほら、「ナイン・インチ・ネイルズやマリリン・マンソンが、なんでトゥイステッド・シスターの曲をやりたいって電話してくるんだ?」ってね。彼にしてみれば、ちょっとバカバカしいことに思えたみたいだね。

ーーラストで「きみたちはみんな、弱くて価値がない人間だ」って歌っているような曲もあって、素晴らしいよね。すごくハードコアで。

R:トゥイステッド・シスターは、ちょっとしたカルト的レジェンドだよ。彼らが好きだと認めたがる人はあまり多くないけど、あの時代にたくさんのものをもたらしたと思う。

ーーディー・スナイダーとは今でも会ってるの? 一緒に遊んだりしてる?

R:たまに電話をかけてるよ。ぼくたちが一緒にやったプロジェクトは、トゥイステッド・シスターのファンクラブ名にちなんで「SMF」という名称だったんだけど、ディーはしばらくの間、「ディー・スナイダーのSMF」のもとでツアーを回ってたんだ。だから、あれはきっと、彼がもともとやりたかったことだったんじゃないかな。

ーー彼の電話番号はどうやって知ったんだい?

R:覚えてないな。でも面白かったのが、Details Magazineに…いや、Detailsじゃなくて別の雑誌だったんだけど、クリスマス頃に、クリスマス・プレゼントとして贈りたい物のリストが載ってたんだよね。ほら、ビリー・コーガンには「ZERO」のロゴが入ってないTシャツをあげたい…とかそういうやつだよ。で、マリリン・マンソンのところには、「ディー・スナイダーの自宅の電話番号」って書いてあったんだ。もし雑誌の人たちが状況を知っていたら、そんなこと思いつかなかっただろうにね…。

ーーところで、ハワード・スターンの誕生日パーティには出演したの?

R:いや、行っただけだよ。

ーーということは、ハワードとは仲良し?

R:うん、彼、ぼくたちのことが好きなんだ。パーティの間、たしかぼくたちトイレでドラッグをやっててね。ハワードはぼくたちを探していたけど、その時こっちはパーティ会場にいなかったんだ。その後、戻ったけど。「マリリン・マンソンはどこだ?」って、ハワードは放送でも喋ったみたいだね。だから、ぼくのママはあまり喜んでなかったよ。

ーーぼくの考えでは、20世紀を代表するセックス・シンボルってみんな、ある程度、両性具有性をそなえてたと思うんだ。たとえばルドルフ・ヴァレンチノやエルヴィス・プレスリー、それからビートルズが登場した時もそうだし…例をあげればキリがないけど。女性が、両性具有的な存在に惹かれる理由は何だと思う? つまり、きみはマリリン・マンソンのメンバーの中で最も両性具有的だし、確実にモテてるよね。

R:自分の両性具有性に関しては、「ただ外見が女性的ということではなく、どの性にも属していない状態である」っていう見方をするのが好きだよ。アセクシュアルと言いたいところだけど、この言葉って、セックスをしない人って意味じゃないよね?

ーーどう考えても、きみはアセクシュアル(無性愛者)じゃないって言いそうになったよ。ルディ・ガーンライヒが60年代に発表したユニセックスなファッションを見たことはある? 男性も女性も、未来的でSFっぽい服を着ていて、セックスレスという感じなんだ。みんな眉を剃り落としてたよ。

R:セックスレス、それこそぼくが探していた言葉だよ。アセクシュアルという言葉は違ったね。ぼくはセックスレスじゃないけど、この言葉こそ、ぼくが外見に関して自分のことを表するのに探してたものだよ。

ーーきみたちは、そういうものに自然に惹きつけられるようになったの? それとも、たとえばミック・ジャガーのように、成功した大物ミュージシャンたちは、みんな性的に曖昧な面を持ってるってことを意識的に考えたのかい?

R:たまたまそうなっただけだよ。別に、有名になるために女の子の格好をしようと思ったわけじゃないんだ。ぼく自身や知り合いの話になるんだけど、若かった頃、好奇心からママの下着を試しにはいてみたら、どういうわけか、勃起しちゃったことがあるんだよね。ママのパンツをはいたあの時が、ぼくにとっては初めての勃起のひとつだったと思う。ぼくが育った環境の話をすると、幼かった頃、母はいつもぼくの髪を長くしていたんだ。基本的にずっと長髪だったから、いつもみんながぼくのところにやって来て、きみは男の子と女の子どっちなの?って聞いてくるんだよ。ある日、学校から帰って継父に愚痴をこぼしてたら、「じゃあ、ズボンを下ろしてそいつらにチンコを見せなさい」って返されたんだよね。彼は冗談で言ったんだけど、次の日、他の子にからかわれたぼくは、チンコを出したんだ。一週間、停学になっちゃった。それが、四年生かそれぐらいの時だったよ。幼少期から始まっていたんだ。落ち着くんだよね。ぼくにとっては、自然なことなんだ。

ーーニューアルバムについて教えて。

R:このアルバムを作るのは、これまでの人生でもっとも苦しいことのひとつだったと思う。ぼくたちみんなーー少なくともぼくは、レコーディング中に自殺したくなりそうだったよ。

ーーなぜ、そんなに苦しかったの?

