ミュージシャンのインタビューといえば音楽雑誌やカルチャー系サイトを思い浮かべますが、めずらしく新聞にジョーディのインタビュー記事が掲載されていました。イリノイ州フォートウェインで発行されている日刊紙「ザ・ジャーナル・ガゼット」。2006年2月19日付の記事です。
ザ・ジャーナル・ガゼットの創刊は、なんと1863年（創刊時の名称は「ザ・フォートウェイン・ガゼット」）。リンカーン大統領支持と奴隷制度反対を掲げて創刊されたようですが、あのー…新聞って、その頃からあったんですね！？ 気になったのでついでに調べたら、日本初の日刊紙「横浜毎日新聞」は1871年に創刊されていました。ザ・文明開化！
とにもかくにも由緒ある新聞ということで、インタビューもさぞお堅い感じになっているのかと思いきや…？ ※元の記事は「ザ・ジャーナル・ガゼット」公式サイトのアーカイブでも読むことができます（有料／要会員登録）。
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ベーシストがNINにもたらした“白熱”の世界
執筆：Emma Downs（ザ・ジャーナル・ガゼット）
たとえば、ナイン・インチ・ネイルズの現ベーシストであるジョーディ・ホワイトが高級ホテルの一室で、午前中ずっと記者と話をしていたとしよう。彼は、飽きている。山盛りのマッシュド・イーストなるものをかじっている（最近のカリフォルニアでは、これを喉に詰まらせるのが流行っているらしい）。ブラッディ・マリーをちびちび飲みながら、スウェーデン人のヨルゲンにマッサージをしてもらっている。そうこうしているうちに、彼は物理学について考え始めてしまった――ゲージ対称性と、マクスウェル方程式について。さて、ホワイトは一般相対性理論と電磁気学を統合させることができるのだろうか？
というわけで、トレント・レズナーとナイン・インチ・ネイルズに関する彼の知見は、かなり冴えないものになっている。ツアーはどんな感じかと聞かれれば「家でじっとしてるよりいい」。トレントはどんな人物かという質問には「素晴らしい人」。ナイン・インチ・ネイルズの新作アルバムについての感想も「すごく気に入った」の一言だけ。まさにインタビュアー泣かせだ――ただし、『スター・ウォーズ』の話題が出るまでは。『スター・ウォーズ エピソード4／新たなる希望』のセリフを暗唱できるというホワイトは、映画が公開された1977年（つまりルーク・スカイウォーカーがウォンプ・ラット攻撃を命中させて自慢した最初の年）から、この映画のグッズを集めているらしい。
「前ほど熱心に集めているわけじゃないよ」とホワイトは語る。「もうスペースがないんだ。人生のあらゆるものを（思い出の品の）コレクションに乗っ取られてる。ほら、プラスチック製のおもちゃの悪役を集めすぎて、収納スペースがいっぱいになっちゃったんだ。今はテレビゲームの『レゴ スター・ウォーズ』にハマってて、移動中によくプレイしてるよ。すごく楽しいんだ。フォースを使ってレゴを組み立てるのが面白くてね。キャラクターが殺されたら、レゴがバラバラになるんだよ。最高さ」。
まさか、彼がこんなにおしゃべりだったとは！ 現在ホワイトは、インダストリアル・メタルの先駆けであるレズナー率いるナイン・インチ・ネイルズのツアー中。フォートウェインでは木曜19時半から、メモリアル・コロシアムでライブが行われる。
ア・パーフェクト・サークルのベーシストも務めるホワイトがトレントと初めて一緒にツアーを回ったのは、90年代初頭のこと。当時の彼はプロテスタント系宗教団体に“気に入られて”いたゴス／メタルバンド、マリリン・マンソンのメンバーとして「トゥイギー・ラミレス」の名前で活動しており、両性具有的な雰囲気とドレッド・ヘアで知られていた。一方クリーブランド出身のトレントはかつて、2001年の『The Fragile』ツアー中にヘロインの過剰摂取で病院送りになったことがある。しかし今回のツアーでは酒とドラッグを断っているトレントの影響で、「音楽に集中するようになったし、馬みたいな匂いを求めてグルーピーのおへそを嗅ぐようなこともしなくなった」と言う。
「（レズナーは）今はクリーンだ。以前とはちょっと違うね」と語るホワイト。「それっていいことだよ。穏やかになれるんだ。前は何もかもがぼんやりしてたけど、今はたいていのことを覚えてられる。警戒心が強くなった点を除けば、ほとんど同じなんだ」。
