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Jeordie White(a.k.a.Twiggy / Twiggy Ramirez)を知るためのブログ。時空をさかのぼって不定期更新中。May the force be with you!

ねえ、ジョーダッシュ?【インタビュー】Goon Moon × アーロン・ノース(2007年8月)

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 ジョーディがナイン・インチ・ネイルズのツアーのかたわら、クリス・ゴスとのプロジェクトGoon Moonに取り組んでいた2007年。同じナイン・インチ・ネイルズのメンバーとして一緒にステージで暴れてきたギタリストのアーロン・ノースが、音楽サイト「Buddyhead」でGoon Moonの二人にインタビューしていました。Buddyheadはアーロンが1998年にトラヴィス・ケラーと立ち上げたウェブサイトで、2000年には同名の独立系レーベルもスタートしています。

 2021年現在、サイトに記事が存在していないため、複数の情報で確認をとった上で、ファンの方がアーカイブで残していたこちらの文章を翻訳しました。

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 インタビュー by アーロン・ノース

 Buddyhead.com 2007年8月

 クリス・ゴスとジョーディ・ホワイトといえば、ぼくたちにはなじみの深い変人だ。みんなも二人のこと、聞いたことあるんじゃないかな。クリスは、自分のバンドであるマスターズ・オブ・リアリティをはじめ、長年にわたって多くのミュージシャンと音楽を作り続けてきた。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジやザ・デューク・スピリットたちの名盤を数多く手がけたプロデューサーでもあるんだ。

 ジョーディもクリス同様、たくさんのバンドで演奏してきた。あるバンドではドレスを着てたけど、彼は今でも、ガールフレンドが仕事に出かけていて一人で家にいる時は、ドレスを着てるんだ。1977年頃のハン・ソロを静止画で再現することだってできるんだよ。

 二人は一緒にGoon Moonっていうバンドを組んでいて、ついこの間、Ipecac Recordsからニューアルバム『Licker's Last Leg』を発売したんだ。ビージーズのカバー曲も入ってるんだぜ! というわけでBuddyheadのために、くだらないインタビューってやつをやることにしたよ。

 みんなで、焼き菓子や最低のバンド、黒人の奴らについて話をしたんだ。誰かを怒らせてしまうといけないから、全部は活字に出来なかったけどね。というわけで、記事をどうぞ。

――まずはじめに、Goon Moonっていったい誰? 何のこと?

クリス:ジョーディ・ホワイトとクリス・ゴスがコラボレーションした音楽のことだよ。たまたまその日スタジオにいた友達にも参加してもらってるんだ。

ジョーディ:そう。70年代の古いCMの、ピーナツバターとチョコレートを持った二人がぶつかるシーンみたいなものだね。クリスと初めて握手したら、二人とも爆発してGoon Moonになったんだ。

――そもそもGoon Moonってどういう意味なの?

クリス:「O」が四つあるから見た目が気に入ったってだけだよ。だから「Loon Coon」でも「Moo Room」でも良かったんだ。

ジョーディ:しかも、響きが最高にクール(Cool)だしね。

――きみたち変人二人が初めて出会ったのは?

ジョーディ:ぼくたち、セブンイレブンで出会ったんだ。二人とも、Ding Dongsのカップケーキの最後の一パックを狙っててさ。最初は奪い合ってたんだけど、その後そのカップケーキを分け合って、縁石に座って音楽の話を始めたんだ。そしたら鳥が飛んできて、クリスの頭にフンをしたんだよ。あの時、ぼくたちが一緒に仕事をするのは運命だって分かったよ。

クリス:ジョーディは覚えてないと思うけど、実は彼と初めて会ったのは、L.A.のザ・ウィスキーでおこなわれた初期のマンソンのライブ後のパーティなんだ。ザ・ドラゴンフライの裏の中庭だよ。ジョーディは、ある有名女性ミュージシャン、というか当時は有名だったって言うべきかな…を撫でるのに夢中だったけど。

――ちょっとジョーディ、それって誰だったの?

ジョーディ:ショーン・イスールトかドニータ・スパークスのどっちかじゃないかな? もし「有名人」って言っていいならね。あれは90年代のことで、ぼくはバンドをやってる女の子に憧れてたんだ。コンテスト的なものだよ。

――ああ、90年代…。すべてがクールだった時代だね。二人は高校時代「クール」だったの? 誰かにいじめられたりしなかった?

クリス:高校にはほとんど通ってなかったけど、登校した時は、マリファナ常用者の小さなグループに紛れこんでいたよ。誰にも気づかれないようにしてた。だけど、ノーバート・ベイカーっていう黒人の子がいて、そいつだけはぼくの秘密を握ってて、ちょっかいを出してきたんだ。飴やガムでごまかしてたよ。

――ニックネームはあった?

クリス:母はぼくのことを「ろくでなし」って呼んでたよ。あれが唯一のニックネームだね。

ジョーディ:ジーンズのメーカーにからめて「ジョーダッシュ(Jordash*1)」って呼ばれてたよ。あれを聞くとなぜか涙が出てくるよ。そう、ぼくは最高にクールだったってわけさ。

――今まで、殴り合いのケンカをしたことはある? あるとしたら勝った?

ジョーディ:小学三年生の時、学校でいちばん強い子が親友だったんだ。アントンっていう黒人の子だったんだけど、ある日彼が、ぼくの顔をシリアルの入ったボウルに押しこんだんだ。彼を叩きのめしたよ。だけど次の日、彼はみんなにぼくのケツを蹴ってやったんだって言いふらしててさ。ぼくは痩せっぽちでオタクっぽい白人だったから、当然みんな彼の言うことを信じたよ。

――クリスはどう?

クリス:ぼくはかなりやんちゃな少年だったよ。近所の子たちとケンカばかりしてた。感情を逆なでしてくるようなバカなやつを見ると、殴りたくなっちゃうんだ。でも14歳の頃にマリファナを吸い始めてからは、その攻撃性をギターの練習に向けるようになったよ。

――誰に影響されて、その年齢でギターを始めたの?

クリス:名前を挙げるなら、ジミー・ペイジ、スティーヴ・ハウ、スティーヴ・マリオット、ロニー・モントローズ、ジョン・マクラフリン、ビリー・ギボンズ、キャット・スティーヴンス、ビートルズ、ブライアン・ジョーンズとかかな。

――若い頃に在籍したバンドで最悪だったのは?

クリス:ディヴァインっていう最初のバンドだね。70年代のカバー曲をやってて、バンド名は俳優の名前からとったんだ。バンド名を「リフ・ラフ」に変えてからは、マシになったよ。

ジョーディ:ぼくのバンドは「ザ・エチオピアンズ」。スピード・メタルのコピーバンドだったよ。『Trapped Under Ice』をカバーしたんだけど、最高だったな。

――どうしてバンド名を「ザ・エチオピアンズ」にしたんだい?

ジョーディ:当時ぼくは16歳で、めちゃくちゃ痩せてた上に、巨大なアフロヘアーだったんだ。いわゆる「フロリダ・ヘアー」さ。ラリー・ピアースってやつがいて、彼は地元の“クール・ガイ”だった。映画『がんばれ!ベアーズ』のケリー・リークを思い浮かべてみて。そいつが、ぼくのことを「髪が生えてる痩せっぽちのエチオピア人」って呼んでたんだ。そういうことさ。

――ザ・エチオピアンズでは何かリリースしたの? 作品が公式にリリースされた最初のバンドは何だった?

ジョーディ:Amboog-A-Lardっていう二番目のバンドだよ。タンパにあるモリサウンド・スタジオでレコーディングして、自主制作盤のアルバムをリリースしたんだ。

――クリスは? 初期のバンドでリリースした作品はある?

クリス:1976年に、自分たちのレコードを出したよ。そんなことやったのは、ごく一部の地元のまぬけだけだったんだけど。7インチのレコードを200枚もプレスしたら、ニューヨーク州シラキュースじゃ、井の中の蛙になれたというわけさ。たしか金管楽器をやるメンバーもいて、A面は『25 Or 6 To 4』みたいなインチキなサイケデリック・ロック、B面には安っぽい最悪のバラードが入ってたよ。未来版ビリー・ジョエルだね…。ぼくたちの頭には、順当にレコード会社との契約を目指すなんて考えは浮かびもしなかった。気にかけてたのは、大きく分けて「A:閃光用のパウダーでまたボーカルが手を火傷してしまわないか」「B:母親の化粧品やスカーフを盗んだせいでゲイと思われるんじゃないか」「C:地元に5人いるグルーピーのひとりと次に寝るのは誰か」ってことだったから。そういうわけで、1987年にリック・ルービンから電話がかかってきてレコードをリリースするチャンスをもらえるまで、10年も待たなくちゃいけなかったんだ。この頃にはリフ・ラフはとっくに消滅していて、1981年に結成したマスターズ・オブ・リアリティが発展したバンドになってたんだけどね。もともとは「ザ・マンソン・ファミリー」か「カズン・イット」って呼ばれてたよ。

――そういえば、マスターズ・オブ・リアリティは今どういう状態なの?

クリス:現状としては、ドラマーのジョン・リーミーがアルバムとツアーに参加できるようになるまで保留中だよ。彼はニューヨークで映画製作も手がけてて、U2の新しいIMAX映画を完成させたばかりなんだ。

――マスターズ・オブ・リアリティには一時期、ジンジャー・ベイカーも在籍してたよね。超すごいよ。どういう経緯で実現したの?

クリス:彼とは1990年、共通の友人の家でバーベキューをやった時に出会ったんだ。その友人がたまたまトーン・ロックのマネージャーもしてて、ジンジャーとはポロ仲間だったんだよ。出会った数日後にはセッションが実現して、二年以上も在籍してくれたんだ。彼と即興演奏をやったのが、すごくなつかしいよ。というか、即興演奏が恋しい。いまや、失われた芸術になりつつあるからね。

――Goon Moonの新作はどこでレコーディングを?

