1981年創刊、コロナウィルスの影響により紙媒体での発行は休止しているものの、現在もウェブサイトで活発に情報発信を続けるイギリスの音楽雑誌「Kerrang!」。表紙右上にマンソン本人の姿、特集タイトルも「Tainted Love」とやたらマンソン色が濃い2004年2月14日号(第992号)に、当時ア・パーフェクト・サークルで活動中だったジョーディのインタビューが掲載されていました。
彼が登場するのは、最後のページの一問一答コーナー。バレンタイン特集ということで、真っ赤なバラの花束を抱えています。いったい何を聞かれているのでしょうか?
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ぶらり旅 with ジョーディ・ホワイト(ア・パーフェクト・サークル)
文:Ray Zell 写真:Nick Stevens
――バレンタイン・カードは何枚送る予定ですか?
「たぶん、今年は送らないかな。いつもなら送るんだけど、ツアーに出ていると、ひとりの相手に約束を果たすのが難しくなってしまうんだ。酔っ払ったりとか、そういうお決まりのパターンにはまっちゃうんだよ。でもこれまでも恋愛はしてきたし、みんなと誠実につきあってきたよ」
――バレンタインのプレゼントを贈る時、名前は明かす? それとも匿名にする?
「ぼくならプレゼントに自分の名前を書くね」
――これまでにもらった最高の数は?
「ええと、ファンの子たちからバレンタインのプレゼントをもらったことがあるけど、きっとそれって本気のやつじゃないよね。でも、中学生だった時はクラス全員からもらえることになってたんだ。だから、最高で26個かな」
――あなたはロマンティックな人間ですか?
「間違いなく、愛は一番大切なものだと思う。これ以上のものなんてないよ」
――女の子から花を贈られたことはある?
「うん。ものすごく珍しい出来事で、思いがけなかったよ。花はいいよね。いい香りがするし、家の中が明るくなるね」
――今までしてもらった一番ロマンティックなことは?
「ズボンを脱いでもらったこと」
――その人たちのために、あなたは何を?
「コンドームをつけたよ」
――バレンタインの夜の予定は?
「ニュージーランドで過ごす予定なんだ。バレンタインには最高の場所だよね。『ロード・オブ・ザ・リング』も撮影されたし、そのー、きれいな鳥もいるし」
――それって、女性って意味?
「そう。どうやらぼくは、自分のことをロックンロール界のバート・レイノルズだと思ってるようだね」
――あなたにとって、もっともロマンティックな状況は?
「雪に閉ざされた山の上のどこか。テレビも電話もない。完全に人里離れた場所だよ」
――そこで口説く時に流す曲は?
「ビージーズのバリー・ギブが作った曲のどれかじゃないかな」
――その理想的なバレンタインの設定を一緒に過ごしたい夢の相手は?
「『ティファニーで朝食を』の頃のオードリー・ヘプバーンかな」
――狂おしいほどの恋をしたことはありますか?
「もちろんあるよ」
――失恋したことも?
「うん。失恋ってきっと、死と同義だと思う。自分の一部だったものをごっそり失うんだよ。もちろん恐ろしいことだけど、失恋を経験することでより良い人間になることができるんだ。失恋の先にも人生はあって、その人生って、それまで以上に素晴らしいものになる可能性があるんだよ」
【写真キャプション:ロンドン地下鉄のグージ・ストリート駅をぶらつくジョーディ・ホワイト】
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以上、めずらしく(?)恋愛について語るジョーディでした。「花はいい香りがするし、部屋が明るくなる」とものすごく普通のことを言っているのが笑えますが、本気なのか冗談なのか…(笑)。バレンタインのプレゼントで自分の名前を明かすか否か?という質問に対する答えは、質問の「in」をわざわざ「on (その上に)」に言い換えているので、「プレゼント自体に自分の名前を書きこむ」というユーモアが込められているのかもしれません。
記事の写真は、おそらくア・パーフェクト・サークルのツアーでロンドン公演があった2004年2月3日に撮影されたのではないかと思われます。もしかしたら、インタビューも写真撮影と一緒におこなったのかもしれませんね。
写真の背景にちらりと文字が見えるグージ・ストリート駅の外観は、こんな感じ。いかにも歴史がありそうです。
本題とはそれますが、ドノヴァンの『Sunny Goodge Street』という曲でこの駅のことが歌われているという情報を見つけたので軽い気持ちで聴いてみたら、なんとも美しい曲でした。みなさんも、よかったらぜひ聴いてみてください。
女性のことを“小鳥ちゃん”とロマンティックに表現した流れで名前が登場したバート・レイノルズは、60~70年代にセックスシンボルとして活躍した映画スターですね。
筆者の世代的には、『ブギーナイツ』でマーク・ウォルバーグのナニを見込んでスカウトしていたポルノ監督役が記憶に新しいです(といっても、もう四半世紀前の作品ですが…)。
最後に、表紙で内臓をわしづかみにしている魅力的な女性について。筆者はてっきりローズ・マッゴーワンかと思ったのですが、誌面のどこにも名前がクレジットされておらず、掲載されている別カットを見ると、どうも顔立ちが違うようです。
ローズ・マッゴーワン本人ではなく、彼女に限りなく近づけたモデルさんなのでしょうか? だとしたら、この「Kerrang!」という雑誌はそうとう下世話なんじゃ!?ということが分かる文章が横に添えられているので、その部分を紹介して、この記事を締めくくりたいと思います。ちなみに、これはジョーディの記事とは別のメイン記事で、恋愛に関する30のアドバイスを紹介しているうちの、ラスト(30番目)のアドバイスです。
30. 威厳を保ちましょう
もしあなたの新しいボーイフレンドが、あなたに生肉をぶつけてきたり、浣腸をして腸から排出される時間を測ろうとしてきたら、たぶん(a)あなたの新しいボーイフレンドはマリリン・マンソンで、(b)あなたはトラブルを求めているのでしょう。「The God of Fuck」と呼ばれるのを好み、元ナイン・インチ・ネイルズのロビン・フィンクの亀頭を口に含んだことがあると言う人間はおそらく理想の夫タイプではないですし、あなたの両親との食事が、アナル・ファックやらドラッグにまみれた不快なものになる可能性があります。もし、あなたが幸運だったら…の話ですが。
★★目次★★