★SPACEGHOST★

Jeordie White(a.k.a.Twiggy / Twiggy Ramirez)を知るためのブログ。時空をさかのぼって不定期更新中。May the force be with you!

「rockin'on」1999年10月号

f:id:ankodama666:20210706194829j:plain

 トレントが何か言いたげにじっとこちらを見つめる表紙に輝く、TWIGGY RAMIREZの文字! 雑誌「rockin'on」1999年10月号に、トゥイギー単独のインタビュー記事が掲載されていました。カラー4ページ(見開き2ぺージ)とページ数こそ少ないものの、米粒一歩手前レベルの小さな文字がぎゅうぎゅうに詰まっていることもあり、読みごたえは十分です。

 当日は素顔で現れたというトゥイギー(※取材時の写真はなし)。「ビューティフル・モンスターズ・ツアーを明後日にひかえた日の午後」とあるので、おそらく1999年8月5日に日本国内で取材がおこなわれたようです。トゥイギーというより一人のアーティスト、ジョーディ・ホワイトとして、リラックスして取材にのぞんだのであろう様子が記事からもうかがえます。

 内容としては、彼にとって表現やパフォーマンスがどんな意味をもつのか、そしてアーティストとしての原点はどういうところにあるのかといった話題が中心。ざっくりいうと、インタビュアーの「あなたはいいパフォーマンスをするのに目立ちたがらないし、それに不満を感じている様子もない。なぜ?」という疑問に答えています。子供時代の話も多く、「ごっこ遊びをする時、人よりかなりマジだった」というのが笑えます。想像つきますね(笑)。やや難解な質問が多いのが気になりますが、本人はとくに動じるでもなく、質問の意図を確認しながら分かりやすい言葉で答えているのが印象的です。

 特筆すべきは、社会に対する視線。このインタビューの数か月前に起きたコロンバイン高校乱射事件にも触れているのですが、バッシングやライブ中止など過酷な状況にさらされた直後(あるいは真っ只中?)にもかかわらず、その苦労は一言も語ることなく、異様なほど冷静な目で現代社会を分析しています。このあたりの聡明さも、マンソンと気が合うところなのでしょうね。

 雑誌自体は、古本屋などで定価前後で出回っているため、比較的手に入れやすいと思います。 

 記事に使われている写真が非常に美しいのですが、背景がほぼ黒、しかも光沢がある紙で読むたびに指紋がつくので、くれぐれもポテトチップスを食べながら読まないように気を付けてください(笑)。

f:id:ankodama666:20210707194310j:plain

-------------------------

「rockin'on」1999年10月号(1999年10月1日発行)

発行:ロッキン・オン

インタビュー:宮嵜広司 通訳:高見展

--------------------------

 ★★目次★★

足、茹でないよね?【雑誌】「BIKINI MAGAZINE」1998年12月号

f:id:ankodama666:20211003192625j:plain

 間違って、トゥイギーとは関係ない雑誌の画像を貼りつけてしまった…わけではありません。「Bikini Magazine」という男性誌の1998年12月号にて、トゥイギーが男性コメディアンといっしょにビューティサロンに爪と足のお手入れにいく、という冗談のような企画に登場していました。サロンで施術を受けながらの会話が妙に面白く、彼の活動の原点が垣間見えるような話題も多く出ていたので、紹介したいと思います。

※2021年現在、筆者が現物を入手できていないため、複数の情報で確認をとった上で、こちらの記事を翻訳しました。

---------------------

ザ・“キューティクル”・ピープル

ボブキャット・ゴールドスウェイト(コメディアン)とトゥイギー・ラミレス(ミュージシャン)、芸を磨く日常から離れて爪のお手入れへ

 執筆者:Mark Blackwell

f:id:ankodama666:20211006021405j:plain

 ボブキャット・ゴールドスウェイトと、トゥイギー・ラミレス。別々の分野で活動する二人には、多くの共通点がある。まず、自分たちが持つ奇抜なイメージーーとがっていて過激で、恐ろしく思えることすらある――を徹底的に追求していること。それから、深夜のトークショーを文字通り炎上させた点だ。ボブキャットはジェイ・レノのゲスト用椅子に火をつけ、トゥイギーは「ジョン・スチュワート・ショー」のラストで、マリリン・マンソンと一緒にステージを燃やした。二人は、ともに仕事中に怪我を負ったという経歴の持ち主でもある。トゥイギーはメキシコシティでのコンサート中に飛んできた破片で頭を切り裂かれ、ボブキャットはプラスチック製のピンク・フラミンゴに巻き込まれるという信じられない事故で目に怪我をした。それだけではない。ボブキャットが(本人はポリス・ロボトミーと呼んでいる)有名な映画シリーズ『ポリス・アカデミー2』『ポリス・アカデミー3』『ポリス・アカデミー4』で法執行機関の世界を嘲笑したのに対し、トゥイギーも、権力に反抗し『ブレイキング・ザ・ロウ』(法律を破る)の大ヒットで知られるジューダス・プリーストの長年の大ファンなのだ。彼らにこれほど多くの共通点があるのは、単なる偶然だろうか?

 ボブキャットは現在、『Bobcat's Big Ass Show』(FX)という変てこな番組でホストを務めている。一方トゥイギーは、マリリン・マンソンの新作アルバム『The Mechanical Animals』(『The Dope Show』ほか収録)で異彩を放っている。つまり、ボブキャットもトゥイギーも、ありふれた並のエンターテイナーではないということだ。こんなふうに休みなく新境地を開拓していれば、二人の手はどうしても汚れてしまうに違いない――もちろん、足もだ。どんなに突飛なことをするにせよ、人というのはいつでも身だしなみを整えて、清潔にしていなければならない。彼らの手がなぜ汚れたのかはさておき。

 そこで今回、ボブキャットとトゥイギーに、バーバンクのストリップ・モールにある美容サロン「Cali Nails」で、素敵な午後のひとときを過ごしてもらうことにした。ボブキャットの娘の爪が割れてしまったのを直すついでに、最近知り合ったばかりという二人に、マニキュアやペディキュアをしながらお互いのことをもっと知ってもらおうと考えたのだ。さっそくサロンに向かうボブキャットとトゥイギーに合流してみると…。

トゥイギー(以下T):それじゃ、ぼくたち指の爪をやってもらうんだね。

ボブキャット(以下B):私は、足をやらなきゃいけないらしいよ。

T:足?

B:ああ、そう聞いたよ。私のガールフレンドの行きつけの店なんだ。いま、娘と一緒に店にいるよ。私は初めてだけどね。

T:ぼくの足って…怖いよ。最初に、あなたの足を茹でたりするのかな?

店に入ったボブキャットとトゥイギー、手袋をはめる。マスク姿のベトナム人女性が二人を隣り合った席に案内。ボブキャットのフットトリートメントが始まる。トゥイギーは靴を脱ぐのが少し恥ずかしいらしく、マニキュアから始めることに。店員がトゥイギーのキューティクルをケアする間、足担当の店員はボブキャットに水の入った長方形のバスタブに足を入れるよう指示している。

B:これって、誰かが使った後の水じゃないよね? 新しい水?

店員:もちろん、新しい水ですよ。

B:ああ、よかった。使い古しの水なら、料金は安くなるのかい? (靴を脱ぎながら)ふー! ちょっとニオイがしちゃうね。

――初めての経験ですか?

B:ああ。すごく緊張するね。いま、ペディキュアの処女膜を破ってもらってるところだよ。

T:ぼくの足って、かなりひどいんだ。

B:それはどうかな。フレッド・フリントストーンと試合で勝負だね。

T:(カメラマンに向かって、少し緊張しながら)ぼくたちの足の写真を撮るつもりなの?

B:(バスタブに足を入れながら)うわー! ちょっと!

店員:大丈夫ですか?

B:大丈夫じゃないよ。バスタブが振動するなんて! わあ、この中にズボンを脱いで座ってみたいね。小さなジャグジーみたいだな。

店員:(トゥイギーに向かって)色は塗りますか?

T:うん。そうするよ。

店員:では色を選んでください。

トゥイギーはマニキュアの色を選び始め、店員はボブキャットの足をヘチマのようなもので磨き始める。

B:おいおい、なんだよ!

T:彼、何をされてるの?

店員:基本的には、足にサンドペーパーをかけているんですよ。

T:どんな感じ?

B:(クスクス笑いながら)変な感じだよ。ぎゃー! (店員に向かって)きみ、私に怒ってないよね?

T:あとで、足の指を吸われちゃうかもね。

B:トゥイギー、守れない約束はしちゃいけないよ。

ボブキャットの足はピカピカになり、爪には光沢のある透明なネイルポリッシュが塗られている。トゥイギーは指の爪に紫とピンクのネイルを交互に塗ってもらうことに。

B:(店員に)何色が好き?

店員:さあ。

B:きみ、私にここから消えてほしいのかい?

T:色を選ぶんだよ、ボブ。ぼくは二色選んで、一本ずつの指に塗ったよ。『We're Not Gonna Take It』のビデオに出てくるディー・スナイダーみたいにね。

B:ハッピーな色がいいね。セラピーで使われるようなやつ。イエローとか…。

T:オレンジは好き? ここにオレンジがあるよ。

B:よし、オレンジとイエローにしようか。これってかなりシュールだね。自分でやることを他の人にやってもらうなんて…。L.A.に尻を拭いてくれるサロンがあったとしても、驚かないね。

T:お尻拭きサロン? (笑いながら)お尻を拭いてもらうってこと?

店員:爪の長さがそろってませんね。短く切りすぎですよ。

B:短く切りすぎ?

店員:ええ。

B:それって、私が精神的な問題を抱えてるってことかい?

店員:ええ、そうですね。

ボブキャットが整えた爪をイエローとオレンジに塗られている間、トゥイギーは悲しそうな顔で、靴を脱いでペディキュアをしてもらうことに同意。

T:ぼくの足って、世界一醜いって言われてるんだ。今日はそこまでじゃないけど…。毛深いんだよ。毛むくじゃらのソックスなんて嫌だよね? 来る前に、剃ってくればよかった。

店員がトゥイギーの足に取りかかる間、ボブキャットは箱に入った爪用の小さな金色の文字を選んでいる。

B:“TRY GOD(神に祈りを)”にしようかな。

T:それは何? (箱を覗きながら)わあ、すごい!

B:面白いよね。一番人気なのはどれだい?

店員:お好きなのをどうぞ。

B:みんな、普通はどれを選ぶの?

店員:“LOVE”が多いですね。それか、“#1(ナンバー1)”。

B:ナンバーワン!? その人たち、うぬぼれてるんじゃないか。それじゃ、#2(ナンバー2)はあるのかい?

T:ナンバー2って…(笑)。

店員:わたしは、“#1 Lover(恋人No.1)”と“#1 Honey(愛しい人No.1)”をつけてますけどね。

B:それじゃあ私は、“#1 Honey(愛しい人No.1)”にするよ。この辺りで「愛しい人No.1は誰?」という議論が起きた時に備えてね。親指を突き出して、議論に決着をつけてやるとしよう。

T:ぼくは、それ全部つけたいよ。接着剤でくっつけるの?

B:ああ。

T:それじゃ、あっという間にはがれちゃうね。

B:これって、どれぐらいもつんだい?