クリス:ジョシュア・ツリーにあるランチョ・デ・ラ・ルナや、エンジニアのエド・モンセフの自宅スタジオであるザ・ハシエンダ、それからグレンデールの壁に開いてた小さな穴かな。その穴、今はもうないんだけど。

ジョーディ:エドはピンチを救ってくれたんだ。死ぬほどびびったね。

――次の質問、どうしたらいいか分かんなくなっちゃった。えーと…。そうだジョーダッシュ、さっきの質問にまだ答えてなかったね。

ジョーディ:ああ、そうだったね…。ぼくたち、まさかこのレコードをリリースできるなんて思ってもみなかったんだ。自分たちのサウンドを求めてあれこれやったり、ただ楽しく音楽を作ろうとした結果が『Licker's Last Leg』なんだよ。まじめにやろうとすると、いつもピエロが飛び出してきたみたいにめちゃくちゃなことになっちゃってさ。まじめになりすぎてると思ったときには、ユーモアでぶち壊すようにしてたから。とにかく有機的でチープな音にしたくて、キーボードの音は全部、カシオのがらくたみたいなキーボードをアンプにつないで出したよ。聴いたら分かると思うけど、ギターも古いゴミ同然のアンプにつなげてて、コンピュータのギターは使ってないし、ボーカルは全部最初のテイクのものを使ってる。ミックスの段階でも、おかしな音はボリュームを必要以上に大きくしたんだ。KROQで流れてるような曲やリンキン・パークみたいに圧縮がかかりまくったクソみたいな音楽じゃなく、60年代のスタイルを目指したよ。

――歌詞の内容は?

クリス:ノーバート・ベイカー。

ジョーディ:フェラしたり、男にフェラしたりすることについて。

――ぼくの耳にも間違いなくそう聴こえるよ。

ジョーディ:うそだよね? 実は、今振り返って初めて曲の意味が見えてきたんだ。作ってた時は、歌詞の大半はデタラメに思えたけどね。頭の中にイメージが広がるような、韻を踏んでる面白い言葉を探しただけだったから。どういう内容なのか一曲ずつ解説してもいいけど、それじゃつまらないよね。誰かの悩みや問題について聞かされるなんて、うんざりだよ。だからぼくは、インストゥルメンタルの音楽しか聴かなくなっちゃったんだけど。

――Goon Moonでライブをやる可能性は?

クリス:ああ、あるよ。もしきみとジョーディがこのくだらないナイン・インチ・ネイルズのツアーを放りだして、ぼくがしょうもないプロデュース仕事を全部引き受けるのをやめたらね。

ジョーディ:いつかやるかもしれないけど、たぶん、テープしか流さないな。

――ニール・ヤングとニール・ダイアモンド、選ぶならどっち?

クリス:ニール・ダイアモンドは、『Holly Holy』とか『Solitary Man』あたりの60年代の作品ならいいね。ニール・ヤングはずっと途切れることなく活動を続けてるけど、『Landing On Water』っていう80年代のアルバムが有名だね。

ジョーディ:知るもんか。ヴィンス・ニールさ。

――最後の質問。ビージーズのメンバーでいちばんかっこ悪いのは?

ジョーディ:亡くなったメンバーかな。モーリスよ、安らかに。愛してるよ。ビージーズは最高さ。同意しないやつは、クソくらえだ。

クリス:ボブ・ゲルドフ。

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 以上です。三人とも、まあ言いたい放題ですね! アーロン自身のウェブサイトということで、誰にも遠慮せず楽しく語り合ったことがよく伝わる、悪い言葉満載の記事です(笑)。面白い質問も多く、ミュージシャン側はふだん、こういうことを聞いてほしいと考えているのだろうか…という想像もふくらみます。というかアーロン、かなりインタビュー上手ですよね!?

 さて、少しだけ補足を。まず、ジョーディとクリスの出会いのきっかけになった「Ding Dongs」ですが、日本ではなじみがないのでどんなお菓子なのかと画像を検索したら、こんな感じでした。ジョーディはともかく、強面のクリスがこれを食べているのは想像つくようなつかないような…。

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超甘そう

 ちなみにオリジナル記事に使われていたかどうかは不明ですが、Goon Moonがメディアで紹介される時によく出ていた写真がこちら。左がクリス、右がジョーディです。

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チョコケーキを奪い合った二人

 また最初に在籍したバンドのエピソードに関してですが、「ザ・エチオピアンズ」時代のものと思われるジョーディの写真を見つけました。おそらく1987年に撮られたものです。エクソダスのTシャツを着て、ギターを弾いています。“巨大なアフロ”に覆われて顔が見えづらいですが、ちょっと面影がありますね。

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右にいるのがジョーディ

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エチオピア人じゃないよ

 本題のアルバム『Licker's Last Leg』は、かなりアナログな作り方をしたようですね。ボーカルが全部最初のテイクだというのに驚きました。ジョーディは「分かると思うけど」と言っていますが、筆者の耳ではまったく分かりません。ランチョ・デ・ラ・ルナは、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジなどでおなじみのスタジオですね。イギー・ポップのドキュメンタリー映画『アメリカン・ヴァルハラ』にも登場していました。が、グレンデールの壁の穴とはいったい…?

 最後に、アーロン・ノースについて。ナイン・インチ・ネイルズでの活動を経て、元イカルス・ラインのメンバーたちとJubileeを結成したアーロンですが、精神のバランスを崩し、2008年に一切の活動を停止しています。2013年のインタビュー(こちら)では双極性障害を患っていることや、音楽の世界に戻る気がないことを語っていましたが、今年(2021年)に入って、久しぶりに姿を現しているのを発見! 下の動画です。

www.youtube.com

 現在、なんとスタンダップ・コメディアンとして活動しているとのこと。ギターを手にとりながら 「音楽そのものをやめたつもりはない」と穏やかな表情で語っていました。

 このポッドキャスト、筆者は全然知らなかったのですが、どうやら毎回一人のゲストに約一時間かけてたっぷり話を聞いているようです。ミニストリーのアル・ジュールゲンセンも登場しています。顔ぶれ的に、ぜったいに相性がよさそうなので、いつかジョーディにも出演してもらいたいものです…!

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2006年頃のアーロン(左)とジョーディ(右)

★★目次★★

*1:正しい綴りはJordacheのようです

ファンとのQ&A その④(2007年5月3日)最終回

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 2007年4月26日から5月3日の約一週間にわたって、オンラインでおこなわれたファンとのQ&A。今回は、いよいよ最終回です。→第1回第2回第3回
【開催日:2007年5月3日 出典:basetendencies.com

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●こんにちは、ジョーディ。みんなの質問に答えてくれるなんてすごいね、どうもありがとう。子供時代についてネット上でいろいろ書かれているけど、音楽に囲まれて育ったの? お母さんとラモーンズにつながりがあったというのは本当? それと少年時代にバリー・ギブと会った経緯を教えて。(質問者:Anais Morr)

 ぼくのお母さんは、キンクスとマウンテンのゴーゴー・ダンサー(グルーピー)をしてたんだ。ジャークダンスをロンドンに持ち込んだのは自分だと言っているよ。もしかしたら、チャビー・チェッカーとも踊っていたんじゃないかな。叔母さんのジジはラモーンズやビージーズと友達だったから、ぼくをバリー・ギブに紹介してくれたんだ。ぼくが音楽への興味を深めたいちばんの理由が、ジジ叔母さんさ。

●マリリン・マンソン脱退時、脱退を決意するような出来事があったのでしょうか? それとも他のミュージシャンと一緒に音楽を作りたくなった?(質問者:Anais Morr)

 基本的にはマリリン・マンソン(バンド)で演奏することや、音楽を作るプロセスに愛着を持てなくなったんだ。バンドの中でぼくだけが変わってしまった。別の方向に成長し始めたので、その穴を埋めるために他のミュージシャンと演奏するようになったんだ。ぼくがいなくなったせいで、MMは代わりにもっと仕事ができる人を入れなきゃいけなくなったのさ。今は、そんな自分たちに何ができるか興味深いね。

●マンソン時代のクレイジーな行動で、後悔してることはある?(質問者:Anais Morr)

 後悔なんてないよ!

●先月イギリスに行った時にNINのライブを3夜連続で見たんだけど、ぶっとんだよ! 毎晩、どうやったらあんなにすごいショーができるの?(質問者:Anais Morr)

 ぼくにもわからない。

●ブライアン・ワーナー…じゃなくて(失礼)、マリリン・マンソンと一緒に仕事を始めた時のことを教えて。当時はAmboog-A-Lardに所属してたと思うけど、他のメンバーはどんな反応だった? 今でも彼らと友達なのはすごいよ。(質問者:Anais Morr)

 彼らはキレていたよ! でも、人生で最高の決断だったよ。

●音楽関係の学位は持ってる?(質問者:Jake Robinson)

 まさか。

●この手の質問にはうんざりだと思うけど、ずっと気になってるので教えて。脱退後にマリリン・マンソンの新作「Eat Me, Drink Me」を聴いて、脱退したのは正解だと思った? トレントと二人でアルバム聴きながら笑ってるとか?(質問者:JFergODU)

 まだアルバムは聴いてないけど、優しくね。彼はぼくがいなくてもうまくやってると思うよ。MMに加入したことは、ぼくの人生で最高の出来事だ。脱退だって同じことさ。

●ブライアン・イーノの作品は好き? 影響は受けた?(質問者: Sam)

 大好きだよ。

●まず言っておきたいのは、ずっと前からあなたのファンだってことだ、ジョーディ。あなたのベースの弾き方が大好きで、自分もベースを始めたいと思ってる(ギターは長年弾いてるけど)。初心者にはどんな種類やメーカーのベースがおすすめ?(質問者:Jared)

 フェンダーのプレシジョン・ベースをゲットするんだ。

●スパイダーマン3とバットマンの続編、楽しみなのはどっち?(質問者:Kevin Spearing)

 バットマン。

●GGアリンをどう思う?(質問者:murderjunkie97)

 拍手はしないね。

●ナイン・インチ・ネイルズに加入していちばん良かったことは?(質問者:Annabel)

 毎日、いつでもアリーの隣にいられること。

●こんにちは。19才です。音楽で食べていきたいと思ってるんだけど、音楽を始めるには年齢的に遅すぎると思う? いつも頭の中にはリフやビートが浮かんでいるのに、その音を外に出す方法がないんだ。前にエレキギターを買ってもらったけど、教会の音楽しか聴いていなかったせいでインスピレーションが湧かなかった。それと、最初にギターを弾いてからベースを弾くのと、ベースを弾いてからギターを弾くのとでは、どちらがおすすめ?(質問者:downintheparkx13)

 ぼくならまずギターから始めるよ。ベースは後からでもいけると思う。遅すぎるなんて思わないよ。やってみろよ! がんばれ

●再結成ブームだけど、もう一度見たいバンドはある?(質問者:Lysann)

 ロジャー・ウォーターズとピンク・フロイドのツアー。最強!