R:寝不足だよ。苦しまなければ、いい作品は生まれないんだろうけどね。レコード制作のやり方がこんな感じだとは、思ってなかったよ。ぼくが考えていたのとは、違ってた。きっと、芸術作品っていうのは…。

ーー芸術のためには、苦しむ必要があるってこと?

R:いい作品のためならね。痛みを感じるってことは、作品がいい仕上がりになるってことなんだと思うよ。

ーーまるで、ハイヒールを履く女性みたいだね。美しさのためには、苦しまなければいけないんだ。

R:今回のアルバム制作には、簡単そうな印象を持ってたんだ。すんなり進むと思っていたのに、結果的には、今まででいちばん大変なことのひとつになっちゃったよ。

ーーどういう点が大変だったの? インスピレーションを得るのが大変だったのか、それとも、思い通りのサウンドを作るのに苦労したってこと?

R:演奏に関しては、身体的にはつらくなかったんだけど、精神的にきつかったんだ。心底つらかったよ。でも、そのおかげでいい作品になったんじゃないかな。そうだといいんだけど。

ーー素晴らしい作品に仕上がってるよ。マリリンにも言ったんだけど、最初のアルバムに比べると二枚目のアルバムは出来が良くない場合が多いし、それをノリでごまかしてしまうバンドは多いのに、きみたちは、毎回進化してるよね。

R:ありがとう。この言葉以外、なんて言ったらいいか分からないよ。

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 インタビューは以上です。最後、アルバムの完成度をほめられて嬉しそうな様子が目に浮かぶようですね。

 誌面は、こんな感じです。

特集のメインはマンソン

ZIM ZUMがいるアーティスト写真

 実に10ページ半(!)におよぶマンソンのインタビューに続き、トゥイギーのインタビューが2ページ半にわたって掲載されています。マンソン単独の写真以外は、撮り下ろしではなく、すでに公開されていたアーティスト写真を使っているようです。

上目遣いがキュートなトゥイギー

デイジーがいる1994年のアーティスト写真

 さて、インタビューの中身ですが、冒頭から、トゥイギーがコートニーにぶん殴られていたというエピソードが笑えますね! 「殴られると手当をもらえる」というのがいったいどういう状況なのかさっぱり分かりませんが、ホール側から本当に慰謝料的なものが出ていたのか、それともメンバーやスタッフ内の冗談として、賭け事でもしていたのでしょうか!?(笑)。それでもコートニーを「優しくて素敵な女性」と主張するトゥイギー、懐が深すぎです。きっと、彼女のことが本当に大好きだったんでしょうね。

コートニーにメロメロな様子のトゥイギー(※この写真は雑誌には掲載されていません)

 ロビン・フィンクとの「SMF」については、こちらのインタビューでも詳しく語っているので、ぜひあわせてお楽しみください。ナイン・インチ・ネイルズのファンにはおなじみ、ロビン・フィンクの当時の画像をいろいろ探したのですが、あらためて見てみると、メイクとヘアスタイルが、同時期のトゥイギーとそっくりです(体型はかなり違いますが…)。ひょっとしたら、二人で一緒にメイクの研究もしていたのかも?と想像すると、楽しいですね。

恋人同士だと思われていたロビン・フィンク

 ファッションに関するくだりで触れられていたルディ・ガーンライヒですが、ボイド・ライスは、おそらく下のような彼の作品をイメージしたのではないかと思われます。ルディのデザインした洋服は、元祖ツイギーもモデルとして着用していたようなので、たしかにトゥイギーとはつながりがありそうです。というか、ボイド、物知りですね!

たしかに性別不明

 まあしかし、すべては「ママのパンツ」エピソードに持って行かれます(笑)。これは…思春期の男の子あるあるなのでしょうか!? それとも、トゥイギー(ほか一部の人間)だけが経験したことなのでしょうか。誰かに聞いたことがないので、いまいち判断がつきません。悩める少年時代のトゥイギーになかなか最低なアドバイスをしたお父さんには、血はつながっていないとはいえ、どこかトゥイギーと同じユーモアのセンスを感じますね(笑)。彼が女の子に間違われていた…という理由は、下の画像を見てもらえれば、一発で伝わると思います。

こりゃ間違われる

 さてこの「Seconds Magazine」、オークションサイトなどでもほとんど出回っておらず、ほぼ入手は不可能だと思っていたのですが、廃刊から長い年月が経っているにもかかわらず公式サイトが存在しており、ダメ元で問い合わせてみたところ、スティーブン本人が在庫を探してくれて、バックナンバーを購入することができました。デザインも美しく、マリリン・マンソンのファンはもちろん、この手の世界が好きな方には、たまらない雑誌です。入手したい!という方は、ぜひ一度、こちらから問い合わせてみてくださいね。

 というわけで以上、短い会話どころか、ちゃんとしたロングインタビューといっていいぐらい中身の濃い、Seconds Magazine第40号でした!

誰か彼に、ZERO以外のTシャツ贈ってあげて

★★目次★★

*1:性に関する過激な論説で知られるアメリカの社会学者、作家。