店員:長もちしますよ。

B:いや、このジョークは3~4時間もてばいいんだけどね。

T:ぼくは、“Jesus(ジーザス)”にするよ。

トゥイギーが「ジーザス」のパーツを選んだのを受け、ボブキャットは、1992年*1に彼が監督・脚本を務めた傑作映画『Shakes the Clown(邦題:殺人ピエロ狂騒曲)』の続編の可能性について語り始める。

B:『ティーン・ジーザス』って映画をつくりたいんだ。『エルサレム青春白書』みたいな感じでね。ジーザスの怒りに満ちた10代を描くのさ。

ーー聖書に書かれていない時代を描くってことですか?

B:ああ、そうさ。聖書には書かれてないけどね。彼の反抗期についての疑問に答えるよ。

T:ティーン・ジーザスか。いいね。

B:ジーザスは体育会系の奴らにいじめられるけど、プールの水面を歩いて水泳大会で優勝するのさ。

あとは乾燥を待つばかり。ボブキャットとトゥイギーに、小さな扇風機が用意される。イエローとオレンジに塗られたボブキャットの爪。親指には金色のチャーム“Try God”と“#1 Honey”が付いている。トゥイギーの足と手の爪は紫とピンクで、小指には “Jesus”の文字。ネイルポリッシュが固まるまでの間、もう少し二人に話を聞こう。

――二人は知り合ってどれぐらいになるんですか?

B:ついこの間だよ。何度か会って様子を見てるんだけど、どうやら付き合うことになりそうだね。

――出会いは?

B:ビリーを通じて。

T:ビリー・コーガンのことだよ。ある晩、ビリーと一緒にボブのステージを見に行って、その後、一緒に遊んだんだ。

――あなたたちの活動の共通点はなんだと思いますか? 限界に挑戦しているという点は、間違いなく共通していますよね。作品が少々物議をかもすところも…。

B:そうだね。皮肉やおふざけの要素は似ていると思うよ。

T:ユーモアのセンスかな。

B:きっと、それだね。もし自分の人格についてちゃんと考えていたら、週末にデトロイトのボウリング場でふざけたりしてないだろうからね。自分が人にどう見られるか、あまり気にしてないって感じかな。といっても、「知るかよ!」みたいなことじゃないけどね。怒ってるんじゃなくて、ただ楽しんでるんだ。そこが私たちの共通点じゃないかな。人からどう見られるかっていうことに、あまりとらわれていないように思うよ。

T:ぼくもそう思う。

――自分の人格の中に、ユーモアを見出しているということですか?

T:そうだね。

B:きみのことを怖がっている人もいるよね。それって笑えるよ。きみを見て、恐怖で震えあがってるんだから

T:あなただって、怖がられてるけどね。

B:そうだね。私に傷つけられたり、気分を害されたりするんじゃないかと思うんだろう。

T:今のボブキャットって、自分の殻を破りつつあると思うんだ。あなたが作った作品の中で、ボブキャットというキャラクターがもう一度自分自身を見出してるんじゃないかな。

B:そうかもしれないね。

T:かつては、あなたがボブキャットだったわけだよね。それって、ぼくとほとんど一緒だよ。ぼくのバンドで、その…自分のキャラクターを演じてるぼくと。

B:そう思うよ。

T:ほら、前に話してくれたよね? ときどきあなたは、自分の古いスタンダップ・コメディ作品を聞き直すけど…。

B:自分がいったい何を言ってるのか、自分で理解できないって話だね。

T:そう。自分なのに「あいつは誰だ?」みたいな感じになるんだよね。それって、ぼくたちも同じなんだ。自分たちのイメージが音楽を上回ってしまう危険があるんだよ。前作『Antichrist Superstar』はイメージがあまりにも強すぎたから、今回のアルバムでは、自分たちを音楽的に証明しなくちゃいけなかったんだ。

B:私のスタンダップ芸と同じだね。

T:今のあなたって、キャラクターを演じていた頃よりもさらに面白くなってると思うな。もちろん、昔のクレイジーなキャラクターが「ああああーーー!」って叫ぶのを期待してる人もいるだろうけどね。

B:まあしかし、私がやっていたスタンダップは、誰も聞き取れなかったと思うよ。半分ぐらいは、自分でも何を言っているのか分からなかったね。初期のスタンダップ芸では、スタンダップをやりたいとすら思っていなかったんだ。スタンダップそのものをジョークにしていたのさ。ステージで魚をさばいて「おやすみ!」って言うのが、私にとっての芸だったんだ。スタンダップ・コメディアンになってからも、あいかわらずスタンダップをジョークにしていたよ。そして気づいたら今、より自分に近いことを――よりおかしなことをやっている。面白いことに、賞金争奪戦みたいなくだらない番組をやってると、“スタンダップをやらなくてもいい”っていう素晴らしい気分になれるんだ。人にどう見られるかなんて、もう全然気にならないよ。スタンダップをやっていた頃は、自分が嫌いな芸を自分でやってしまうのが怖くて、つまらない、薄っぺらいことしかできなかったんだけどね。

――トゥイギーというキャラクターを脱ぎ捨てて、あなた自身に戻るのは簡単ですか?

T:ぼくの場合、バンドが生んだトゥイギー・ラミレスというキャラクターになって自分自身から離れることで、より自分を知ることができたような気がするよ。まだ、完全に知りつくしたわけじゃないけどね。橋の向こう側から自分を見るようになるというのかな。役を演じてる俳優みたいなものなんだ。

B:音楽以外の部分ばかりが注目されることに、不満を感じることはないのかい?

T:ないよ。なんでかっていうと、そういう音楽以外の部分をロックンロールに取り戻すっていうのが、ぼくたちのバンドの目的だったからなんだ。ぼくたちが出てきた時期はグランジが大流行だったんだけど、“おれたちにイメージはない”っていうイメージを持ったバンドばかりだったよ。

B:なるほどね。

T:で、みんな、ロック・スターになりたくないとか、ロック・スターはすごく惨めとか言ってメソメソしてるんだ。なにが惨めなのか分からないよ。お金を稼いで、世界中を旅して、女の子に囲まれて…。そういうことの、いったいなにがダメだっていうんだい?

――ボブキャットという制御不能なキャラクターから脱却するのは、どうでしたか。

B:自分の言動に責任を感じてない時期もあったよ。私ではなく、他の誰かがやってるみたいだったんだ。いまは、ちゃんと責任感を持ってるけどね。親しみやすいバージョンのボブキャットだよ(笑)。

――でもあなたは、もっと攻撃的になることもできますよね? 逆に、もう少しソフトなキャラクターにすれば、さらに多くの視聴者に届く可能性だってあります。

T:それって紙一重だと思うよ。何かを伝えるなら、少なくともこちらが何を言ってるかが聞き取れないと意味がないよね? ある程度は保守的である必要があるんだ。そうじゃないと、攻撃的であるということ自体が目的になって、好きなだけ攻撃的になれてしまうからね。もしマリリン・マンソンがデスメタル・バンドだったら、誰も聴いてくれないか、聴いてくれたとしてもごく少数だと思うよ。それって、すでに改心している人に向かって説教するようなものだよ。そのあたりは賢くやらなくちゃね。

B:そうだね。といっても私の場合は、自分の作品を誰かに聞いてもらおうなんて思ってなかったんだけどね。ただムカついていて…。

T:みんなに自分の存在を知ってもらいたかったんだね。

B:その通りだよ。友人のロビン・ウィリアムズと、自分たちの中には同じ悪魔がいるっていう話をしてたんだ。でも私と違って、彼はみんなに好かれたいと思ってる。私の場合はどういうわけだか、世間の人たちがたとえ魚の卵を好きだったとしても、知るかって感じなんだ。それよりも、ただ認めてもらいたかったんだよ。

T:うん、分かるよ。

B:私にとっては、そっちのほうが重要だったのさ(笑)。まあ残念なことに、私よりもロビンの方が、ちょっとばかり稼いでるけどね。

――テレビ番組『Bobcat's Big Ass Show』について教えてください。編集時の修正やカットは多いんですか?

B:いや、カットされることは滅多にないよ。大変なこともあるけどね。いけ好かない出場者がいて、彼の秘密は、“精子を提供しようとして二度断られた”というものだったんだ。私は「誰のケツ(Ass)に提供しようとしたんだ?」と思って、そのジョークを楽屋で言おうとした。「だって、ケツっていう単語は番組名にも使われてるじゃないか」ってね。そうしたら彼らは、「いや、それは番組の全体的なアイディアとしてだから…」って言うんだよ。どうやら、NGなのは二つだという話になったんだ。ジーザスと…。

T:分からないよ。何が問題だっていうの?

B:おかしな話だよね。ジーザスは大した奴だよ。それと、ドラッグもね。

T:変な話だね。ぼくたちの前のアルバムは宗教的な要素が強かったんだけど、今回はドラッグのことを扱ってるんだ。前作のとき以上に、問題が起きそうな気がするよ。

――ボブキャットはティーン・ジーザスという映画を撮りたいと言っているし、あなたの最新シングルは…。

T:『The Dope Show』(麻薬ショー)さ。

――で、今、あなたの小指には「ジーザス」の文字があるわけですね。

T:このジーザス・ネイル、気に入ったよ。素敵だね。

B:ジェラシーを感じてしまうよ。きみの爪のほうがいいね。

T:ぼくの爪のほうが好きなの?

B:ああ、まあね。息がつまりそうだ。プレッシャーが大きすぎたよ。きみの色のほうがいいよ。

T:あなたのも素敵だよ。シャツの色に合ってる。ぼくの爪は、ぼくのシャツの色に合ってるね。

B:きみのほうが、ファッションセンスがあると思うよ。

――またこの店に来たいですか?

T:うん、定期的に来ようかな。これから毎週ね。

B:毎週木曜の午後は、二人ともここで過ごすことになるだろうね。

---------------

 以上です。最後、二人でお互いのネイルを褒めあっているのがほほえましいですが、さて、その後サロンに通う習慣は定着したのでしょうか(笑)。マッサージの効果ですっかりリラックスしたのか、マリリン・マンソンというバンドや、その中でトゥイギーを“演じている”ことについて、彼自身がどう考えているのかを隠すことなく語っている珍しいインタビューでしたね。まあ傍目には、男二人が初めてのネイル&フットケアにチャレンジしているという不思議な光景だったのでしょうが…。ボブキャットは、年齢的にはトゥイギーの9歳上のようです。映画だけでなく、テレビドラマやアニメの声優としても活躍しています。

 記事がボリュームたっぷりなので、補足は少しだけにとどめましょう。まず、ラストでステージを燃やした「ジョン・スチュワート・ショー」は、1995年6月にマリリン・マンソンが出演したテレビ番組。『Lunchbox』を演奏中、MV同様にランチボックスを燃やしています。「Marilyn Manson - Jon Stewart Show」で検索すると、動画サイトで映像が見つかると思います。燃やす直前の、トゥイギーのホラーな動きにもご注目ください。

f:id:ankodama666:20211020221713j:plain

「ジョン・スチュワート・ショー」出演時の写真

 自分の足が毛深い…と恥ずかしがるトゥイギーにボブキャットが勝負を提案した「フレッド・フリントストーン」は、石器時代を舞台にしたアニメーション『原始家族フリントストーン』の主人公ですね。毛深さでは負けないだろうということで名前が出たのだと思われますが、フレッド・フリントストーンの画像を検索してみると、意外なことに、手も足もツルツルでした(笑)。

f:id:ankodama666:20211020222350j:plain

ムダ毛なし

 それにしても、トゥイギーが自分の足をみっともないと思っているだなんて、驚きですよね。短い丈のワンピースから伸びるトゥイギーのあの足は、もし“ミニスカートが似合う足を持った男性ミュージシャンNo.1”を選ぶアンケートがあったら、間違いなくNo.1かNo.2にランクインするでしょう(そもそも条件を満たす候補者がものすごく少なそうですが…)。本人の認識と、他の人から見える姿というのはやはり違うものなのでしょうか。