●初めて行ったコンサートは?(質問者:Lysann)

 ZZトップかKC&ザ・サンシャイン・バンドじゃないかな。

●こんなこと聞くのは失礼だけど、いちばん泣いたのはいつ?(質問者:twiggy_manson666)

 たぶん、生まれたとき。

●デイヴ・ナヴァロの本に書かれた自分の姿をどう思う?(質問者:Joseph)

 90年代とドラッグのせいにしてくれ。みんな、面倒には巻き込まれないようにね!

●多くの人が、(とくにMTV Cribsでの)あなたのチャーミングな話し方は、トム・グリーンから盗んだと言っていますが?(質問者:Joseph)

 前にも聞いたことあるけど、わざとじゃないよ。彼はすごく面白いよ。

●あるビデオでは無敵のゴスの死神みたいだと思ったら、別のビデオではジャーニーの曲に合わせて踊りながら飛び跳ねるキュートな青年に見える。いろんな面を持っているのがあなたの魅力であり、同時に謎でもあるんだけど、自分ではどう思ってる?(質問者:Joseph)

 スティーヴ・ペリーは最高さ!

●「Fade to Black」の冒頭のリードギターって、無限の宇宙に広がる広大な星空の下で車のボンネットに座っているような気分にさせてくれるよね?(質問者:Joseph)

 まさにそうだね!

●あなたにとってファンとは? とくに、一桁台の頃から応援している私たちのことをどう思ってる?(質問者:Julia)

 えーと、一桁ってことはないんじゃないかな。最初は少なくとも10人はいたと思うよ。ははは。

●なにか宗教を信仰して育ちましたか? 今はどう?(質問者:Holly)

 いや、ぼくのお母さんは決してぼくに宗教を押しつけなかったよ。今は、いろいろな本を読んでいるところ。どれも、ある意味では理にかなっていると思う。自分がどの地域で生まれたかにもよるんじゃないかな。

●Goon Moonのビデオはオリジナリティがあって、素晴らしいね。ファンのみんなもあなたがやることを楽しんでいるみたい。今後、予算をかけて、いわゆるMTVで流れるようなプロフェッショナルなビデオを作る予定があるのか、それともこのまま自分で作った動画をYouTubeにアップしていくつもりなのか教えて。Goon Moonはそういう方向にいかないようミス・モスにコントロールされているとか? あなたには目的地が分かってる?(質問者:Curara)

 早くプロフェッショナルなビデオを作れるといいなと思ってるよ。どこに連れて行かれるのかは、まだ分からない。できれば月(Moon)がいいね。

●9.11の同時多発テロを知ったときの状況を教えて。(質問者:Ashley)

 寝てたよ。友人のジョージ(MTV Cribsを見てね)が電話で起こしてくれて、「ついにやった、奴らがついにやったんだ! テレビをつけろ!」と教えてくれたんだ。

●ハイ、ジョーディ。自分の曲を作るのと、メイナードやトレントみたいに高度な要求をするミュージシャンの曲を完成させるのとでは、どっちが難しい?(質問者:Alyssa)

 どちらもそれぞれにチャレンジングだよ。音楽を作ることは、いつだって最高にやりがいのあることなんだ。

●マンソンの自伝「The Long Hard Road Out Of Hell」の中で、彼は、あなたが一時期、マリリン・マンソンよりもNINの一員になりたがっているように見えたと書いています。10年後の今、それが現実になったわけだけど、今後NINの曲作りに参加する可能性はある?(質問:Sierra Ortiz Carlos)

 物事がそういうふうになったのは興味深いね。NINの曲作りにはぜひ参加したいと思っているよ。TR(注:トレント・レズナー)とはACSS(注:Antichrist Superstar)で一緒に素晴らしい作品を作った。彼は誰にも頼らず素晴らしい仕事をしていると思うよ。

●私はマリリン・マンソン時代にあなたが着ていたドレスを6着持っています。「Sweet Dreams」のビデオのドレス、「Tourniquet」のビデオの中で回転している時に着ていたドレス、1998年にステージで着ていた紫の「Mechanical Aimals」(注:Mechanical Animals)のドレス、ゴールドの「Dope Show」(注:The Dope Show)のビデオのドレス、ブラウンのアレキサンダー・マックイーンのドレス、2001年にステージで着ていた赤のストライプが入った黒とグレーのパッチワークのドレスです。今までにお気に入りのドレスはあった? 今でも時々ドレスを着ることがある?

 細かいところに気をつけて!!!!

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 以上、Q&A最終回でした。いやー、いい質問ばかりですね! ファンのみなさんの熱量が伝わるようです。これ、実際にはどれぐらいの時間だったんでしょうね。文字で読むとかなりのボリュームですが、意外と短かったんでしょうか? 今でこそ世の中にはTwitterなど相互にやりとりできる便利なツールがいろいろありますが、2007年というと、まだFacebookが登場したばかり…ぐらいの頃ですよね。(おそらく)世界中の誰でも参加できる形で、しかもこうして記録が残る形でおこなわれたと考えると、あらためて貴重なQ&Aだと思います。

 さて今回の内容ですが、最終回にふさわしく、かなりつっこんだ質問が多いです。ファンのみなさん、攻めましたね~。ジョーディも構えることなく、率直な思いを語っています。とくに音楽に関するまじめな質問には、真剣に答えているのが印象的ですね(なぜ毎晩いいライブをできるのかは分からないようですが…)。やはりここは、ジョーディに対するファンのあふれる愛と敬意が伝わったのでしょうか。

 ではひとつひとつ補足を…といきたいところですが、今回は、簡単にはいかなそうです。とにかく、情報量が多すぎるのです。バンドやミュージシャンの名前がばんばん出てきて、全部を追っていたら、ちょっとした辞典が作れてしまいそうです。もちろん筆者には辞典をつくる気力も能力もありませんので、気になったところだけつまみ食いしていこうと思います。

 まず、少年時代にバリー・ギブと会った…というエピソード。バリー・ギブといえば、そう、第2回のQ&Aでファンの人に彼のランチボックスをもらったという、あのビージーズのバリー・ギブです。え?子どもの頃に会ってたの?と思ったら、こんな写真を見つけました。

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  なんと、子ども時代のジョーディと、バリー・ギブではありませんか! バリーにぎゅっと肩を抱かれたジョーディが、嬉しそうに満面の笑みを浮かべています。撮影の日付は分かりませんが、おそらく70年代後半でしょうか。ピンク・フロイドやZZトップのコンサートに行っていたのも、この頃かもしれませんね。素敵な写真です。後に、ジョーディ自身もインスタグラムに投稿していました。

 マリリン・マンソン関連の質問もあいかわらず多いですね。自分が脱退した後のマンソンに関するちょっと(というかかなり)意地悪な質問に、「(彼に)優しくしてあげて」と言ってるのが泣けます。ジョーディ、あんた…いいやつだね! 当時のクレイジーな行動について「後悔なんてない」と言い切っているのもかっこいいです。ちなみにマリリン・マンソン加入前に在籍していたAmboog-A-Lardというのが、こちら。

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キレていた人たち

 左端にいるのがジョーディです。マンソンの自伝によると、ちょうど彼らがファーストアルバムを製作している真っ最中にマンソンがジョーディに電話をかけて、「マリリン・マンソンに入らないか?」と誘ったそうです。さすがにその場では返事しなかったみたいですが、結果的にジョーディはすぐAmboog-A-Lardを脱退しちゃったわけですから、そりゃー、他のメンバーはキレますよね(笑)。普通だったら「もう、あいつとは一生口聞かねえよ」状態になりそうなのに、その後の関係が良好というミラクル。そこは「誰とでも仲良くなれる」ジョーディの人徳なのか、それともAmboog側の懐がめちゃくちゃ深かったのでしょうか。

 ナイン・インチ・ネイルズでいちばんよかったことは?という質問には「アリーの隣にいられること」と答えていますが、アリーとは、いったい…? 響きが女性っぽいですが、聞いたことのない名前です。スタッフか誰かなのだろうか…と頭を悩ませた結果、ひょっとしたら、キーボードの「アレッサンドロ」の愛称なのかも?という可能性に思い至りました。なぜなら、アレッサンドロはステージでいつもジョーディのすぐ後ろにいるのです。だとすると、スッキリしますよね。が、これは完全に筆者の憶測です。うーん。アレッサンドロ、アレッサ…アリー。ありえそうです、アリだけに!

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おれじゃないんかい

 さて、残りは駆け足で。本人も見てねと言っているMTV Cribs(2001年に出演した番組)ですが、2021年現在、「正式に」見る方法がありません。多くのファンが涙をのんでいます。MTVよ、今からでもいいから配信してくれ! スティーヴ・ペリーはジャーニーの元ボーカル。ジョーディがジャーニーの曲にのってダンスする姿は、A Perfect CircleのDVD「aMOTION」で確認することができます。その時々で見せる姿が別人、というか別の生き物になるのは、本当に彼の大きな魅力ですよね。トム・グリーンは現在も活躍中のコメディアン。非常に面白いのですが、話し方が似ているかどうかまでは筆者の耳では分からず。

 ドレスを6着所有しているというファン、シンプルにすごい! 家宝ですね。ただ、ここのジョーディの回答が、よくわかりません。原文は「Attention to detail!!!」なのでそのままだと「細部に注意!」ですが、どういうことでしょうか。悩みに悩んだ結果、質問者がタイトル表記を微妙に間違ってるので、それをやんわり指摘した冗談ではないかと解釈し、このように訳しました。間違っていたらすみません。GGアリンは、超過激なパフォーマンスで知られるアーティストです。Goon Moonのビデオについて、「もっとちゃんとしたもの作ったほうがいいんじゃ」ということをファンの方がオブラートに包んで伝えているのが面白いですが、本人も分からないという行き先。いつかまたGoon Moonを再開して探求してもらいたいものです。

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月に行けるといいね

 筆者がいちばんぐっときたのは、音楽を始めるのは今からでも間に合うかと悩むファンへのあたたかいアドバイスです。ジョーディの優しい人柄が伝わりますね。それと笑ったのは、「面倒に巻き込まれないようにね!」でしょうか。デイヴ・ナヴァロの本、日本語版がないので筆者は手を出せずにいますが、相当クレイジーな行動が描かれているにちがいありません。