『With Teeth』は、ナイン・インチ・ネイルズにとって5枚目のスタジオ・アルバムである。トレントがアルバム制作に何年も時間をかけて細部までこだわり抜くのは有名な話だが、本作でもインダストリアルな音を濃密に重ね合わせてファンの期待に応えている。キャッチーなメロディが多く、土台になっているのは電子音で刻まれた官能的なビートと頭蓋骨が砕けるようなロックの要素。完全なる怒りに満ちた全13曲の大作に仕上がった。
パッケージではアルバムの共同プロデューサーとなっているホワイトだが、本人は完成版にはあまり関わっていないと否定する（アルバムにプロデューサーとしてクレジットされているのはレズナーとアラン・モウルダーのみ）。
「たしかにその場にはいたよ」とホワイト。「だけど、ただスタジオのロビーに座ってただけなんだ。で、食事の時間になると料理を注文してた。そういうことさ」。まるでプロムのパーティ会場で隅っこに座り、風船を膨らませながら他の人が踊るのを眺めるダサい女の子のような発言だが、実際のところ彼のお皿――つまりスケジュールは、いっぱいだ。
ナイン・インチ・ネイルズのツアーに加え、Goon Moonのアルバムも制作中というホワイト。Goon Moonとは、彼がマスターズ・オブ・リアリティのクリス・ゴスと組むストーナー・ロックのサイドプロジェクトである。
「（Goon Moonのアルバムには）実験的な要素がいっぱい詰まってるんだ」とホワイトは言う。「なんでもありって感じだよ。自由に作ってるんだ。デスメタルをやりたければデスメタルをやるし、ビートルズっぽいサウンドに挑戦することもあるよ。20分間同じ音を出し続けたっていいんだ」。
タイトル未定かつレコーディングもまだ一部を終えただけだが、アルバムは今年リリース予定とのこと。それまではア・パーフェクト・サークルとGoon Moon、そしてナイン・インチ・ネイルズのツアーをこなしながら活動を続けるというホワイト。といっても、彼が新しいアイディアを求めていないわけではない。
「現時点では手いっぱいだけど…」とホワイトは語る。「何かアイディアを思いついた人がいたら、電話してほしい」。「ぼくはいつだって、別のことを探してるんだ」。
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記事は以上です。残念ながらアーカイブには画像がないので、実際の紙面に写真が掲載されていたかどうかは不明です。スウェーデン人のヨルゲンにマッサージされている姿、見てみたかったですね。
名字の「ホワイト」にかけた「白熱（ホワイト・ヒート）」というタイトルに始まり、ジョーディ本人だけでなく記者のユーモアも伝わるこのインタビュー。最初から最後までつっこみどころ満載ですが、スター・ウォーズの話題で覚醒するジョーディが最高です（笑）。
『レゴ スター・ウォーズ』、いったいどんなゲームなのかと調べたら、面白い動画を見つけました。2005年から2022年最新版まで、このゲームの進化過程が時系列でまとめられています。ジョーディがプレイしていたのはおそらく2005年か2006年版？ 文字通り、スター・ウォーズの世界がレゴで再現されているというくだらなさがジワジワきます。最初にこのゲームを思いついた人は、もしかしてスター・ウォーズとレゴとゲームが好きだったのでしょうか？
一方、さっぱり想像がつかないのが、ジョーディがかじっている謎の食べ物です。マッシュド・イーストとはいったい！？ 検索すると、マッシュド・ポテトの画像がやたらと出てくるんですけど…。喉に詰まらせるのが流行っているということは、日本でいうお餅的なものかとも思ったのですが、山盛りにできる形状となるとちょっと違う気もしますよね。粒状の何か？
ドラッグに関するくだりは、実はよく読むとジョーディ本人は「トレントが」とは発言しておらず、原文の主語はすべて「それは」「それって…」という感じになっているので、（筆者の読解力が正しければ）トレントのことを話しているようにも自分のことを話しているようにも読み取れます。何か問題が起きないように、あるいはトレント先輩に迷惑がかからないように意図的にぼかしているとしたら、ジョーディ、賢すぎです。まあ、おへその匂いを嗅いでいたのは確実にジョーディの方でしょうが…。
というわけで、一瞬、記事の最後にジョーディの電話番号が載っているのかと期待させる、楽しい「ザ・ジャーナル・ガゼット」のインタビューでした！
★★目次★★