 ディー・スナイダーは、トゥイギーが愛するトゥイステッド・シスターのボーカルです。この『We're Not Gonna Take It』のミュージックビデオ、物語仕立てになっていて最高に楽しいので、脳みそを空っぽにしたい気分の時に、ぜひ観てみてください。

f:id:ankodama666:20211020224757j:plain

中央がディー・スナイダー

 ここではおそらく爪をピンク色に塗っているっぽいディー・スナイダーですが、のちにトゥイギー(というかジョーディ)が結婚した際、なんと結婚式の司会を務めていました。きっとプライベートでも親しかったのでしょうね。

 というわけで、後にも先にもないトゥイギーの「ネイルサロン体験記」でした。悲しいことにこの雑誌、現在、日本での入手はほぼ不可能です。海外のネットオークションではたまに、高値で取引されている模様。表紙の美しいジェニファー・ラヴ・ヒューイットが価値を上げてしまっているのか、それともトゥイギーたちの爪のお手入れ記事が珍品扱いされているのか…。トゥイギーのジーザス・ネイルと、ボブキャットの「愛しい人No.1」ネイル、ぜひ観たかったですね。

 悔しさはつのりますが、ようやく探し出した画像(小さいですが…)を最後に紹介して、今回の記事を締めくくりたいと思います。

f:id:ankodama666:20211020232423j:plain

きみたち、いま写真撮ってないよね?

★★目次★★

*1:正しくは1991年のようです。

トゥイギー単独表紙&ロングインタビュー【雑誌】「Guitar World」1998年11月号 (後半)

f:id:ankodama666:20211109033201j:plain

「Guitar World」1998年11月号のインタビュー後半です。(前半はこちら

-----------------------

――『Fundamentally Loathsome』のギターソロは、誰が弾いているのでしょうか。

T:ジミー(Zim Zum)だよ。ぼくはギターソロの弾き方は知らないんだ。ぼくが弾くのは、ほんのちょっとしたメロディだけ。ビートルズのメロディみたいなやつだよ。

――『Antichrist Superstar』では29トラックのギター音が使われていましたが、今回も同じような仕掛けが?

T:それはないね。ギターはもっとアコースティックな感じだよ。今回のアルバムは、前ほど音を詰めこみすぎないようにしたんだ。きみが言った通り、『Antichrist Superstar』では29種類のギター音を使ったけど、そのせいで、他の音が目立たなくなってしまった。ギターの音自体は素晴らしかったけどね。今回は、ギター29本を同時に鳴らしたよりももっとデカくて、ヘヴィなベースの音を使ってるんだ。ライブ用の部屋にセットした巨大なPAシステムを使って出したんだけど。サブウーファーから、ビル全体が揺れるぐらい大きな音が出てたよ。

――ベースの種類は?

T:(ギブソンの)EBOか、(フェンダーの)プレシジョン・ベースかな。ほとんどのギターパートは、レスポール1本で弾いたんだ。レコーディング前はギターを持ってなかったけど、今は25本持ってるよ。それまでは何でもよかったんだ。今回のアルバム制作が始まる前に映画のサウンドトラックをたくさんレコーディングしたんだけど、その時は、スピーカーが内蔵された小さなフェルナンデスを使ってたよ。エフェクターにつなげられる、すごく小さなおもちゃのギターなんだ。その後はギターが大好きになっちゃって、バカみたいに買いまくったよ。今じゃ、たくさんの板っきれを所有してるってわけさ。

――でも、サウンドの核になっているのはレスポールなんですね。

T:そうなんだ。ほぼレスポール1本。あとはSGを何本か、ちょこちょこ使ったかな。前のアルバムでは、いくつかの曲でチューニングをE♭かDに変えたけど、今回は、ポップスでよく使われるキーをたくさん使ってるんだ。だから、前回ほどチューニングの種類は多くないよ。前のアルバムの時は、自分の演奏に合わせてギターの方を調整したんだけど、今回はギターに合わせて自分の演奏を調整したってことだね。

――『I Wanna Disappear』の、ファズのかかったベース音が好きです。

T:そうそう、あれこそコンピュータの音とライブ感が一体になったいい例だね。リズムとベースは、全部生演奏なんだ。でもコンピュータで作ったベースとか、マイクを通して録ったギターの音、それとマイクを通さず直に録ったギターの音も混ざってるよ。

――ショーン・ビーヴァンは、あなたが大量のアンプを吹き飛ばしたと言っていました。

T:ああ、そうなんだ。レコーディングについて説明すると、何かをセッティングするのにかかる時間は二日間。で、どこかのパートを5分演奏したと思ったら、何かが吹き飛ぶんだ。仕事としては、演奏の方が楽だよ。

――スタジオで起きたクレイジーな出来事を教えてください。

T:一度、黒人の女性コーラスたちと、コーラスをやるポルノ女優たちがやって来たことがあるよ。同じ日に来たんだ。『I Don't Like The Drugs (But The Drugs Like Me)』っていう曲なんだけど、最後のギターソロを弾いていたのは、ぼくの友達のデイヴ・ナヴァロだったんだ。さらに、(70年代のティーン・アイドル)レイフ・ギャレットがスタジオに入ってきてさ。コーラス隊とポルノ女優、デイブ・ナヴァロ、レイフ・ギャレットが一堂に会してるなんて、かなり奇妙な光景だったよ。

――『I Don't Like The Drugs (But The Drugs Like Me)』は完全にディスコ・ナンバーですね。KC&ザ・サンシャイン・バンドっぽくて、素晴らしい!

T:あの時代の空気を捉えた曲を作りたかったんだ。つまり、ボウイやストーンズがいた、70年代の“コカイン・ディスコ・ロック”だね。ロックバンドがこぞってディスコ化した時代だ。エアロスミスもそうだし、KISSも『Dynasty』でディスコに走ったよね。ぼくが育ったのは、そういう変な時代だったんだ。スタジオ54にコカイン、そしてロックがディスコに変わって…。映画『ブギーナイツ』の世界さ。ぼくの記憶の中に、そういうものが残ってるんだ。

――キャッチーさもあります。この曲が大ヒットしなかったとしたら、それは世の中がおかしいってことですよ。といっても、アメリカのラジオ局の半数はこの曲をかけないでしょうけど。

T:これまでだって、ぼくたちの曲がラジオで大々的にかかったことなんてないよ。でも今は、たくさんの人が『The Dope Show』に注目してくれてるんだ。

――今回はラジオ受けを狙ったのでしょうか?

T:ううん。ラジオ受けなんか狙っていたら、今頃ぼくたちのサウンドはシュガー・レイみたいになっちゃってるよ。で、解散だな。それより、ドラッグについてもう一つ話してもいい? 最近、ケタミンを試してるんだ。きみはやったことある?

――いいえ。

T:馬用の精神安定剤なんだけど、一定量を摂取するとかなり変なことになるんだ。アシッドより狂った感じで、コカインとも違う。とにかく、精神的におかしくなっちゃうんだよ。一度、デイヴ・ナヴァロに電話して家に迎えに来てもらったことがあるよ。部屋がどんどん狭くなって、自分の部屋から出られなくなっちゃったんだ。それで、デイヴに迎えに来てもらって、彼の家に連れて行ってもらったよ。

――ドラッグでおかしくなった上に、デイヴ・ナヴァロの家で骸骨や柩に囲まれるなんて、私はご免です。気になりませんでしたか?

T:(即座に)全然。もし彼が銃でも持ってたら、ちょっと怖かったかもしれないけどね。それはともかく、次の日の朝、デイヴの家にはアイアン・メイデンのデイヴ・マーレイが来ることになってたんだ。ぼくたちがライブに行けなかった代わりに、彼が来てくれることになって。それなのに、ぼくたち寝過ごしちゃったんだよ。デイヴ・マーレイが中に入ろうとドアをノックしてる間、ずっと眠ってたんだ。

――ザ・フーのキース・ムーンが、馬用の精神安定剤を飲んでステージで気絶した話は有名ですね。

T:あれってそうだったんだ? とにかく最高の薬だよ。初めて試したときは、白いからコカインだと思ったんだ。そしたら、寝室から出られなくなっちゃった。精神安定剤を飲むと、幽体離脱みたいに、神経系が潜在意識かなにかと分離するよね? アシッドで初めてトリップしたときに似てる。初めてアシッドを試したときは、最高のトリップだったんだ。人生が変わったよ。あれと同じだ。ネジが緩んじゃったような感じで、どういうわけか幸せな気分になるんだよ。セラピーみたいなものなんだ。最後に飲んだのは二週間前なんだけど、あれからずっと、ネジが緩んじゃってる。以前は、朝起きると憂鬱で、何もする気が起きなかったんだ。今は、心が楽になったよ。もう惨めな気分じゃないんだ。不思議だよね。

――ロックスターが「今は本当に幸せ」とか「自分を見つけた」と語る場合、たいてい、その後に「ドラッグはやめて、ヨガと運動をやってる」って言葉が続きますけど…。

T:(ぞっとした顔で)ない、ない! ぼくは絶対そんなこと言わないよ。好きなだけドラッグの話をするべきだ。お金と女の子、ドラッグがすべてさ。結局はね。お金、女の子、ドラッグ。で、最後が音楽だね。お金があれば、ドラッグもやれるし、女の子とも…。

――まずはお金だと。

T:ええと、ドラッグをやっても、お金があれば誰にもとがめられないし、負け犬になることもないんだ。そういう場には、たいてい女の子もいるしね。で、もしお金があってさらにロックスターなら、ドラッグをやってても誰からも見下されたりしない。許されるんだ。それって、ロックスターの特権のひとつなんじゃないかな。そういうものがあれば、音楽だって自由に作り続けられるってわけさ。

――マリリン・マンソンの映画が作られると聞きましたが。

T:計画はあるよ。まだ話せる段階じゃないけどね。『Antichrist Superstar』の時も映画は作りたかったんだけど、ある意味、やらなくてよかったと思ってる。今回のアルバムの方が、映画との関連性が高くなりそうだから。

――KISSも映画を作ってるらしいですよ。

T:え? 『Kiss Meets The Phantom Of The Park(邦題:地獄の復活)』の続編ってこと? そういえばジーン・シモンズに、“今日はマリリン・マンソンにおれたちの姿を見せつけにやってきたぜ”って言われたことがあったな。すごいセリフだよね。まわりからは“あんなこと言われて、怒らないの?”と言われたけど、怒るわけないよ。それどころか、最高にうれしかった。KISSがぼくのために戻ってきてくれたなんて! ジーン・シモンズは“お前たちにおれたちの姿を見せてやるぜ。みんなに注目されるように、ちょっとはメーキャップしろよ”とか言ってたけど、彼らの方こそ、『Animalize(邦題:アニマライズ)』の頃に戻るべきだよ。それが彼らのやるべきことなんだ。KISSはもう一度『Heaven's On Fire』をやるべきだよ。それから『Lick It Up(邦題:地獄の回想)』と、『Animalize』もね。

――あなたはかつて、フロリダのデスメタル・シーンで活動していましたね。今もあのシーンを追いかけているのでしょうか。

T:ううん。だって、もうフロリダに住んでないからね。ぼくのルーツは今でもあそこにあるけど、当時のぼくにはそれしかなかったってだけなんだ。ぼくの世界は、これぐらいの大きさだったよ(といって両手で直径8cmの円を作る)。今もデスメタルは聴くけど、フロリダのバンド限定ってわけじゃないよ。今、いろんなバンドが再結成してるよね。出身地は違うけど、ヴェノムとか(編集部注:ヴェノムはイギリス出身)。ヴェノムは、パンテラが彼らのTシャツを着たりしたことで知られるようになったんだ。それってクールだよね。中学3年生の時、デニムのジャケットにヴェノムのバックパッチをつけてたんだけど、そのせいでぼく、みんなに嫌われちゃったよ。あのワッペン、ずっと持ってればよかったな。今でも着たいよ。

――ギターを始めたきっかけは?