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たぶん面倒を巻き起こしていた頃

 というわけで全4回、いかがだったでしょうか。笑える回答から、ぐっとくるまじめな回答まで、ジョーディが日頃どんなことを考えて音楽を作っているのか、そもそもジョーディってどういう人なのか?が垣間見える、楽しいQ&Aでしたね。大急ぎで駆けぬけたので、もし新たに気づいたことがあったら、今後追記していきたいと思います。いつかまた、こういう機会が訪れることを心から願いつつ…

 最後は、「無限の宇宙に広がる広大な星空の下で車のボンネットに座っているような気分にさせてくれる」というメタリカのこの曲を聴きながら、一緒に余韻にひたりましょう! 

www.youtube.com

 

★★目次★★

ファンとのQ&A その③(2007年4月30日)

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 2007年4月26日から5月3日の約一週間にわたって、オンラインでおこなわれたファンとのQ&A。今回は、全4回のうちの第3回です。→第1回第2回
【開催日:2007年4月30日 出典:basetendencies.com

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●好きなアイスクリームのフレーバーは?(質問者:Kashfia)

 ピスタチオ。

●あなたと同年代の夫が、苦労して音楽活動をしています。彼に何かインスピレーションとなる言葉をかけてあげてください。(質問者:hardcorecor)

 自分が幸せだと思うことをすれば、結果は後からついてくる。

●走らない車(カマロ?)はまだ裏庭にありますか? (質問者:Holly)

 トランザムだね。いや、売っちゃったよ。

●ミュージシャンの仕事で一番嫌なことは?(質問者:Holly)

 楽に稼げて、女はタダだぜ。

●現在、マリリン・マンソンとの仲は? 彼はまだ嫌なヤツなの?(質問者:Kayla)

 ぼくが「嫌なヤツ」さ。

ニュージャージー州出身ということで、生まれた街をお聞きしたいのですが。(質問者:Sandra)

 チルトン病院で生まれたよ。ビリー・ハワーデル*1と同じ病院なんだ。

●こんにちは! ファンのために時間をとってくれてありがとう。一週間前に「Some Kind of Monster」を見たけど、あなたは本当にメタリカのメンバーになりたかったの? それとも「運を試してみよう」くらいの気持ち? というのも、メタリカと共演できなくてがっかりしてるようには見えなかったから。正直言って、あなたはナイン・インチ・ネイルズにぴったりだと思う。(質問者:borislava)

 自分の中の子供心を満たすために、一緒にプレイしたかっただけなんだ。

●とくに誇りに思っている曲や作品はありますか? 理由も教えて。(質問者:Sarah)

「I Know Where You Live」という曲を、自分用に保管しているよ。

●NIN、APCGM(Goon Moon)のメンバーとの関係について教えて。バンド仲間以上? それともいい友達? (質問者:Sarah)

 ぼくは誰とでも仲良くなれるんだ。

●Goon MoonとIpecac Records*2とのつながりはどうやって生まれたの? マイク・パットンのお尻にたっぷりとキスする必要があったとか?(質問者:Stacey)

 ぼくの友人が、Peeping Tomのツアーに参加していたナールズ・バークレイのもとで働いてたんだ。彼が、ぼくのデモのコピーをマイク・パットンに渡してくれた。数日後、マイクのパートナーであるグレッグから電話があって、マイクがデモに夢中になっていて、発売に興味を示していると教えてくれたんだ。当時のぼくは、Goon Moonのレコードを世に出す準備がまだできていなかった。だけど彼らがデモを聴いて大興奮してくれたから、レコードを完成させようという自信がついて、きみたちに聴いてもらえることになったんだよ。

●「Cribs」のエピソードの中で、マンソンはあなたがギターソロを弾くと言っていますが、あなたは1998年のインタビューで(ギターソロは)できないと答えています。ギターソロはできるの? Amboog.A.Lard時代には速い演奏をしていたよね?(質問者:Omar

 ぼくはずっとリズムギターのプレイヤーだよ。ギターソロもできるけど、80年代の速弾きスタイルではないよ。

ビートルズに影響を受けたようですが、初めてビートルズの音楽を聴いたときはどうだった?(質問者:Mari)

 赤ちゃんの頃、叔母さんのジジがアコースティックギターで彼らの曲を演奏してたんだ。それがぼくのトラウマになってるんじゃないかな。

●プリンスとマイケル・ジャクソン、80年代に良かったのはどっち?(質問者:twignig)

 Orange Juice Jones。

●こんにちは。最近YouTubeで「Sleep With A Gun」を見たんだけど、泣きそうになったよ。あなたの声は素晴らしくて、とても心地いいね。個人的な質問なので答えられたらでいいんだけど、歌詞の中に「干からびて名前を変える」とあるのは、トゥイギー・ラミレスになったことと何か関係がある? もしそうだとしたら、(名前的に)自分自身に戻れて嬉しいですか? (質問者:Carolynn)

 とてもいいね。それもあるよ。

●好きなクッキー型の形は? (質問者:twignig)

 クリスマスツリー。

●料理はできる?(質問者:twignig)

 うん、すごく上手だよ。

●今年NINのアメリカ公演があるかどうか、こっそり教えてもらえる?(質問者:lizardking)

 ぼくが知る限り予定はないよ。でも、状況が変わる可能性もある。

●あなたと誕生日が同じなんだけど、21才になるので、何かお酒を飲みたい(あなたにおごりたい)と思ってる。好きな飲みものは何?(質問者:Elektra Red)

 コーク・ゼロ。NINの飲みものだ。

●もっとも重要な感情は何だと思う? その理由は? (質問者:ashley pallini)

 欲望。そのおかげで、ぼくたちみんなが地球上にいるから。

●「ナイン・インチ・ネイルズマリリン・マンソンは傲慢な態度を改めて、また一緒に仕事をするのか」というお決まりの質問に対する、お決まりの否定的な回答をどうぞ。 (質問者:The Ubermensch)

 「傲慢な態度」なんて関係ないよ。どっちの「側」にも、もう意味がないんじゃない? なんのために?? なぜ? 

●お気に入りの新人アーティストを教えて。ゴミの山をかき分けられるかどうかはおいとくとして。(質問者:Skanky Spice)

 世の中には「素晴らしい」音楽がたくさんあるよ。テレビやラジオを消しておけばいいんだよ。

●最近YouTubeで公開している一連のビデオを作り始めたきっかけは?(質問者:sharkdiver)

 シェアしたい音楽がたくさんあるんだ。自分の好きなように無料公開するのが一番だと思ったんだよ。ぼくにもきみにも、何のコストもかからないしね。

●トロイ・ヴァン・リューウェンと「no no, yes yes」ダンスのレッスンは続けていますか?(質問者:yvaine)

 はぁ?

●コンボのやり方を知らない人が適当にボタンを押しているときの鉄拳のエディ・ゴルドさながら、アーロンがアレッサンドロのキーボードからジャンプして空中を飛んでいるのを見て、どう思いますか?(質問者:Foofarella)

 なんだって?

●ジンジャー、ポゴとは今も友達?(質問者:teme_131)

 二人のうちどちらかに会ったら、そうなるだろうね。

———

 以上、Q&A第3回でした。質問しているファンのみなさんがあまりにもジョーディのことに詳しいので、ただただ感心してしまいます(時々ジョーディ本人がついていけてないのが笑えますが)。ディープな内容が続くかと思いきや、いきなり「好きなクッキー型は?」なんて質問が飛び出すのも、楽しいですね。ビートルズが「トラウマ」になっていたとは…(笑)。素敵なトラウマを植えつけたジジ叔母さん、ナイスです。

 さて、正直なところ筆者にも理解しきれていない点が多いのですが、分かる範囲で補足していこうと思います。

 まず、所有していたけど売ってしまったというトランザムですが、おそらくこの車のことではないかと思います。2001年のMTV Cribsでジョーディが自宅を紹介した際、裏庭に置いてありました。

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自慢の車さ

  どこかで別のファンの方が「’77年型のトランザム」と書いているのを見かけましたが、筆者は車の知識がないので、残念ながら判断がつきません…。キャメルっぽいというのでしょうか。ちょっと珍しい色ですよね。番組では運転席に座ってみせたりしていたので普段乗っているのかと思っていたのですが、そもそも動かなかったんですね(笑)。ちなみに同じ番組で、キッチンを見せながらお気に入りのソースも紹介していました。まるで主婦向けのお昼の番組のワンシーンみたいで笑ってしまったのですが、料理が得意だったのですね。想像つくようなつかないような…?

 マリリン・マンソンは嫌な奴?というお決まりの質問も、スマートにかわしているジョーディ。ちょっと意地の悪い質問をされたとき、誰も傷つけない回答をするのが本当にうまいですね。誰とでも仲良くなれる、と本人が言うのも分かる気がします。プリンスとマイケル・ジャクソンどちらがいいかと聞かれて答えた「Orange Juice Jones」は、おそらく「Oran Juice Jones」という歌手の名前をもじったものではないかと思うのですが、だとすると、これもジョーディ流のかわし方でしょうか? メタリカとの共演については、こちらで記事にしましたのでご覧ください。

 そして、ファンの方が思わず泣きそうになったという「Sleep With A Gun」のビデオはこちら。

www.youtube.com

  曲調とあいまって郷愁を誘う、美しい映像です。映っているのは、幼い頃のジョーディやお父さん? ホームビデオを使って自分で編集したのでしょうか。このQ&Aでもたびたび話題にあがっているジョーディのYouTubeチャンネルですが、実は筆者、このチャンネルが本人のものかどうかずっと確信が持てませんでした。Goon Moonのデモ音源などがあげられているのですが、説明がほとんどない上、異様に画質が粗かったり変なエフェクトが多用されていたりと謎な点が多く、もしかしたらファンの方が好意で動画を作っているのかも…と怪しんでいたのです。しかし、「Goon Moon」と題された動画を見ていて、「多分、本人だな!」と思うようになりました。なぜなら…

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どこかで見たことあるような・・・

 画像だとちょっと分かりづらいのですが、そうです! 文字部分のエフェクトが、まんまスター・ウォーズなのです(笑)。その後、今回のQ&Aのような記事を読んで、ようやく本人がYouTubeをやっていることが分かり安心しましたが、それにしても、見方に戸惑うというか、アピールする欲が一切ない不思議なチャンネルです。長く更新されていないようですが、ファンとしてはジョーディの頭の中が覗けるようで興味深いので、気が向いたらまた音源や映像をアップしてもらいたいものです。自分用に持っているという名曲(?)「I Know Where You Live」もぜひ聴いてみたいですね。【2021.7.26追記】その後、「I Know Where You Live」はGoon Moonのライブで歌ったり、一時期MySpaceで音源を公開したりしていたようです。

「いま聴く価値のある音楽なんてある?」的なニュアンスにもとれる皮肉な質問を「テレビとラジオを消せばいい」とさらりとかわし、もっとも重要な感情は「欲望」と、そんじょそこらの哲学者も唸るセンスを披露。随所に彼の知性とユーモア、優しさが光る中、ラストに突如現れた強敵が「no no, yes yesダンス」と「鉄拳のエディ」の二大謎質問です。

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鉄拳のエディ

 まずno no, yes yesダンス。おそらくファンの方が何かを元ネタにして尋ねていることは想像がつくのですが、筆者にはまったく分からず! すみません…。トロイ・ヴァン・リューウェンは、ジョーディ加入前にA Perfect Circleに在籍していたギタリストなので、A Perfect Circle関連のDVDかなにかに、二人がダンスの練習をしている風景が収められているのでしょうか? no no, yes yesダンスとはいったい…?

 それに比べると、「鉄拳のエディ」の質問はいくらか難易度が低めです。アーロンというのは、当時ジョーディと一緒にナイン・インチ・ネイルズで活動していたギタリストのアーロン・ノースのことですね。ナイン・インチ・ネイルズのDVDや動画を見るとわかるのですが、ライブで演奏中、アーロンはしばしばアレッサンドロ・コーティニのキーボードの上に飛び乗って、ギター持ったままびょーん!とジャンプするんですよ。最高の音を奏でながら、感情のリミッターが壊れたかのごとく、まさに「飛ぶ」のです。時々アレッサンドロが飛び乗ることもあるのですが、アーロンのジャンプは格が違います。下の写真を見てください。

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飛ぶアーロン(中央)、見上げるアレッサンドロ(右)、気づいてないトレント(左)

 なので、この質問は「アーロンがあのクレイジーなジャンプをしてる時、そばで見てるジョーディはいったいどう思っているのか?」という意味なのだと思われます。筆者はゲームに疎いですが、「ボタン操作が分からない人に動かされるゲームのキャラみたいに」というたとえは本当にしっくりきます(笑)。アーロンのパフォーマンスの素晴らしさについては、いつかナイン・インチ・ネイルズ時代のジョーディについて取り上げるときに、あらためて紹介したいと思います。

 最後に、「ミュージシャンの仕事で嫌なことは?」という質問についてですが、「楽に稼げて女はタダ」とはジョーディらしからぬ回答だな~(しかも良いことではなく悪いことってどういうこと?)とやや意外に思っていたのですが、この記事を書くにあたり調べていて、ようやく気づきました。同名の曲があったのです。それは、ダイアー・ストレイツによる1985年のヒット作「Money For Nothing」。

www.youtube.com

 ロックスターを皮肉った曲らしいのですが、歌詞の一節に「Money for nothin', and chicks for free」すなわち、「楽に稼げて、女はタダ」という言葉があります。ジョーディの回答は原文だと「Money for nothing and the chicks are free」なので、そのまんまですね。

 いやーしかし、ジョーディは本当にたくさんの音楽やアーティストを知ってますね! 知ってるのもすごいが、ぱっと出てくるのもすごい。いろんな意味で感心しつつ…次回は、Q&Aいよいよ最終回です。

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ポゴ、元気にしてるかな~

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★★目次★★

*1:A Perfect Circleの設立メンバー。年齢的にはジョーディの一才年上のようです。

*2:Goon Moonのレコードをリリースしたレーベル。元フェイス・ノー・モアのマイク・パットンとマネージャーのグレッグ・ワークマンが1999年に設立。

ファンとのQ&A その②(2007年4月28日)

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 2007年4月26日から5月3日の約一週間にわたって、オンラインでおこなわれたジョーディとファンとのQ&A。今回は、全4回のうちの第2回です。→第1回はこちら
【開催日:2007年4月28日 出典:basetendencies.com

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●あなたの音楽スタイルはどこに向かってると思う?(質問者:Sonia)

 フォークだと思う。「彼ら」が電気を消したとき、残るのはアコースティックギターだけだろうな。

●ネイティブアメリカンの音楽や、海外の音楽に影響を受けていますか? 今どんなタイプの音楽を追いかけてる? おすすめがあったら教えて。(質問者:Sonia)

 答えはノーだけど、学びたいと思っているよ。The Langley Schools Music Projectをチェックしてみて。とても素晴らしいんだ。

●クリス(・ゴス)との出会いは? 彼が素晴らしいプロデューサーである理由は何だと思いますか?(質問者:Lotsastars)

 クリスとはジョシュ(QOTSA)*1を通じて知り合ったんだ。クリスが素晴らしいプロデューサーである理由は、エゴが一切ないことと、音楽への愛だと思う。彼がそばにいると、とてもいい幸運のお守りになるんだ。大きな心を持った素晴らしい人だよ。

●デザート・セッションズはまた再開されますか?(質問者:lotsastars)

 もちろんそうなってほしいけど、これはぼくに答えられる質問じゃないね。

●ずっと好きなテレビゲームは何?(質問者:Gpavuk1)

 Atari 2600のAdventure。

●ファンからのプレゼントで一番うれしいものは?(質問者:smells-like_children)

 お金。

●自由な時間は何をして過ごしてる?(質問者:Holly)

 この質問に答えているよ。

●ペットは飼ってる?(質問者:Holly)

 猫を二匹飼ってる。ジャックとサディっていうんだ。

●読書は好き? どんな本を読むの?(質問者:Holly)

 最近読んだ本でとても気に入ったのは、コーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」。

●寝ようとした時ベッドから落ちそうな気がしたのに、目を開けると全然動いていなかったことはある? すごく苦手なんだけど。(質問者:twignig)

 ああ、夜驚症だね。気をつけて。

●あなたは長年さまざまなバンドやプロジェクトに参加してきて、どれも素晴らしかった。でも、ひとつのバンドにずっと腰を落ち着けて、そのプロジェクトだけに全エネルギーを傾けたいと思うことはない? それとも、バンドを渡り歩いて違うことをするほうが好きなの?(質問者:Carla)

 えーと、ぼくは十年以上もひとつのバンドでやってきた。すぐに「定住」するつもりなんてないよ。できるだけたくさんの人たちと音楽を作るべきだ。クリエイティビティに制限をかける必要なんてないよ。

●これまでのキャリアで、生活のために音楽を演奏するのはやめて、違う職業につきたいと思ったことはある?(質問者:Carla)

 音楽を演奏することも作ることも、やめたいと思ったことはないよ。

●APC(A Perfect Circle)は無期限活動停止中ですが、もし機会があったら、あのメンバーとまた演奏したいですか? それともあれは一時的なお楽しみで、あなたにとってはもう終わったことなの?(質問者:Carla)

 ええと、時間がゆるせばすぐにでもAPCをやりたいんだけど、今はNINとGoon Moonに100パーセント集中しているよ。

●「The Dope Show」はどのように書かれたの? 曲ができるまでの過程を教えてもらえますか?(質問者:Jonathan Borden)

 イギー・ポップの「Nightclubbing」にオアシスとT-REXをかけ合わせて、パクったのさ。

●マリリン・マンソン時代、トレードマークの髪型はどう作っていたんですか? ドレッド? 三つ編み? ヘアスプレー? ジェル?(質問者:Jonathan Borden)

 髪を洗うのとブラッシングを完全にやめただけだよ。エルマーズ・グルーも使えるよ!

●生死に関係なく誰かに会えるとしたら、誰に会いたい? その理由は?(質問者:Infection)

 ぼくのお父さん。

●モンタナに行ったことはある? 印象は?(質問者:roseandtwiggs)

 子どもの頃一度だけ行ったことがあるよ。とても気に入ったよ。

●くだらない質問なんだ(だけどアドバイスが欲しい)。もし友達が自分の悪口を言っていたら、それでも友達でいられる? あなたならどうする?(質問者:roseandtwiggs)

 誰もが悪口を言うんだ。ぼくがひとつだけアドバイスできるのは、自分がそういう人間にならないということだよ。もし誰かがきみの悪口を言うなら、それはその人たちの問題であって、きみの問題じゃない。きみはいい人間になって、自分がそうしてもらいたいのと同じようにみんなに接してあげて。きっとその人に悪気はないんだろう。何かに不安を感じてるだけなんだ。

●なくてはならないアルバムは?(質問者:Candis)

 Dark side of the Goon Moon。

●メタリカでお気に入りのアルバムとメンバーは?(質問者:Candis)

「Master of Puppets」。メンバーはクリフ・バートン。聞いたことがあるかもね。調べてみて。

●ファンから貰ったもので、今も持っている物はある?(質問者:Candis)

 バリー・ギブのランチボックス。

● Wiiをやっていますか? どう思う? 私はWiiスポーツのテニスをやって体を痛めてしまいました。ボウリングはなかなかいいけど。(質問者:twignig)

 「ゼルダの伝説」は大好きだ。最高だよ!!!!!

●ナイト・ヴィジョン(暗視能力)とX線ヴィジョン(透視能力)、欲しいのはどっち?(質問者:twignig)

 X線ヴィジョンさ、ベイビー!