T:ある日、家でヴァン・ヘイレンのファースト・アルバムかなにかを聴いてたんだ。気をつけてほしいんだけど、ぼくが聴いてたのはファーストの『Van Halen(邦題:炎の導火線)』だよ。時期的に、彼らはすでに『1984』を発売してたんだけどね。自分が影響を受けたものを隠したがる人が多いけど、ぼくはメタルで育ったのさ。モトリー・クルーの『Shout At The Devil』とアイアン・メイデンの『Piece Of Mind(邦題:頭脳改革)』がきっかけで、ロックスターになりたいと思うようになったよ。そして13歳の時、母がぼくの部屋に入ってきて、“ギターかドラムセットを買ってあげようか?”って言ってくれたんだ。ギターが欲しいって答えたんだけど、大正解だったね。レッスンを受けたりはしなかったけど、家にはいつもギターがあって、ジューダス・プリーストやアイアン・メイデン、モトリー・クルー、それから初期のメタリカのコピーをしていたよ。15歳になる頃には、友達の家でやってるいろんなバンドに参加して、みんなでお気に入りの曲を演奏してた。そういうのから始まって、最終的には自分でバンドを始めたんだ。

――マリリン・マンソンに加入する前は、Amboog-A-Lardでベースではなくギターを弾いてましたよね。

T:うん。Amboog-A-Lardは基本的にはヘヴィメタル・バンドだったね。マリリン・マンソン加入前に自主制作盤のレコードを二枚出したんだけど、ぼくはベースを弾いてるんだ。でもマリリン・マンソンに加入するまで自分のベースは持ってなかったから、厳密に言うと、ぼくはギタリストだったよ。

――もともとフロリダ出身なんですか?

T:違うんだ。子供の頃は、いろんなところを転々としてたから。それが功を奏したのか、今ではあちこちを移動してるけどね。今のぼくがあるのは、あの経験のおかげだよ。しょっちゅう引っ越しては友達を失うってことに慣れるんだ。それから、新しい友達を作ったり、新しい人に出会ったりしなくちゃいけないってことにもね。

――新たな出会いといえば、『Dead Man On Campus』のサントラに収録されている『I Only Want To Be With You』で、元祖ツイッギーとコラボしていますね。いかがでしたか?

T:最高だった。ぼくの人格を形成し、名前の由来になった人に会えたんだ。こんなことができたのは、バンドの中でぼくだけだよ。マリリン・モンローは当然この世にいないし、マドンナは最低だし、他のメンバー名の由来になってるアイコンの女性たちもいなくなっちゃったからね。ツイッギーは本当にきれいで、素敵な人だったよ。電話で話してどんな曲をやりたいか聞いたら、彼女はダスティ・スプリングフィールドの大ファンだから、この曲を選んだんだ。ぼくが考えたのは、彼女のかわいらしい声の横で、悪意に満ちたギターの音をいっぱい鳴らすってことだったよ。“ラミレス/マンソン”の世界と、“トゥイギー/マリリン”の世界が隣り合わせになるってことだね。ツイッギーは本当に歌がうまいんだ。来てから、たった2、3テイクでボーカルを録り終えちゃったよ。何度か、一緒に遊びに出かけたりもしたんだ。ちょっと変な感じだったな。TwiggyとTwiggyだからね。なんとなくこうなる気もしてたんだ。スターが並んだね。

――トゥイギーという名前を選んだのは、純粋に彼女への憧れからだったんですか?

T:ぼくの家族にはイギリス人が多いから、そういう環境で育ったんだ。いつも彼女の写真を見ていたよ。ビートルズ、そしてツイッギー。彼女は、本人の魅力だけで商品が成り立った最初の人物の一人なんだよね。つまり、現代における最初のアイコンの一人なんだ。それから、彼女が華奢だったっていうのもあるよ。そもそもぼくは、体型のせいでいつも“Twig(小枝)”って呼ばれてたんだ。面白いことに最近、また瘦せ型のモデルが流行ってるね。ぼくたちはもう、そうじゃなくなりつつあるけどね。

――あなたとマンソンの女性の好みは似ているのでしょうか?

T:いいや。彼は特定の女の子だけが好きだけど、ぼくはすべての女の子が好きなんだ。脈拍さえあればね。いや、別になくてもいいかも。タイミングが合えば、だれでもOKだよ。誰でも手に入れられるってなると、自分が売春婦ってことになっちゃうけど。

――現時点で、まだ叶っていない夢はありますか?

T:いい質問だね。もちろんあるよ。すぐには思い浮かばないけど。今はアルバム制作という大きなプロジェクトを終えたばかりだから、ひと休みしてるところだよ。

 ★ ★ ★

 記事は以上です。つづいては写真。

 まず、インタビュー記事内の写真がこちらです。記事自体は何ページにもわたって掲載されていますが、写真があるのはこのページと、前半で紹介したページのみです。

f:id:ankodama666:20211128181249j:plain

f:id:ankodama666:20211128182051j:plain

 そして、『The Dope Show』のバンドスコア(ベース譜)。他のパートの譜面も別ページにあります。隣は、スマッシング・パンプキンズの『Perfect』。ビリー・コーガンの曲ですね。

f:id:ankodama666:20211128182338j:plain

 で、綴じ込みのポスターですが、記事前半の冒頭でもお伝えしたように、表面はギターの写真です。誰のギターかと思ったら、トゥイギーたちにドアを開けてもらえなかったアイアン・メイデンのデイヴ・マーレイのものでした(笑)。

f:id:ankodama666:20211128183251j:plain

 裏返すと…。

f:id:ankodama666:20211128184108j:plain

 われらがトゥイギーです! 見やすいように、スキャンした画像も載せておきます。

f:id:ankodama666:20211128183918j:plain

 以上が、インタビュー記事&写真でした。

-------

 いやー、ボリュームたっぷりでしたね! ギター専門誌ということでギターについてマニアックな話をしているのかと思いきや、『Mechanical Animals』制作開始の時点で本人はギターを所有していなかったという驚きの事実。Amboog-A-Lard時代にベースを持っていなかったという話も出ていましたが、それまでは誰かのを借りていたということなのでしょうか。あるいは、バンド所有の楽器があったとか…?

 後半の「それよりドラッグの話していい?」のパンチ力が強すぎて他のエピソードがかすみますが、ギターを始めたきっかけや影響を受けたバンド、そして曲作りについてなど、ファンが知りたいことがたっぷりと語られています。「技術的にギターがうまいだけの人は、この雑誌に広告出してる」という発言が笑えますが、この号に“その手の”広告を出した人たちはどういう気持ちでこれを読んだのか…。

 マリリン・マンソン加入前からトゥイギー(トゥイグ)と呼ばれていたということは、筆者は初めて知りました。本家ツイッギーとの共演、きっと一族全員鼻が高かったに違いありません。彼女のリクエストでカバーしたという『I Only Want To Be With You』。何度聴いても“なんじゃこりゃ”という珍作ですが、不思議な愛嬌があって憎めないので、“なんじゃこりゃ”という気分を味わいたい方はぜひチェックしてみてください。ちなみにアーティスト名は「Twiggy & Twiggy」。そのまんまです(笑)。

 “新しい友達”デイヴ・ナヴァロとのエピソードは、間違いなく今回の記事のハイライトのひとつでしょう! ここで語られているもの以外にも、まだまだ面白い話がいっぱいありそうな気がしますね。当時の写真を探したのですが、二人で写ったものが意外と見つからず。おそらくこの時期に撮られたらしき一枚を見つけましたが、アイアン・メイデンのキャラクターであるエディに仲良く肩を抱かれていました。

f:id:ankodama666:20211128210002j:plain

ツーショットじゃなくてスリーショットさ

 最後に、今回のトゥイギーのファッションについて。80年代のロックスター風で実に楽しいメイクと衣装ですが、クレジットを見ると、撮影用にプロのヘアメイク&スタイリストがついているようです。とはいえ、髪型は完全に普段のトゥイギーですね。表紙写真で着用している紫のボーダーの服も、たぶん自前です。この時期、他のところでもよく着ていました。

f:id:ankodama666:20211128225324j:plain

巻き物で変化をつけてみました

 で、注目は、薄い紫とピンクのマニキュア。これ、おそらくこちらの雑誌の企画で塗ってもらったものです(笑)。小指に“Jesus”の文字が見えないかと目を凝らしたのですが、はがれてしまったのか、確認できず。残念!

 というわけで、隅から隅まで読みごたえのある「Guitar World」でした。今回の号には掲載されていませんが、同じ時に撮影されたであろう画像を二点見つけたので、おまけに貼りつけておきます。

f:id:ankodama666:20211128230105j:plain

まさにスターダスト

f:id:ankodama666:20211128230132j:plain

謎の丸い小道具

★★目次★★

トゥイギー単独表紙&ロングインタビュー【雑誌】「Guitar World」1998年11月号 (前半)

 f:id:ankodama666:20211109003357j:plain

 マリリン・マンソンが表紙を飾った雑誌は数あれど、トゥイギーが単独で表紙に登場した回数は意外と少なく、筆者が知る限り二回。いずれも1998年に発売された「Guitar World」(11月号)と「Seconds Magazine」(第48号)です。

 現在世界中どこにも売られている気配がない「Seconds Magazine」と違い、「Guitar World」の方は数こそ少ないながらも海外のネットオークションで出回っているので、ファンとしては手に入れておかねば…と思いつつ、送料を入れると約4,000円となかなかのお値段なので手が出せずにいました。

 が、運よく手頃な価格で入手することに成功。これが、インタビューも写真も期待を上回るクオリティ! しかも、よく見ると綴じ込みでトゥイギーの全身写真ポスターがついています(表がギターの写真だったため、最初気づかず)。さらにギター専門誌とあって、インタビュー記事とは別に『The Dope Show』のバンドスコアまで掲載されているという、ファンには夢のような一冊です。