●Goon Moonについて。共同制作している人たちに、何を伝えたい? このプロジェクトのポイントを教えて。ビデオは、デヴィッド・リンチ的な感じがします。隠された結論があって、面白いけど考えさせられて…。精神分析学的なつながりはある? Goon Moonの全体像を簡単に教えて。(質問者:Agnes)

 ワオ、これまでで最高の質問だね。もうほとんど分かっているみたいだね。ミス・モスは全ての答えを持っているよ。

● マリリン・マンソンとまたショーで共演したいと考えたことはある? 二人の関係を教えて。今でも仲の良い友達? それともただの仲間?(質問者:Agnes)

 ふさわしい状況になればね。ぼくたちは敵じゃないよ。友達じゃないだけで、友好的だ。

●Goon Moonについて。ミス・モスは本当に面白いですね。誰の声ですか? ミス・モスの曲は誰が作っているの? (質問者:Agnes)

 ミス・モスは、きみを含めてあらゆるものを創造したのだ。彼女は、命を与える者であり、奪う者なのである。

●Goon Moonについて。メインで作詞を手がけているのは誰? おもなインスピレーションは? (質問者:Agnes)

 クリスとぼくの共同作業だよ。ぼくが書いたり彼が書いたり、一緒に書いたりしているんだ。自分の経験や財産からアイディアを引き出しているよ。

●現在、恋人はいますか? (質問者:Agnes)

 はい、います。

●ロサンゼルスのどの地域が好きですか? 自由な時間はどこで過ごすのが好き?(質問者:Agnes)

 家にいるのが好きだよ。

● あなたの猫、サディとジャックについて。彼らはGoon Moonのおかげで有名になりつつあるね。彼らの性格や一番好きなところ、インスピレーションを受ける点があれば教えて。(質問者:Agnes)

 うちの猫は「Quantum 3」さ。

●ボバ・フェット、ジャンゴ・フェット、IG-88のうち、優れたバウンティ・ハンターは誰?(質問者:Olivia)

 ボバ・フェット。

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 以上、Q&A第2回でした。今回は前回以上に、質問のバリエーションが多いですね! ゲームの話から飼い猫のこと、はたまた友達関係についての悩み相談など、あっちの方向やこっちの方向から飛んでくる質問に、ユーモアを交えながら丁寧に答えています。時々、どこまでが本気でどこからが冗談か分からない回答もありますが、それもまた、ジョーディらしいですね。

 この頃は、本人の発言にもある通りGoon Moonとナイン・インチ・ネイルズでの活動がメインで、かつ後年のインタビューから想像するにマリリン・マンソンとも交流が途絶えていた時期です。ファンのみんなが「マリリン・マンソンに戻る可能性はもうないのだろうか…」と心の中でやきもきしている様子が伝わります(笑)。Goon Moonはライブ活動がメインではないですし、ナイン・インチ・ネイルズでのジョーディはどちらかというとサポート的な立場でしたから、「もっとバンドでがっつりライブしているジョーディを見たい!」と思うファンも多かったのかもしれませんね。

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その後、やっぱり友達に戻っちゃう二人

  バリー・ギブ(ビージーズ)のランチボックスとは、いったい…?と思ったら、画像がありました。たぶんこれです。

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胸元がセクシー

 他のメンバーのバージョンもあるみたいです。かわいいけど、ちょっとデザインがシュールな気が…。プレゼントした方は、きっと大切に持ってもらえて嬉しいでしょうね。ジョーディといえばランチボックスを思い出す…という人もいるほどジョーディとは縁の深いランチボックスですが、日本人の感覚からすると、お弁当箱というよりお菓子の缶に見えますよね。実際にお弁当箱として使うとしたら、中に入れるものにはちょっと気をつかう必要がありそうです。

 Goon Moonのパートナーであるクリス・ゴスは、もう見るからに性格が良さそうです。そばに置いておくには、少々大きすぎる気もしますが…(笑)。

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幸運のお守り

 さて、ひとつひとつ見ていくとおそろしい長さになりそうなので、残りは簡単に補足を。猫のジャックとサディは、Goon Moonの「Hardcore Q3」という曲に登場します。歌詞の「Quantum 3, gone to hell」をもじった回答がありますが、Quantum 3はそのまま訳すと「量子3」。筆者は知らないのですが、ゲームかなにかで元ネタがあるのでしょうか…? コーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」は、日本でも出版されているようです。あらすじを見ただけで暗い気分になるので、本編もヘビーそうです。「Dark side of the Goon Moon」は、おそらくピンク・フロイドのアルバムタイトル「Dark side of the Moon」をGoon Moonにかけた冗談?

 デザート・セッションズは、一時期ジョーディも参加していた、ジョシュ・ホーミのプロジェクトですね。それからエルマーズ・グルーですが、現在も販売されている接着剤みたいです。トゥイギーのあの髪型を作るのは、やはり、そんじょそこらにあるヘアケア製品では無理ということなんでしょうか。

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確実に人体用ではない

 ボバ・フェットはもちろんスター・ウォーズからの質問です。「The Dope Show」の元ネタになったというイギー・ポップの「Nightclubbing」ですが、ジョーディが、同じくこの曲をもとに「Closer」を作ったトレント・レズナーらと演奏している映像があります。とても素晴らしいので、また後日、あらためて記事で取り上げたいと思います。

 筆者がいまいちわかっていないのが、「ミス・モス」。だ、誰? Goon Moonの曲に登場するみたいですが、見つけられず…。歌詞を見ながら、もう一度アルバムを聴き直す必要がありそうです。それにしても、最初の質問にある、電気を消す「彼ら」っていうのは、いったい誰のことを言ってるんでしょうね…。意味深です。

 また、お父さんに会いたい、というせつない回答ですが、残念ながら後年(2017年)、ジョーディが自分のインスタグラムで「今日、父の火葬の書類にサインしました。ぼくたちが一緒に写っている数少ない写真がこれだと思うと、不思議な気持ちになります」と、子どもの頃の写真を添えて投稿していました。生きている間に再会できていたことを願うばかりですが、きっと心の中で、ずっとお父さんのことを慕い続けていたのでしょうね。

 そんなジョーディの優しさが伝わるのが、「悪口を言ってくる友達とどう付き合えばいい?」という質問への回答。これ、ずっと疑問だったんですけど、ジョーディが誰かのことを悪く言っているのを、一度も聞いたことがありません。マリリン・マンソンを最初に脱退した後も、「マンソンとケンカしたのか? 彼はやっぱり嫌なやつなのか?」と探りを入れてくるマスコミをかわし、一貫して「音楽の方向性が違っただけ。誰も悪くない」という態度をとり続けていました。もともとの性格が温厚なのかな…?と思っていたのですが、彼なりのしっかりした考えがあったのですね。

 第3回につづきます。

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透視も暗視もできそうなメガネ

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★★目次★★

*1:クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(Queens of the Stone Age)のジョシュ・ホーミ。クリス・ゴスはQOTSAのプロデューサーとしても知られる。

ファンとのQ&A その①(2007年4月26日)

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 2007年4月26日から5月3日の約一週間にわたって、オンラインでジョーディとファンの人たちによるQ&Aがおこなわれていました。彼がこういう形で質問に応じるのは、もしかしたらこれが初めてかもしれません。音楽に関するまじめな話からプライベートに関することまで、他では聞いたことのない情報も多く、なかなか貴重な内容になっています。今回は、全4回のうちの第1回をご紹介します。

【開催日:2007年4月26日 出典:basetendencies.com

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●音楽的にもっとも影響を受けたのはだれですか?(質問者:hardcorecor23)

 えーと、ビートルズ、ビージーズ、オアシス。いつもこの三組に戻ってきてしまうんだ。

●いま、CDプレーヤーに何が入ってる?(質問者:hardcorecor23)

 CDプレーヤーじゃなくて、ターンテーブルとiPodを持ってるよ(ターンテーブルは「レコード」っていうものを再生するんだ。実際にお店へ行って、買わなくちゃね。調べてみるといいよ)。いま、ぼくのターンテーブルにかかっているのは、A Silver Mt. Zion。

●トレント(・レズナー)とマリリン・マンソン、友人として好きなのはどっち?(質問者:rikku12121)

 メイナード。

●メキシコ人ですか?(答えがノーなら、嘘だよね?)(質問者:Lauren)

 いや、ぼくはメキシコに住んでないから、メキシコ人じゃない。アメリカに住んでるから、アメリカ人だよ。ルーツ的な背景でいうと、イタリア人とスコットランド人だね。「トゥイギー・ラミレス」のラミレスは、「マリリン・マンソン」と同じように、シリアルキラーのリチャード・ラミレスからとったんだ。

●シングルですか? だとしたら、付き合える女の子は何才から?(私は17才なので)(質問者:Lauren)

 それはマンソンにまかせよう。

●うしろから触られるのは好きですか?(質問者:Shaun aka Felonious_Butterfly)

 もちろん。

●ずっと知りたかったんですが、自伝を出そうと考えたことはありますか? どんな人生を送ればあなたみたいにビッグなミュージシャンになれて、私たちにもその望みがあるかどうか分かったら、面白いと思うので。以上です。(質問者:puschelchenmin_z)

 書いたことはあるんだけど、読み返してみたら、これを出して自分が書いた物語で自分を決めつけられたいのかどうか、分からなくなっちゃったんだ。

●自分のレコードを作りたいと思ったことはありますか? ソロのバンドみたいな感じで。あなたはいろんな才能を持っているし、素晴らしい曲を書くので。(質問者:Adora)

 ありがとう、自分のレコードを作ることはもちろん考えているよ。でも今のところは、NINとGoon Moonで我慢してほしいな(ソロの曲はYouTubeでチェックしてみて。今後もアップする予定)。

●Goon MoonのLLL(注:Licker’s Last Leg)のプロモーションツアーをする予定はある? もしそうなら、NINのツアーはやめてしまうの?(質問者:tara)

 今年はGoon Moonで何本かライブをする予定だよ。わかりしだい伝えるので、詳細はお楽しみに。

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 今回はここまでです。

 ビートルズとビージーズ、オアシスについては他にもいろいろなところで語っているので、本当に大好きなんですね。ビージーズは、ディスコ化する前の初期の頃に限って…ということみたいですが。Goon Moonの「Licker's Last Leg」でも一曲カバーしていました。(8曲目の「Every Christian Lion Hearted Man Will Show You」)

 彼の顔立ちが、アーシア・アルジェントというイタリアの女優さん(父親は映画『サスペリア』の監督ダリオ・アルジェント)に似ているな~とつねづね思っていたのですが、ルーツがイタリア系と聞いて納得です。

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左がジョーディ、右がアーシア。ちょっと似てますよね?

 結婚式に参列していたジョーディのお母さんの映像を見ると「The イタリアのマンマ!」な雰囲気(と体格)なので、おそらくお母さんがイタリア系、お父さんがスコットランド系なのではないかとふんでいるのですが、どうでしょうか。

 ここではファンにメキシコ人だよね?と疑われているジョーディですが、マンソンには、初めて会ったときの印象を「ブライアン・メイよりデカいアフロの、エキゾチックな中東顔」と書かれていました。*1

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ブライアン・メイのアフロ

 A Silver Mt. Zionは、カナダのポストパンクバンドのようです。メイナードは、A Perfect Circleでも一緒に活動していたメイナード・ジェームズ・キーナンのことでしょうね。

 ちなみに「うしろから触られるのは好きですか?」という質問ですが、原文は「Do you appreciate the reaching-around?」となっており、直訳すると「あなたは手を後ろに回すことに感謝しますか?」になってしまいます。謎の質問です。

 筆者なりにreaching-aroundが何を指すのかを調べた結果、どうやら、「性交時に肛門を刺激されること」という意味があるようです。こんなド下ネタをいきなりぶっこんだとしたら、なかなか勇気のあるファンです。悩みましたが、やはり確信がもてなかったので、少々表現をやわらげてこのように訳しました。正確にはどういう質問だったのだろう……。教えてエロイ人。【2021.07.11追記】あとから気付いたのですが、この質問はGoon Moonの「My Machine」の歌詞の一節"I appreciate the reach around"が元になっているようです。そのままの意味でとると「まわりの人に感謝する」なので、下ネタどころか素敵な質問でした…筆者の妄想が先走ってしまったようです。すみません。ただ「reaching-around」と言い換えられているので、ダブルの意味で聞いている可能性もなきにしもあらずですが…。どちらの意味だとしても「もちろん」と答えたジョーディは素敵です。

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→第2回はこちら

★★目次★★

*1:マリリン・マンソン自伝「The Long Hard Road Our Of Hell」p82

ピーター・マーフィーと共演!【セッション】Live in Boston:演奏編(2006年6月23日)

 2006年6月におこなわれた、ラジオ番組のためのスペシャル・セッション。それでは、さっそく映像を見てみましょう。(→前回の記事はこちら)。

 ナイン・インチ・ネイルズ(以下NIN)の公式Vimeoに掲載された情報によると、映像を撮影したのはロブ・シェリダン。高校在学中にトレントに見いだされ、NINのアートワークや映像を手がけるようになった人物です。2007年に発売されたライブ映像作品『Beside You In Time』でも、素晴らしい仕事ぶりが光っていました。

 予算も手間もしっかりかけた一連の作品と違い、今回はおそらく手持ちカメラで撮影しているようですが、それが部屋の雰囲気とあいまって、ホームビデオのような独特の味わいを生み出しています。急遽トレントに撮影を頼まれたのか、それとも彼がたまたまカメラを持っていたのかは定かではありませんが、とにかく、今回の映像を残した功績は大きいですね。ありがとう、ロブ!

 というわけで、全4曲の演奏、いよいよスタートです。

1. Reptile - Nine Inch Nails

www.youtube.com

 まず一曲目は、NINの『Reptile』。1994年発表のアルバム『The Downward Spiral』に収録されている楽曲です。オリジナル・バージョンでは「ウィーン!」「ガシャーン!」と、爬虫類(Reptile)というよりヤバめのロボットが登場しそうな音が効果的に使われていますが、今回、出だしを聴いただけでは何の曲なのか戸惑いそうなほど、シンプルなアレンジに変わっています。それにしても、この観客の少なさ! いったい前世でどんな徳を積んだら、ここにいる幸運な観客の一人になれるのでしょうか!?

 歌詞をチラ見しつつもどんどん調子をつかんでいくピーターの魅力的…いや魔力的な声に、繰り返されるトレントの美しいベースライン、そして控えめながら破壊力がすさまじいジョーディのギターサウンド。すべてが重なり合って、まだ一曲目だというのに、圧倒的なエネルギーを放っています。シンプルなアレンジで余計な音がそぎ落とされた分、もともとの楽曲の美しさが際立っていますね。さて、注目は4分20秒のあたりです。すこし、曲調が変わったような気がしませんか?

 実は今回、彼らは面白い試みをしていて、ここからなんと別の曲の一部を演奏しているのです。それは、ラヴ・アンド・ロケッツの『Haunted When The Minutes Drag』。1985年発表のデビューアルバム『Seventh Dream Of Teenage Heaven』に収録されている楽曲です。

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ジャケットおしゃれですね

 ラヴ・アンド・ロケッツは、バウハウス解散後、ピーター以外のメンバーたちによって結成されたバンドです。なぜここでバウハウスではなく、彼が参加していないラヴ・アンド・ロケッツを?という疑問が浮かびますが、もしかしたらピーターの提案だったのかもしれませんね。それにしても、(筆者の耳には)まったく違う曲が、まるで『Reptile』がもともとこういう曲だったかのように、なんの違和感もなくなじんでいます。むしろ、これを聴いた後でオリジナル・バージョンを聞くと、「なんか、あるべき部分が欠けているような…」とすら感じるぐらいのなじみっぷりです。みなさんも、よかったらぜひ聴き比べてみてください。

 余談になりますが、マリリン・マンソンがジョーディとの初めての出会いについて、「あるレコードを買いに行ったら、店員がラヴ・アンド・ロケッツのレコードを押しつけようとしてきた」、それがジョーディだったと自伝に綴っています。突然すすめられたレコードをはたしてマンソンが購入したかどうかは不明ですが、ジョーディ(おそらく20才頃?)、バウハウスだけでなくラヴ・アンド・ロケッツのファンでもあったのですね。その時の光景が目に浮かぶようです。「そっちもいいけど、ラヴ・アンド・ロケッツにしなよ! おすすめだよ!」みたいな感じだったんでしょうか。

 さて今回の映像には、ジョーディ・ファン的には見逃せないちょっとしたアクシデントが。4分48秒あたりで、ピーターがジョーディ、というかトゥイギーに向かって「トゥイグ!」(トゥイギーの愛称)と呼びかけるのですが、呼びかけられたジョーディ、

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はぁ?

 まるで眠っているところを起こされたかのように、不思議そうな顔でピーターを見つめています。というか、声をかけられたとはっきり認識するまで、少々時間がかかっています(笑)。ヒントを探ろうとしたのか一瞬トレントの方を見ますが…

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チラッ

 やっぱり分かりません。「?」という表情のままピーターの方を見つめた後、あることに気づいて、ぱっとマイクスタンドに手を伸ばしました。おそらくピーター、もうすぐコーラスに入るジョーディに、マイクが口元から離れていることを教えてくれていたのですね。演奏に集中していたのか、それとも意識が別の世界に飛んでいたのかは分かりませんが、「え? なに?」という心の内がそのまんま顔に出ているジョーディでした。とはいえ一連の流れの中、演奏の手がほとんど止まらないのはさすがですね。

 いやーそれにしても、出だしから素晴らしい演奏でした。終盤でジョーディが使っている青く光る小さな黒い物体は、EBow(イーボウ)という機械のようですね。演奏後、観客に向かって誇らしげに両手を広げるジョーディ。

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どうだい?

 大きな拍手が起きる中、ピーターが「トゥイギー、もちろんトレント、アッティカス」とメンバーを紹介しました。トレントが「もちろん、ピーター・マーフィー」と返したため、「あはあはあは」と笑うピーター。笑い方が、お茶目ですね。

2. Warm Leatherette - The Normal

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 続いては、二曲目。トレントが今回の企画について説明したあと、「昔からのお気に入りなんだ」といって演奏を始めたのは、ザ・ノーマルの『Warm Leatherette』。1978年に発表された楽曲です。この曲、実はある小説をもとに作られているのですが、それは、J・G・バラードの『クラッシュ』。自動車の衝突事故に性的快感を覚える男女の姿を描いたバラードの代表作のひとつで、筆者も大好きな作品です。1996年に、デヴィッド・クローネンバーグ監督により映画化もされています。

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レコードのジャケットも小説そのまんまです

 一見バンドの名前かと勘違いしてしまいそうなザ・ノーマルは、ダニエル・ミラーによるソロ・プロジェクト。ザ・ノーマル名義でリリースされたのは『Warm Leatherette』のシングル一枚だけですが、活動時期がバウハウスと重なっていることや同じイギリス出身であることを考えると、もしかしたらピーターとも交流があったのかもしれませんね。

 さてそんな『Warm Leatherette』、オリジナル・バージョンはかなり無機質な響きなので、普通なら「あまり生演奏向きじゃないのでは」と考えてしまいそうですが、そんな心配は無用でした。もはや、誰がどの音を出しているのか分からないほど息のあった四人の演奏により、おどろくほど有機的なサウンドに変化しています。

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息のあった人たち

 打ち込みを多用して作られた曲をライブ演奏用にアレンジする…という作業は、NINが昔から自身の曲でやっていることなので、彼らにとってはそれほど難しいことではないのかもしれませんが、それにしても、すごい音の広がりです。「Warm(あたたかい)」と「Leatherette(合皮)」という二つの単語が絡みあいながら発展していく、不思議な光景を見ているようです。専門的な知識がないので自信がないのですが、この曲、おそらく最初から最後までひとつのコードだけで成り立っているのではないでしょうか。

 車のスピードがどんどん上がっていくような疾走感と、感情があるのかないのか分からない謎の中毒性に酔いしれていたら、脳が溶けそうになってきました。もうこうなったら目を閉じて、音に浸りたいですね。…いや、彼らの演奏姿を目に焼き付けたいので、やっぱり目は閉じませんけどね!

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ジョーディも酔いしれている様子

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もはや、ボーカルをどう分けているのか分からない二人

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あらゆる種類の「レザレ~ット」を繰り出すトレント

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ピーターが操る、なんらかの未来的な機械

 単なる曲のカバーという域を超えて、別の次元に着地させたところで演奏は終了しました。ふたたび大きな拍手が起こる中、ジョーディが、さっとギターを持ちかえているのが見えますね。

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ササッ

3. A Strange Kind Of Love - Peter Murphy

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 続いて三曲目は、ピーター・マーフィーの『A Strange Kind Of Love』。1989年発表のソロ・アルバム『Deep』に収録されている楽曲です。

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モノクロのジャケットです

 トレントが「これはピーターの曲なんだけど、すごく素晴らしいんで、今回かなり過激なアレンジにしてみたよ」と紹介しているので、いったい四人でどんな演奏をするのかと思いきや、過激もなにも、原曲そのまんまです。しかも、トレントとアッティカスは演奏には加わらず、ジョーディのギターをバックにピーターが一人で歌うスタイル。というかトレント、真顔でこんなジョークを飛ばす人だったんですね(笑)。ストイックな印象が強かったので、やや意外です。

 さて、ちゃっかり休憩タイムに入ったトレント&アッティカスとは対照的に、ピーター本人と一緒に彼の曲を演奏するという大役をまかされたジョーディ。さきほど持ち替えたアコースティック・ギターで、美しくも物悲しい音色を奏でています。

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物悲しい音色を奏でるジョーディ

 短い前奏のあと、ピーターが歌い出しますが、ちょっとびっくりするような声です。前の二曲に比べて歌う音が低いせいか、それとも自分の曲なので長年歌いこんでいるからなのか、歌詞にもあるように、声がまさに「宝石」のような輝きをはなっています。後ろでトレントが、リズムをとりながら聞き惚れている様子が映っていますが、いやー、これはトレントじゃなくても聞き惚れますよね!? ピーター本人は、時々ジョーディの様子を気づかいながら、リラックスして歌っているように見えます。大人の余裕!