 ポスター写真はのちほどご覧いただくとして、まずはインタビュー記事をお楽しみください。かなりのボリュームなので、前半と後半に分けて紹介します。

-------------------

f:id:ankodama666:20211126233314j:plain

トゥイギー・スターダスト

マリリン・マンソンの華麗なる転身? トゥイギー・ラミレスが明かす、ハリウッド生活の苦悩と楽しみの全貌

執筆者:Alan Di Perna 写真:Albert Sanchez

 サンセット・ストリップを滑走する一台の黒いリムジン。後部座席でくつろぐトゥイギー・ラミレスは、長袖の黒いシャツに黒のスラックス、赤いネクタイという上品な装いで、『Replicas』のアルバムジャケットに登場するゲイリー・ニューマンのような雰囲気を漂わせている。マリリン・マンソンの右腕として知られるトゥイギー。しかしここにいる彼は、僧侶のような衣装やボンテージ・ファッションに悪魔風メイクといった、ステージやマンソンと一緒の写真でおなじみのあの姿とはだいぶ違って見える。というより、普通の服を着ているせいで、かえってトゥイギー本来の異常さが際立ってしまっている。骸骨のように細い手足と、びっくりハウスの鏡に映ったようにも見える異様に細長い顔。なぜかその顔の効果で、ボリュームたっぷりの黒いドレッドヘアが、ちょっと斜めにかぶった18世紀のカツラのようにおしゃれな印象になっている。リムジンが午後の渋滞の中を縫うように走る間、ウェスト・ハリウッドにあるロックの名所を紹介してくれるトゥイギー。

「“ザ・ウイスキー”が見えた。一度だけあそこで演奏したことがあるよ」。

 マリリン・マンソンのメンバーは、一年ほど前からL.A.で暮らしている。L.A.はなんといってもスターダムの発祥地だ.。ここに引っ越してきたばかりの人たち同様、トゥイギーは今なお、この街に少し魅了されているように見える。リムジンはハードロック・レストランの名店「ザ・レインボー」前に到着。中に入ると、おそろしく大きな胸をした女性店員が、われわれを暗い隅の席に案内してくれる。トゥイギーが注文したのはステーキとフライドポテト、それから前菜のサラダとチーズフライ。ボリュームたっぷりの典型的なアメリカ人の食事だ。おいしそうに平らげるトゥイギーを見下ろすように、80年代のメタル・ロック界を代表するスターたちのサイン入り写真が飾られている。マリリン・マンソン加入後、スウィンギング・ロンドンを象徴するファッション界のアイコンの名前と連続殺人鬼リチャード・ラミレスの姓を組み合わせた“トゥイギー・ラミレス”を名乗るようになった彼。ここにいるスターたちはそれより前、すなわち若き日のジョーディ・ホワイトが憧れていたヒーローである。バンドのベーシスト/ギタリストであり、事実上の音楽ディレクターでもあるトゥイギーだが、メディアでの知名度やパパラッチからの関心度はマンソン本人の次に高い。この状況は、マリリン・マンソンがアルバム『Antichrist Superstar』を発表後、鳩の頭を噛みちぎったオジーに続いて、ロック界における最高に物議をかもす話題の存在になってからというもの、ずっと続いている。

 ニューアルバム『Mechanical Animals』のリリースにより、バンドの人気はさらに高まりそうだ。本作は、マリリン・マンソンを発掘し、自身のレーベルNothing Recordsと契約を結んでこれまで彼らの全作品をプロデュースしてきたトレント・レズナー(ナイン・インチ・ネイルズ)の手を離れて制作された初のアルバムである。彼に代わってサウンドガーデンのプロデューサーであるマイケル・ベインホーンが起用され、驚くような仕掛けがたっぷり詰めこまれている。まず、『Antichrist Superstar』の特徴だったあのポスト・インダストリアル的で拷問のようなシャウトや、渦巻くスラッシュギターの音は今回ほぼ使われていない。代わりに、グラムロックやディスコ、80年代初期シンセポップなど軽めのスタイルを取り入れ、キャッチーなメロディ中心のアプローチに挑戦。これらを融合させて、ダークなコンセプト・アルバムに仕上げている。前作で評価されたサタニズムもほとんど登場せず、古き良き時代の“セックス、ドラッグ&ロックンロール”に重きをおいているように見える。アルバムからの初シングルとなる『The Dope Show』では、セクシーで悩ましいビートとワウ・ペダルで歪ませた不穏なギターサウンドにのせて、“We're all stars in the dope show(ぼくたちはドープ・ショウのスターだ)”と歌われる。

 このアルバムの制作はバンドに音楽面だけでなく、メンバー面での変化ももたらした。というのも、ギタリストのZim Zumがアルバムに採用されたいくつかのトラックをレコーディング直後に脱退。今後の『Mechanical Animals』ツアーには、彼に代わって、デイヴィッド・リー・ロスやロブ・ハルフォードのギタリストを務めていたジョン・ロウリーが参加する予定だ。本作でトゥイギーは、これまで通りベースとギター両方を担当、曲作りにも大きく貢献している。

「ヘヴィメタル的な意味合いで言うと、リフは少なくなってるんだ」と、トゥイギーは新作アルバムについて語る。「だから、がっかりする人もいるかも。でも『Antichrist Superstar』に夢中になってくれたたくさんのファンの人たちは、成長して少し年を重ねたと思うんだ。ぼくたちの状況もファンのみんなと同じだよ。正直言って、『Antichrist Superstar』を発表した時も、『Sweet Dreams』みたいな曲とは全然違っていたから、受け入れられるとは思ってなかったんだ。でも彼らは受け入れてくれた」。

 マリリン・マンソンが奇妙で人工的なものを好むバンドであることを考えると、彼らがスモッグに包まれた日光と整形手術であふれる国で成功したのは、当然なのかもしれない。今、マンソンは女優のローズ・マッゴーワンとデートを重ねている。一方トゥイギーは、新しくできた友達のデイヴ・ナヴァロ(ジェーンズ・アディクション/レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリスト)と定期的に街に繰り出しては、人々を恐怖に陥れている。きらびやかな世界と恐怖とが共存するロサンゼルスで、マリリン・マンソンは家と呼ぶにふさわしい場所を見つけたというわけだ。

――Guitar World(以下略):前作『Antichrist Superstar』に比べると、今回のアルバムは“マンソン”よりも“マリリン”の印象が強いように思います。楽しくて、魅力的ですね。

トゥイギー・ラミレス(以下T):確かにそうだね。ほとんどの曲をシングルにするつもりで作ったんだ。『Antichrist Superstar』の時には、誰もそんなこと考えてなかったよ。あれはとにかく怒りを込めたアルバムだったからね。でも今回のアルバムには、もうちょっと愛らしさがあるんだ。怒りだけじゃなくて、いろんな感情が詰まっているよ。前作は本当に大変だったけど、同じことを何度も繰り返したって意味がないからね。自分たちを再構築する時期だったんだ。そもそも、『Antichrist Superstar』以前のレコードだって、全部違うサウンドだったしね。

――スタイルが変わったきっかけは?

T:ぼくたちがハリウッドに引っ越したことが、多くの曲に反映されてると思うよ。カリフォルニアのレコードを作りたかったんだ。ぼく自身はカリフォルニアに住んだことがなかったけど、「みんなでL.A.に引っ越そう」って話になって。みんなで家を一軒借りて、曲作りを始めたよ。それ以前に作った曲は一曲もないから、どの曲にも間違いなくハリウッドの雰囲気が反映されてる。ハリウッドヒルズに住んでいると、街の明かりのせいで、ロサンゼルスの夜景がまるで宇宙空間のように見えるんだ。世界の頂点に立った気分になるんだけど、ひとりぼっちなんだよ。この孤独感って、スターダムにも関係してると思う。以前のぼくたちは、誰にも知られていなかったから孤独を感じてた。今は、誰もがぼくたちのことを知っているから、孤独を感じるよ。みんなが自分のことを知ってると、誰にも知られていないときより孤独感は強くなるんだ。“人気者”って言葉は、“孤立”の同義語だと思うよ。

――あなたは一人の人間としてではなく、アイドル的な見られ方をしていますね。

T:おかしな話だよね。自分らしくしていると、すぐにあいつはバカだとか最低な奴だとみんなに決めつけられてしまうんだから。自分の幸せって何なのか考えてしまうよ。他の人に受け入れてもらうためには、自分の幸せを犠牲にしなきゃいけないのか?ってね。いったん最低な奴だと判断されてしまった人間が、“あいつはまあまあだ”と思ってもらうには、誰に対してもめちゃくちゃ親切にしなきゃいけないのさ。ハリウッドだからまだ受け入れてもらえるんだけどね。

――新作には、まさに「ドープ」(麻薬的)な曲がたくさん入っていますね。

T:うん。このアルバムを制作中に体験したドラッグは、前作のレコーディングのときよりも楽しかったよ。『Antichrist Superstar』のときはただレコーディングをしてるだけって感じで、すごく苦しかったんだ。みんなドラッグをやっていたけど、必ずしも楽しいってわけじゃなかった。今回の方が断然ポジティブだよ。もっと暗い歌詞の曲もあるけどね。

――『The Dope Show』はいったいどういう曲なのでしょうか。

T:あれこそもっともハリウッド的な曲だよ。ここに住んでると、家でくつろいでたと思ったら、突然、スコット・バイオだとかアイアン・メイデンのメンバーと一緒に過ごすなんてことが起こるんだ。で、気がつくと、コリー・フェルドマンがカラオケをやろうとぼくの家のドアをノックしてる。そういうことを反映した曲さ。子供の頃に自分にとってアイドルだった人たちと一緒に過ごしてクレイジーな体験をしていると、彼らが、名声が過ぎ去った後で名声をどういうふうに捉えているのか分かるよ。

――つまり、「ドープ」というのは馬鹿げたこととか、ドラッグを意味しているのでしょうか? それとも、ヒップホップの人たちが「あれってドープだよね」と言うのに近いのでしょうか。

T:ぼく個人としては、『The Dope Show』はドラッグの曲だと思ってるよ。音楽やエンターテインメント業界は、ドラッグだとかくだらない流行とかで盛り上がってる。今人気がある人は誰?ってね。たくさんの人が近寄ってくるけど、それって有名人とか重要人物と一緒にいると、自分たちの気分が良くなるからなんだと思うよ。ロックスターと知り合いたいとか、ロックスターになりたいと思ってる映画関係者も多くて、驚いたんだ。自分よりも有名な人から、すごい尊敬のまなざしを向けられるなんてね。ジョニー・デップはぼくに、4000~5000ドルもするギターをくれたよ。70年代中期のValenoのギターで、飛行機のアルミ素材でできてるんだ。最高だよ。(編集部注:マイアミのギター製作者ジョン・ヴァレーノが70年代初頭に少量生産したオールアルミ製の楽器。)

――ショーン・ビーヴァン(編集部注:マリリン・マンソンとナイン・インチ・ネイルズのエンジニア兼共同プロデューサー)の話によると、最初は、シーケンサーやPro Toolsを使って家で曲を作り始めたそうですね。その後、ハリウッドにあるコンウェイ・レコーディング・スタジオに移って、より生演奏に近い形でアルバムを完成させたと。

T:そうなんだ。前のアルバムでは、スタジオに入ってレコーディングしたら、デモですごく良かった部分がかなり失われてしまったんだよね。今回は、デモの一部をそのまま使うことができたよ。デモとスタジオでの生演奏を組み合わせてる曲が多いんだ。今まででいちばんライブ感のあるレコードだと思うよ。前回はいろんな部分がカットされて、とくにギターとベースのパートは本当にタイトで完璧な演奏に仕上げられてた。今回は、もっとゆるい感じだよ。ギターもベースも、かなり生演奏に近いんだ。編集されて、機械的な音と混ざってるけどね。機械による演奏と、生演奏のミックスさ。

――メカニカル(機械的)であり、アニマル(動物的)でもあるわけですね。

T:そうだね。今回のレコードは、前作よりも肉体を持ってるんだ。つまり、人間的ってことだね。これって、ぼくたちがより人間らしくなったってことと関係してると思うよ。

――世間は、人間的になったマリリン・マンソンを受け入れられるのでしょうか?