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アイコンタクトをとるピーターとジョーディ

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響きわたるピーターの美声

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後ろで聴きいっているトレント

 最初に述べた通り、アレンジはほとんど原曲のままなのですが、ひとつ面白いのが間奏部分。ちょうど3分のあたりです。ここ、オリジナルでは「タラララ~♪」というメロディがキーボード音で流れるのですが、今回はピーター、楽器で演奏するのではなく自分の声で歌っています。で、こういう場合、普通「ラララ~」とか「トゥルル~」といった音に置き換えそうな気がするのですが、ピーターがチョイスしたのは、まさかの「マ」! 「ママママ~」って、ハミングであまり聞かないですよね!? 振り返れば、一曲目の『Reptile』でも間奏部分に「マ~~」とシャウトしているので、兆候があるといえばあったのですが…。なぜ「マ」なのかはまったく分かりませんが、ピーターは「マ」の音が好きなのでしょうか? それとも、この「マ」はただの「マ」ではなく「魔」なのでしょうか? ジョーディも、心なしか不思議そうな顔をしています。

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なんで「マ」なのかな?

 疑問は尽きませんが、ここはこれ以上なにも考えず、ピーターが歌う世界一心地良い「マ」と、ジョーディの美しいアコースティック・ギターの音色に身をまかせることにしましょう。演奏後、「ギターはトゥイギー。ありがとう!」とお礼を述べるピーター。心の深いところに沁み入る、素晴らしい演奏でした。

4. Nightclubbing - Iggy Pop

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 あっという間に、最後の曲になってしまいました。ラストを飾るのは、イギー・ポップの『Nightclubbing』。1977年に発表されたイギーのソロ第一作『The Idiot』に収録された、イギーとデヴィッド・ボウイによる楽曲です。

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おなじみイギーの謎ポーズ

 あまりにも多くのミュージシャンに影響を与えたこの作品。筆者はけっこうなイギー・ファンでもあるので、「ここで、この曲を!」という感激で、もはや、冷静に文章を書くことができません。仕方がないので、どうしてもこれだけはみなさんにお伝えしたいという5つの点を、箇条書きにします。

1. トレントは、この曲をもとにNINの代表曲のひとつ、『Closer』を作った

2. ジョーディは、この曲をもとにマリリン・マンソンの代表曲のひとつ、『The Dope Show』を作った

3. トレントは、デヴィッド・ボウイのおかげで薬物中毒を抜け出すことができた

4. 2020年にNINがロックの殿堂入りを果たした際、プレゼンター役をイギーが務めた

5. その際の受賞スピーチ(→こちら)で、トレントはジョーディに謝辞を送った

 ああ、書いているだけで、胸にこみあげるものが…。ちなみに2019年9月にジョーディが「The Above Ground Benefit Show」というイベントで約二年ぶりにステージに立った際、デイヴ・ナヴァロらと一緒にイギーのバンドであるザ・ストゥージズの『Search And Destroy』をカバーしていました(2021年現在、ジョーディが公の場で演奏したのはおそらくこれが最後です)。

 これ以上、もう何も言うことはありません。あとは、いっしょに思う存分、彼らの『Nightclubbing』の世界に浸りましょう…! あ、もう何も言うことはないといっておきながら、ひとつだけ言いたいことがありました。それは、「ジョーディが歌うところと、(おそらく)演奏後にピーターと握手を交わしているであろう場面が、編集でカットされている」という点です’。ああ、せめてあと5秒だけ長く、ジョーディを映してくれていれば…(涙)。ロブ…惜しいよ、ロブ!

 というわけで以上、悔しくも楽しい、貴重なラジオ・セッションでした。

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ピアノがめちゃうまいトレント

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この曲にお世話になった作曲組

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あっ、ジョーディがマイクに手をのばした!と思ったら…

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非情にもこの直後に切り替わるカメラ

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ピーターのナイトクラビング・ダンス

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真剣な表情で演奏に集中するジョーディ

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気配を消しているスタッフ陣

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みなさん、お疲れさまでした

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イエーイ!

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確実にこのあとジョーディと握手する流れ


参照したサイト:NME.com

★★目次★★

 

ピーター・マーフィーと共演!【セッション】Live in Boston:前置き編(2006年6月23日)

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 ジョーディが、トレント・レズナー率いるナイン・インチ・ネイルズ(以下NIN)の一員として「With Teeth: Summer Amphitheater Tour」と題されたツアーで北米を回っていた真っ最中の2006年6月。ツアー会場のひとつ、ボストンのTweeter Centerで、ちょっと趣向の変わったセッションがおこなわれていました。

 趣向の変わった…というのもこのセッション、なんと、ライブ会場のバックステージにたった15名ほどの観客を入れて、ライブ当日におこなわれているのです。さすがにライブが終わった後ではないでしょうから、日中に開催されたのではないかと思われますが、窓のない室内ということもあり、時間帯が分かりません。この日と合わせて4回おこなわれたラジオ放送のための公開録音のひとつらしいのですが、番組の詳細や放送日時などは不明です。

 NINのYouTube公式チャンネルに全4曲の映像がすべて公開されているにもかかわらず、やたらと情報が少ないこのセッション(というかミニライブ?)。しかしながら、「よくぞこれを映像に残してくれた!」と、ジョーディ・ファンならずとも、NINファンや音楽ファンにはたまらない内容になっています。なぜなら、ジョーディとトレントが、彼らにとって大先輩にあたるバウハウスのボーカル、ピーター・マーフィーと共演しているのです。

 ここで、ピーター・マーフィーっていったい誰?と思ったあなた。

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見よ、このクールさ

 この写真でいちばん前に立っているのが、ピーター・マーフィーです。なんとなく、吸血鬼っぽいですよね…? 吸血鬼っぽい音楽をやっているのかな…と安易な想像をしてしまうかもしれませんが、その想像は当たっています。というのも、バウハウスは、現在「ゴシック・ロック」と呼ばれている音楽、すなわちNINやマリリン・マンソンらがのちに活躍するジャンルの開拓者的な存在なのです。バウハウスの結成は1978年ですが、そのダークで攻撃的、かつ削ぎ落されたシンプルなサウンドは2021年の今聴いても新鮮で、一言でいうと、しびれます。興味のある方は、ぜひ音源や映像をチェックしてみてください。とくにデビュー作の「In The Flat Field」は、前知識がなくても、一曲目から魂を半分どこかに持っていかれると思います。

 このままだとバウハウスについての記事になってしまいそうなので、セッションの話に戻ります。ライブセッションの出演者は、ピーター・マーフィー、トレント、ジョーディ、そして当時NINのプロデューサーであり、2021年現在NINの(トレント以外)唯一のメンバーであるアッティカス・ロスの4人。前述した通り、このセッションは「With Teeth」ツアーの合間におこなわれていますが、実はピーターも、再結成したバウハウスのメンバーとして一緒にこのツアーを回っています。つまり、一緒にツアーを回っている気心知れた4人による演奏というわけです。

 ただし、ジョーディがここに参加しているのは、やや異色といえるかもしれません。なぜなら、NINのベーシストであるジョーディが、このセッションにはギタリストとして参加しているのです。当時のNINのギタリストはアーロン・ノースですから、自然に考えると「トレントがベース、アーロンがギター」という選択肢もあったはずです。あるいは「トレントがギター、ジョーディがベース」パターンもありますよね。アーロンが暴れる危険性や、演奏する曲との相性を考えて、トレントがジョーディをギターに抜擢したのでしょうか。あるいは、トレントが単にベースを弾きたい気分だったのでしょうか。真相は謎です。

 さて、映像に入る前に、簡単にジョーディ&トレントとピーター・マーフィーの関係を見ておきましょう。まずは、ジョーディ。なんといっても下の写真を見てもらうのが、いちばんてっとり早いでしょう。

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顔がまだ子供

 お気づきでしょうか。バウハウスTシャツを着ています(笑)。1989年頃(18才頃)のジョーディです。時期的に、ジョーディがマリリン・マンソンの前に在籍していたAmboog-A-Lardのライブ中の写真ではないかと思います。もう1枚、こんな写真も見つけました。

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だいぶはしゃいでます

 ちょっと見づらいですが、肩車されているのがジョーディ。たぶん上の写真と同時期に撮られたもので、一緒に映っているのはAmboog-A-Lardのメンバーです。よく見ると、ここでもバウハウスのタンクトップを着ているんです。この2枚の写真だけで、どれだけジョーディがバウハウス好きだったかが伝わりますね! この頃すでにバウハウスは解散して数年経っているはずなので、もしかしたら後追いでファンになったのかもしれません。というわけで、少年時代に「バウハウスの一ファンだった」ジョーディです。

 一方、同時期のトレントは、Tシャツを着て無邪気にはしゃいでいるジョーディに比べると、一歩先を行っています。というのも、ピーター・マーフィーの1990年のツアー「Deep Tour」のオープニングアクトとして、NINのデビューアルバム「Pretty Hate Machine」のツアーをおこなっているのです(ややこしいですが、ピーターの前座としてNINのツアーをしたということ)。二人が一緒に映っている写真が見つけられなかったので、雰囲気だけでもつかむために1990年頃のトレントの姿を見てみましょう。

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Photo by Larry Busacca

 何か叫んでいます。この時トレント、25才頃です。デビューして1~2年しかたっていないにもかかわらず、すでに「トレント・レズナー感」を漂わせています(トレント・レズナーですから当然ですが…)。オープニングアクトとはいえ、1990年の時点でピーターとすでに同じステージに立っていたわけで、今回のセッション開催時(2006年)には、二人は知り合って少なくとも16年が経っていることになります。

 ちなみにマリリン・マンソンは1994年にNINのオープニングアクトを務めているので、ジョーディとトレントも知り合ってから約12年。ピーターほどではないですが、やはり長い付き合いです。

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ぼくたち、なんだかんだ長いっスね

 こうやって歴史を振り返ってみると、かつてピーターのオープニングアクトを務めたトレント、そしてトレントのオープニングアクトを務めたジョーディという、音楽的にはある意味、3つの世代にわたる共演であることが分かりますね。

 しみじみ思いをはせていたら、映像に入る前に、文章が長くなってしまいました。いったんここで区切ります。前知識はこれぐらいにして、さっそく映像を見てみましょう! 次回へつづく。

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意外と先輩たちと相性がいいトレント

★★目次★★