T:実のところ、“マンソン”の面よりも“マリリン”の面の方がちょっと怖いと思うよ。『Antichrist Superstar』では、ぼくたちのキャラクターはジギー・スターダストみたいな感じで、自分たちはビッグなロックスターになると宣言してた。で、それは現実になった。だけど今回のレコードには、本当のぼくたちにもっと近い人格が現れている感じなんだ。“トゥイギー”は本当のぼくを飲みこんでしまったよ。そのおかげで、もっと自分を知ることができたけどね。

――俳優が、自分が演じる役についてよくそんなふうに語りますね。

T:それと同じだね。ニセモノの自分って意味じゃないよ。役を演じることで、より深く自分を知ることができるんだ。

――自分では気づかなかった部分に気づくんですね。

T:そうなんだ。ぼくはすごく幸運だと思う。一つのアイデンティティにとらわれて自分の心に制限をかけてしまう人が多い中、その罠にはまらずにすんだから。これって、誰にでもできるけどね。「あれをやったのは自分じゃない。俺の中にいるもうひとりの奴がやったんだ」ってね。

――今回のアルバムには、パーソナルな印象が強い曲とそうでない曲とがありますね。

T:アルバムの中には、人間的な面だけじゃなくて、架空のグラムロック・バンドの存在もあるんだ。『Antichrist Superstar』にはアンチクライスト・スーパースターひとりしか登場しなかったけど、今回は、言うならば“オメガ&ザ・メカニカル・アニマルズ”ってバンドが出てくるってわけさ。レコードの中に、ぼくたちが進化した別のバンドがいるんだよ。それが、違う印象を受ける理由じゃないかな。すごく人間的な面もあるし…見せかけって意味じゃなくて、ロックスターとかロックンロールの雰囲気もあると思うんだ。

――初めて聴いたときには「この人たちは何者?」と、まるで新しいバンドをチェックしてるような気分になりました。

T:ラッキーなことに、マリリン・マンソンは曲を演奏するバンドというより、アート・プロジェクトに近いんだ。つまり、ぼくたち自身がバンドなんだよ。だから、全然種類の違うサウンドに挑戦することができる。みんながぼくたちに期待するサウンドには、とらわれてないんだ。音楽そのものよりもマリリン・マンソンという存在の方が重要だということが、有利に働いたと思う。そのおかげで、やれることの自由度が広がったんだ。

――70年代のボウイのような雰囲気の曲もありますね。

T:その通りだね。ぼくたちが影響を受けたものがたくさん詰まっているよ。いろんなスタイルの曲があるから、今までで一番バラエティに富んだアルバムなんじゃないかな。誰かの真似をするつもりはなかったけど、ある時代の音楽を取り入れたかったんだ。今のやり方でね。ぼくたちがボウイやピンク・フロイドから恩恵を受けてることが伝わると思うよ。

――80年代初期のゲイリー・ニューマンっぽい曲もあって、すごくいいですね。『New Model No.15』で使われているリフやドラム・マシーンの拍手音なんて、最高です!

T:どうもありがとう。その通り、まさにゲイリー・ニューマンだね。

――バンドのメンバーの音楽の好みは似ているのでしょうか? それとも、別々の音楽から受けた影響を曲作りに生かしているのでしょうか。

T:好みはすごく似てると思うよ。ぼくだけなら100万曲でも作れるけど、マリリン・マンソンに関しては、マリリンとの仕事上の関係や曲づくりの都合によって形が決まってくる。ぼくは、曲が必要としているものに合わせて自分を変えるんだ。ベースやギターに自分らしいスタイルを取り入れることはすごく意識してるけど、ぼくにとっては、それがレコードに反映されることの方が重要だよ。ぼく自身は自分のことをプレイヤーというより、ソングライターだと思ってる。ギターやベースの演奏にはあまり関心がないな。大事なのは曲なんだ。だから曲を作るときは、ギターでもベースでも、80年代初期のサウンドにしたいとか、あるいは90年代中期のサウンドにしたいとか、目的に合わせて違う人間に扮するようにしているよ。

――マリリンと二人で曲作りをするときのスタイルを教えてください。

T:作り方は曲によって違うんだ。一つのアイディアをふくらませながら一緒に作っていくこともあるし、ぼくたちの中で意味が通じるコードをいくつか思いついて、それをもとに組み立てていくこともあるよ。『The Dope Show』なんて、5分ぐらいで書き上げちゃったんだ。だからお気に入りの曲なんだけどね。このアルバムの他の曲、たとえば『The Great Big White World』や『Mechanical Animals』あたりは途中で何度か形が変わったんだけど、『The Dope Show』は最初からほぼ完成バージョンに近い形だったよ。『The Beautiful People』を作った時と同じ感じだね。『I Wanna Disappear』(筆者注:アルバム収録タイトル『I Want To Disappear』)も、あっという間にできた。ぱっと作れた曲は気に入ってるんだ。正直で、ウソがない感じがするから。

――トレント・レズナーが参加していない初のアルバムですが、感想は?

T:トレントから学んだたくさんのことは、今も生かされているよ。世間からは、彼がかなりぼくたちの曲作りに関わったと誤解されているみたいだね。『Antichrist Superstar』制作時、彼はほぼバンドの一員みたいな存在で、サウンド面に関わってくれたんだ。曲作りまで手伝ってもらったと誤解されちゃったから、今回は、ぼくたちがソングライターだって証明しよう、ってやる気になったよ。だからこのアルバムには、リアルな曲が多いんだ。前作にも満足してるけど、今回のレコードにはもっと満足してるよ。

――今回のプロデューサーであるマイケル・ベインホーンからはどんなことを学びましたか?

T:彼はぼくに、ベースはビートの少し前、ギターはビートより少し遅れて演奏するテクニックを教えてくれたんだ。レッド・ツェッペリンみたいな感じだね。今までは音楽を聴いていても、そんなこと気づかなかったよ。そのおかげで、アルバムにライブ感が出たと思う。それに彼は、ぼくに音楽への愛を取り戻させてくれた。その前は音楽が嫌になってて、興味を失いかけてたんだ。

――今回のアルバム制作にビリー・コーガンが参加するという報道がありましたが、実際はどうだったのでしょうか。

T:ビリーは実際に曲を作るというよりも、友情という形で関わってくれたんだ。彼は彼で、同じ時期に自分のレコードに取りかかっていたからね。ビリーの家のプールで何日も変なことをして過ごしたよ。彼がぼくたちの曲を聴いて、ぼくは彼の曲を聴いて。実際に何かしてくれたというより、彼との友情が曲に影響をもたらした部分があると思う。何かを変えろとか、こんな風に演奏しろなんて言われなかったよ。ビリーが与えてくれた影響は、もっとパーソナルなものなんだ。

――ギター演奏について。あなたとZim Zumがどのように役割分担したか教えてください。

T:ぼくの曲に関しては、他の誰にも任せられないね。いざとなったら自分で何もかもやりたいんだ。ぼくが書いた曲は、ぼくが弾くべきだと思ってるよ。Zim Zumは自分の仕事ができないからって、あちこちのリードギターを弾いただけだ。

――何があったんですか?

T:彼は自分の仕事ができなかったんだ。

――音楽的に?

T:まあね。その話はしたくないな。彼は自分の仕事ができなかっただけなんだ。

――彼は円満に脱退したという話ですが。本人もそう語ってますよね。

T:うん、まあ、その方が都合がいいんだろうね。彼は辞めるって言ったけど、このバンドを辞めるなんてかなりバカげてるよ。

――スタジオ・アルバムが完成するごとに、ギタリストが脱退しています。前回はデイジー・バーコウィッツで、今回はZim Zumが…。

T:そうだね。ぼくが彼らを脅して、何もさせないようにしてるのが原因さ。で、彼らが何もしないから、ぼくたちが解放してあげるんだ。

――マリリン・マンソンであなたとギタリストを務めるのは、大変なんですね。

T:うん。だってマリリンとぼくには仕事上の関係があるからね。ぼくが優れてるとか、そういうことじゃないよ。才能っていうのは、技術的にギターがうまいかどうかじゃなくて、音楽のセンスがいいかどうかってことだと思うんだ。最高に素晴らしいギタリストなら、『Guitar World』の後ろに自分のテクニックを紹介する広告を出してるはずさ。その人たちはバンドをやってるわけじゃないし、曲だって作ってないよね。だから能力や技術なんて関係ないんだ。大事なのは、曲なんだ。

後半へ続く

★★目次★★

宇宙の支配者、マザーマザー【MV】Monster Magnet - Space Lord(1998)

www.youtube.com

 アメリカのロックバンドMonster Magnet(モンスター・マグネット)の「Space Load」MVに、トゥイギーがゲスト出演していました。

 モンスター・マグネットは1989年結成と、この曲がリリースされた時点ですでにキャリア10年を超えるベテランですが、その後1999年におこなわれたマリリン・マンソンの「Rock Is Dead」ツアーでオープニングアクトを務めるなど、同世代のバンドとして親交があったようです。

 トゥイギーがMVに出演した経緯は不明ですが、楽曲そのものには関わっていないみたいですね。当時のインタビューでトゥイギーがおすすめのバンドにモンスター・マグネットを挙げているのを見た記憶があるので、「ちょっと出てくれない?」「いいよ!」的なノリだったのかもしれません。このMVが初めて放送されたのは1998年9月14日。ちょうどマリリン・マンソンのアルバム「Mechanical Animals」発売の前日です。

 それでは、見ていきましょう。といっても、出演時間は数秒です! ぼーっとしていると見逃してしまいますので、油断しないよう気をひきしめてください。

f:id:ankodama666:20210711160147j:plain

ド派手なセットと踊り狂うお姉ちゃんたち、そして光る電球スーツに目を奪われていたら…

f:id:ankodama666:20210711160658j:plain

近づく一台の車。

f:id:ankodama666:20210711161004j:plain

助手席にいるのは…

f:id:ankodama666:20210711161311j:plain

トゥイギーです! 曲にあわせ、妙に真剣な顔でギターを弾くふりをしています。

f:id:ankodama666:20210711161810j:plain

一度聞くと耳から離れないフレーズ。それが…

f:id:ankodama666:20210711162053j:plain

♪スペースロード、マザーマザー

f:id:ankodama666:20210711162536j:plain

どうやらメタルな気分のトゥイギー。これで出演は終わりかと思いきや…

f:id:ankodama666:20210711163504j:plain

もう一瞬だけ出てきました!

f:id:ankodama666:20210711163648j:plain

チラッ(カメラ目線)

--------

 以上です。いやー、ホントに一瞬でしたね! 衣装がはっきり見えないのですが、メイクと髪型はほぼMechanical Animals仕様です。とにかく真剣な表情が印象に残ります。窓(というか天井?)にかけた真っ白な腕が、ダンサーたちの日焼けしたヘルシーなボディとは対照的に、妖しい魅力をかもしだしています。

 繰り返される「♪スペース・ロード、マザーマザー」ですが、もともとは「Mother Mother」ではなく「Motherfucker」だったのを自主規制したとの情報を目にしたので確認したところ、たしかに他の音源でも当時のライブ映像でも、「Motherfucker」と歌われていました。このMVの撮影現場でどちらのバージョンが流れていたのか定かではありませんが、いずれにせよ、「宇宙の支配者~」なんて歌詞、スター・ウォーズファンのトゥイギーとしてはノリノリで楽しんだに違いありません(笑)。

【おまけ】このMV、制作側がいったい本気なのかふざけているのかいまいちわからないまま観ていたら、元ネタがありました。

 注:こっちは本気です↓

www.youtube.com

 …というわけで、

 結論:ふざけている。

★★目次★★

カラオケ、大好き【雑誌】「Seconds Magazine」第48号 (1998年)

f:id:ankodama666:20211214002714j:plain

 鏡よ鏡、この世でいちばん美しいのは誰?…という声が聞こえてきそうなピンナップ風のカバー写真。これまでにトゥイギーが単独で表紙を飾った雑誌二誌のうちのひとつが、1998年に発行されたこの「Seconds Magazine」第48号です。(もうひとつの「Guitar World」1998年11月号についてはこちらで記事にしました)。

「Seconds Magazine」は1986年から2000年までニューヨークで発行されていた音楽雑誌。創刊者が80年代のパンクシーンを追ったノンフィクション『American Hardcore』の著者スティーブン・ブラッシュということで、文字通りかなりハードコアな内容だったようです。第40号はマンソンが表紙を飾っています。

 トゥイギーのファンとしては当然持っておきたい一冊ですが、探せど探せど、どこにも見つかりません(涙)。頼みの綱の海外オークションサイトにも、少なくともここ数年は出品されている気配すらないという、まさに幻の一品です。廃刊から20年以上たっているにもかかわらず公式サイトが存在していたので問い合わせてみましたが、今のところ反応はなく…。同サイトでバックナンバーが「在庫あり」となっているので、ひょっとしてスティーブンの家のどこかに在庫が眠ってるんじゃないかとにらんでいるのですがどうでしょうか。

 返信を気長に待ちつつ、このまま入手できない可能性を考え、複数の情報で確認をとった上で、ファンの方がアーカイブしているこちらの記事を翻訳しました。ちなみにインタビュアーのボイド・ライスは、「NON」名義で70年代から活動するノイズ・ミュージシャンです。

【2022.04.18追記】その後、なんとスティーブン本人から返信があり、「倉庫を探したら在庫が見つかった」とのことでバックナンバーを入手することができました。誌面の写真を2点追加し、記事に一部変更を加えました。

------

トゥイギー・ラミレス

 インタビュー:ボイド・ライス 写真:Wendy Idele

 マリリン・マンソンたちを最後に見たのはブリット・ポップのバンド、ブラーがサンセット・ハイアットの屋上で開いたパーティでのこと。マンソンは映画『リバース・エッジ』についてクリスピン・グローヴァーに尋ね、トゥイギーは女の子に囲まれてプールサイドに座っている。傍らに立つ元ティーン・アイドルのレイフ・ギャレットは、まるでハリウッドのヘルズ・エンジェルスのリーダーのようだ。豪華ゲストが参加しているにもかかわらず、パーティは退屈だった。あのイギリス人たちはパーティのやり方が全然分かってない。そう思った我々は、さっさとマンソンの部屋に逃げ込むことにした。かつてはロック界の名物ホテルとして知られた、サンセット大通りのハイアット。レッド・ツェッペリンがバルコニーからテレビを放り投げたのは、このホテルだ。エルヴィスやボウイも宿泊した。そして今、ここを自宅としているのがマリリン・マンソンのメンバーである。部屋の壁には水槽が埋め込まれていて、なかなかゴージャスな雰囲気だ――もし死んだ魚が一匹、腹を見せて浮いていなければ。普通ならホテルのマネージャーに文句を言うところだが、マンソンは死骸の存在を面白がっているようだった。彼らはこの時、マンソンが言うところの「シャロン・テートが住んでいたような」ハリウッドヒルズの家に引っ越し中だったのである。

 部屋には、ほとんど何も置かれていない。グロテスクなマネキンが一体あったが、これはファンから贈られたもので、マンソンを模したペイントがほどこされている。取り巻き一行がフェリーニ映画さながらの様相でマンソンたちと場所を奪い合っているため、その異様なマネキンすらかすんで見える。おかしなオーディション会場にいるような気分だ。彼らがまるで、マンソンたちが製作・出演する現在進行形のドラマの役を手に入れようとしているような錯覚に陥ってしまう。

 部屋には不思議な空気が流れていた。空想と現実が交錯して、みんな現実の人間なのに、フィクションの世界から抜け出た登場人物のようだ。思うに、影響力を持ち続けるバンドというのは、アマルガム・コミックスに出てくるキャラクターに似ている。強烈な個性を持つ人間が集まっているのだ。たとえばヴェルヴェット・アンダーグラウンドやストーンズ、ニューヨーク・ドールズ、ビートルズ、それからモンキーズ。いずれも中心にいるのはボーカルだが、他のメンバーが重要な役割を担っているバンドである。マリリン・マンソンも例外ではない。ボーカルのマンソンはその発言を含めて世に知れ渡っているし、自伝まで書いた。が、共謀者である他のメンバーは? ほぼ完全に沈黙を貫く彼らの存在は、謎に包まれている。世間から容赦ない視線を浴びせられているのに、なぜトゥイギー・ラミレスやマドンナ・ウェイン・ゲイシー(ポゴ)は、ここまで影の薄い存在でいられるのだろうか? 実は彼ら、公の場でこそ無口だが、プライベートでは一晩中喋り続けることができるタイプの人間なのだ。そして頭がいい。バンドを体現するため、自分たちの態度やビジョンについて考え抜いてきた賢い男たちなのだ。

 これまで我々はトゥイギーに関し、表面的なことしか知らなかった――どこか優しそうでいて、邪悪な雰囲気。その姿はまるでホラー小説に登場する、夜な夜な蘇っては郊外の一家を惨殺する陶器人形のようだ。そして、矛盾そのものに思える外見。長い黒髪とショート丈のベビードールが、セクシュアリティの曖昧さを語っている。といってもバンドの女性ファンからしてみれば、彼のセクシュアリティは一目瞭然なのだが。ジム・モリソンが30年前に歌ったように、「小さな女の子たちは分かってくれる」というわけだ。

 マリリン・マンソンのメンバーとして、ビジュアル的にも音楽的にも強い存在感を放つトゥイギー・ラミレス。ステージ内外で好き放題ふざけては好奇の目で見られてきた彼が、今回初めて、ロングインタビューに応じてくれることになった。新作アルバム『Mechanical Animals』やハリウッド生活、そしてもちろんゴシップ、ドラッグ、セックスについても語ってくれた。

Seconds(以下略)――“もうひとりのツイッギー”との出会いと関係について教えてください。

ラミレス(以下R):60年代に活躍したピーター&ゴードンのピーター・アッシャーは知ってる? デイヴィッド・レターマンの番組のバックステージで彼の奥さんに会ったんだ。レターマンと友達か何かだったらしくて、娘さんがマリリン・マンソンを好きだってことで来てたんだよ。彼女は本物のツイッギーと知り合いで、今ロスの自宅にツイッギーを泊めてるって言うんだ。思わず「ぼくもロスで遊ぶのが好きなんです」って反応したら、彼女が「あなたたち、一緒に過ごすべきだわ」って言ってくれてね。それで実現したんだ。自分の名前の由来になった人に会えるなんて、すごく素敵だったよ。マリリン・マンソンのアルバムを制作中だったんだけど、二、三日ひとりでいる時間があったから、彼女に「何か歌わない?」って声をかけたんだ。ダスティ・スプリングフィールドが好きだっていうから、大急ぎで『I Only Want To Be With You』の別バージョンの音源を作って、歌ってもらったよ。ベイ・シティ・ローラーズもこの曲をカバーしてるんだよね。ぼくがやってるのを見て、スマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンは「それ、他の人もカバーしてるけど知らないの?」って言ってたけど。ぼくにとっては彼女の声をテープに録ること、そしてそのバックでぼくが演奏してるってことが重要だったんだ。ツイッギーが60年代にどれほど大きな存在だったかは、意識しないようにしてた。マーチャンダイズ展開の元祖といえば、やっぱりビートルズとツイッギーだよね。大量にグッズが発売された最初のポップスターの一人だと思うよ。

――弁当箱まであったよね!

R:ぼくはその手のグッズを山ほど持ってたんだけど、彼女は「自分では何も持ってない」って言うんだ。どうせツアーに出たらみんなにぶっ壊されちゃうから、全部、彼女にあげたよ。

――名前の由来になったもう一人の人物、リチャード・ラミレスと共演する予定は?

R:実現したらかなり面白いだろうね。実はツイッギーとの『I Only Want~』で、マリリン・マンソンのデビューアルバムをサンプリングしてるんだ。リチャード・ラミレスの話し声が入っててさ。だからあの曲には、リチャード・ラミレスも登場してるんだよ。彼女には言ってないけどね(笑)。

――由来になった人物の両方と共演できるのは、きみだけだよね。アルバート・フィッシュやマリリン・モンローは死んだし、ジョン・ウェイン・ゲイシーも死んだ…。

R:それに、マドンナは最低だしね。実は、リチャード・ラミレスと何かやるのはそんなに難しいことじゃないんだ。電話でなら実現できるかも。リック・ルービンも、スタジオに立ち寄った時にあなたと同じようなことを言ってたよ。彼の話じゃ、バッド・ブレインズは獄中にいたボーカルの声を電話越しに録って、レコードを作ったんだって。

――前に会ったとき、マリリンは新しい家の話をしていたね。今もそこに住んでいるのかい?

R:作曲とレコーディングのために、ある家を一年間借りてたんだ。カリフォルニアに引っ越して、ハリウッドっぽいレコードを作りたかったんだよね。環境を変えて、元有名人と知り合おうと目論んだ結果、70年代のアイコンたちといっぱい友達になれたよ。子どもの頃によく目にしていた人たちだ。彼らはぼくたちの家に来て、カラオケやドラッグをやってたよ。一度手にした名声を失った経験を持つ人たちと付き合うのは、すごく刺激的だったね。

――前に会ったとき、きみはレイフ・ギャレットと一緒だったけど…。

R:名前は出したくないな。

――あのパーティの数週間後、ロバート・ダウニー・Jrがコカインをやりすぎてレイフ・ギャレットのホテルのスイートルームにたどり着いたって記事を「ナショナル・エンクワイアラー」誌で読んだよ。

R:よくある話さ。ここハリウッドじゃ、そういうおかしなことが自分の身に起きるんだ。

――マリリン・マンソンの新しいアルバムについて教えて。

R:『Mechanical Animals』だね。

――気に入ってる?

R:前作では、アルバム全体がひとつの感情になってたと思う。つまり、すごく怒ってるんだ。でも今回のアルバムにはグラマラスな面もあれば、人間的な面もあるよ。サウンド的には、人間が演奏した音と機械で出した音とがうまくミックスされてるんだ。

――『Antichrist Superstar』の時は死にそうになったと言ってたけど、今回のほうが楽だった?

R:前回とは違ってたね。ドラッグもそうだしそれ以外のことに関してもそうだけど、前回アルバムを作ってツアーに出た時は、“アート”――別に好きなように呼んでくれていいよ――のために、自分の幸せを犠牲にしてた。だけど、そうする必要はないってことに気づいたんだ。ぼくは正直じゃなかったと思う。といっても、今回のアルバムで正直になってるわけじゃないけどね。前回ほどつらくなかったし、今回のほうがはるかに楽しかったよ。歌詞の一部は、前作よりさらにダークになってるけど。

――子供の頃、音楽のレッスンは受けていた? それとも、バンド活動をやろうと思ってから楽器を弾けるようになったの?

R:もともと音楽に親しんで育ったんだけど、14歳の時に母がギターを買ってくれたんだ。レッスンを受けたことはなくて、ただ自分の好きな曲をコピーしてたよ。今じゃ、好きだった曲をパクってるけどね(笑)。

――初めて買ったアルバムは?

R:たぶん、KISSのレコードかな。後期の、『Dynasty(邦題:地獄からの脱出)』あたりだよ。

――多くの人に受け入れられたことで、マリリン・マンソンがやってることがメインストリームになったと思う? あるいは、メインストリームという概念を変えようとしているとか。

R:以前はぼくたちのことを知ってる人なんて誰もいなかったから、ミュージシャンとして孤立してるような気がしてたんだ。間違ったことをやってるって世間から思われてた。今はみんなに知られてるから、自分たちが正しいことしかやってないように感じてしまうよ。別の意味で、孤独を感じてるんだ。

――世界中で、きみにそっくりの格好をしている人たちを見かけたよ。髪型を真似したり眉を剃り落としてるだけじゃなく、わざわざ同じ服まで作ってるんだ。そういうのって怖い? それとも嬉しい?

R:もちろん嬉しいに決まってるよ。ぼくたちはそのイメージを壊さないようにしつつ、少し変化していかなくちゃいけないね。

――最近楽しいことは?

R:レイフやコリー・フェルドマンとカラオケをすること。楽しいんだ。

――ドラッグと女の子、好きなのはどっち?

R:すごく好きになった女の子がいても、ドラッグをやって興味がなくなってしまうことがある。あるいはドラッグのせいで、普段はしないようなことを女の子とやってしまうこともあるよ。ツアー中は誰であれ、ぼくが“犠牲にしようとしている”女の子たちに対して、ぼくは素晴らしい人間だと思い込ませようとしちゃうんだ。すぐにいなくなってしまうから、実際のぼくがどうかなんて関係ないんだよ。だけど同じ場所にずっといると、そういうことはできないんだ。だって、女の子たちに見抜かれちゃうからね。その子が単にバンドをやってる人間と一緒に寝たいってだけなら、別に問題ないんだけど…。

――「犠牲にする」とは面白い表現だね。だって、マンソンは『ポリティカリー・インコレクト』の番組内で、「セックスの欠如は暴力につながる」と語っていたから。コカインのことを「インポテンツ・ドラッグ」とも言っていたよ。きみたちはセックスとコカインを好んでるようだけど、女性に対して退廃的な行為をはたらくのはそれが原因?

R:コカインはいい避妊法だと思うよ。普段ならやらない、汚らわしいことをやるようになるんだ。人間はひとつできないことがあると、別のことをするようになるのさ。

――今、何のフェチ?

R:何週間か前に、ケタミンを知ったんだ。動物用の精神安定剤だよ。キース・ムーンが使ってステージ上で気絶したっていう有名な話もあるから、目新しいものじゃないんだけどね。アシッドに似てて、すごく変な感じなんだ。ついこの間も、自分の部屋が縮んでるのかと思って、デイヴ・ナヴァロに迎えに来てもらったんだよ。彼の家に行ってバルコニーに出たら、外はまるで映画『フラッシュ・ゴードン』の世界だったよ。すごく怖かったけど、この数週間はずっと幸せな気持ちなんだ。ケタミンのせいで、どこかのネジがゆるんだんだと思う。

――自宅が火事になって、なにかひとつだけ持ち出せるとしたら、何を選ぶ?

R:たぶんパソコンかな。買ったばかりだから。小型のノートパソコンなんだけど、5,000ドル以上もしたんだ。

――気に食わないことは何?

R:ぼくがむかついたり落ち込んだりするのは、たいていなんでもないことが原因なんだ。腹が立つのは、なんでいつも自分がそんなにイライラしてるのか、自分では分からないってことだよ。

――きみにとって、成功の一番の醍醐味は?

R:女の子とお金とドラッグだね。結局、自由ってことかな。お金があれば、やりたいことをやる自由が手に入るよね。

――では、いちばん嫌なことは?

R:それも、自由であることかな。なにかやることを見つけなくちゃいけないから。何もしないんだけど、かといって何かする時間もないのさ。だからドラッグに頼っちゃうんだよね。

――きみはとても個性的なルックスだから、マリリン・マンソンを知る人がいない場所でも、いつも注目を集めてるんじゃないかな。それって気になる?

R:そういうのを気にせずにいられる場所で過ごすようにしてるよ。ツアー中はいつも、みんなに気づかれちゃうけどね。ツアーが終わった後もまだ、みんなに見られているような態度をとってしまうんだ。実際は、見られてなくてもね。

――ハリウッドだと、状況はちょっと違うんだろうね。

R:そうだね。この間の夜、スコット・バイオと、それからアイアン・メイデンのあるメンバーと一緒に出かけたんだ。同じ日にだよ。映画業界の人間がロック界の人間と、そしてロック界の人間は映画業界の人間と付き合いたがるのは、おかしな話だね。ぼくはずっとバンドをやってる人たちを尊敬してたんだけど、今はもう尊敬できる人がいないよ。夢中になったバンド以上のことを、自分がやってるからね。

――セックスに関する質問をもうひとつ。生死を問わず、全盛期の誰かと寝られるとしたら誰がいい?

R:『ティファニーで朝食を』の女の子って誰だったっけ? オードリー・ヘップバーンだ。この間映画を観てて、「うわ、この頃の彼女ってセクシーだな」って思ったんだ。彼女か、『ディック・ヴァン・ダイク・ショー』に出ていた頃のメアリー・タイラー・ムーアかな。そういうわけで最近は、『ニック・アット・ナイト』を観ているよ。

――きみたちに関する噂をいろいろ耳にするけど、最近何かすごいことはあった?

R:あまりないね。ギタリストはいなくなっちゃったけど。

――え? 誰のこと?

R:ジミー(Zim Zum)だよ。演奏できなくなっちゃったんだ。出回ってる噂は、本当なのさ。

――それっていつの話なの?

R:ニ、三ヶ月前だよ。あまりスタジオに顔を出さなくなっちゃって、リハーサルに来ても、ぼくたちと一緒にいるだけでしんどそうだったんだ。今、彼はまわりに自分は脱退したと言ってるけど、だとしたら、かなり愚かな判断だと思う。個人的には、彼はバンドを去ったメンバーの中で唯一、ぼくが本当に好きだった人なんだ。

――後任は見つかった?

R:ジョンっていう人とツアーを回る予定だよ。

――それが彼の名前?

R:正確には、ジョン5っていうんだ。映画『ショート・サーキット』のロボットがジョニー5っていう名前だったことからきてるのかもね。彼はぼくたちのバンドに参加した、5人目の人間なんだよ。

f:id:ankodama666:20220418011624j:plain

トランプ風にデザインされた誌面

f:id:ankodama666:20220418011904j:plain

写真は1点だけでした

-----------

 以上です。本誌には掲載されていませんでしたが、同じ時に撮影された別の画像を見つけました。

f:id:ankodama666:20211231184951j:plain

眉は剃っても脇は剃らない主義

 コルセットっぽいドレスが似合ってますね! それにしてもこの写真といい表紙といい、トゥイギーファンにはトゥイギーにしか見えませんが、彼のことを知らなければ、普通に女の子だと勘違いする人もいるのでは?

 さて、かなり女の子度高めの見た目に反して、インタビュアーも「彼のセクシュアリティは一目瞭然」と書いている通り、ザ・男!な内容になっている今回のインタビュー。一言でいうと、だいぶ調子に乗っていますね(笑)。女遊びはともかく、「自分が彼ら以上のことをやってるから、もう尊敬できるバンドはいない」なんて、ノエル・ギャラガーもびっくりのビッグマウスっぷりです。

f:id:ankodama666:20220101221025j:plain

トゥイギー、調子乗るのもほどほどにしとけよ

 本家ツイッギーとの共演やケタミンの魅力については、「Guitar World」のインタビューでも詳しく語っているので、ぜひあわせて読んでみてください。キース・ムーンのくだりから想像するに、順番的には「Guitar World」のインタビューの後に、今回のインタビューが行われたのではないかと思われます(Guitar Worldのインタビュアーに、キース・ムーンが使ったのが動物用の精神安定剤だったと教えてもらっているので)。

 本題からは少々それますが、筆者がいちばん驚いたのは「獄中から電話越しにボーカルを録音した」というバッド・ブレインズのエピソード。調べたところ、どうやら1986年発表のアルバム『I Against I』に収録された『Sacred Love』という曲のようです。

f:id:ankodama666:20220101223453j:plain

『I Against I』ジャケット写真

 音源を聴くと、一発で電話越しと分かる声です。こちらの記事によると、レコーディング中にボーカルのH.R.がマリファナ密売容疑で捕まってしまったため、更生施設の電話を使って「周囲の雑音が入らないように電話のマウスピースを外し、その中に向かって歌った」そうですが、いったいどうやって演奏と合わせたのでしょうか!? それにしても、曲がめちゃくちゃかっこいい!

 トゥイギーの話に戻ります。基本調子に乗りつつも、随所に頭の良さと正直さ、そして繊細さが見え隠れするのがやはり、彼の面白さであり魅力だと思います。「一時的な関係だと相手に見抜かれずにすむから、自分をよく見せようとしてしまう」というのは、けっこう誰もがやってしまう(が、自分ではあまり認めたくない)行動なのではないでしょうか。

 Zim Zum脱退については、前述のGuitar Worldインタビューでも「話したくない」「バカげてる」とトゥイギーにはめずらしくちょっと怒ってるっぽかったので何が起きたのかと思っていたのですが、実は彼のことが大好きだったんですね。

f:id:ankodama666:20220101232409j:plain

いなくなっちゃってごめんね

 まあ、それにしても60~80年代カルチャーへの造詣の深さと人脈の広さがハンパないですね! みんなで自宅でカラオケを楽しんでいる様子、時代が今だったらきっと動画をSNSにアップしてくれていただろうに…と一瞬思いましたが、たぶんドラッグも一緒にやっていたでしょうから、時代がいつだろうとダメだったでしょうね(笑)。

f:id:ankodama666:20220101234135j:plain

カラオケ仲間①レイフ・ギャレット(アイドル時代)

f:id:ankodama666:20220101234312j:plain

カラオケ仲間②コリー・フェルドマン(スタンド・バイ・ミー時代)

 ツイッギー(本家)といいオードリーといい、中性的な美しさを持つ女性が本当に好きなんだなというのも印象的でした。彼女たちのファンはどちらかというと女性が多いイメージがありますが、そのあたりの好みも含め、彼がトゥイギーというキャラクターをどのように形成していったのかが垣間見える気がしますね。

f:id:ankodama666:20220101235348j:plain

色あせぬツイッギーの魅力

 というわけで、調子に乗ってるトゥイギーと次々に登場するスターの名前が楽しい「Seconds Magazine」でした!

f:id:ankodama666:20220102000134j:plain

パーティのやり方が分かってないイギリス人たち

★★目次★★

「ハワード・スターン・ショー」その⑥ そして…阿鼻叫喚(1997年)

f:id:ankodama666:20210917194747j:plain

 続きです。(前回の記事はこちら→  

 画面が切り替わり、廊下を並んで歩くマンソンとトゥイギーの姿が映し出されました。無事に収録を終えて、控室に戻る途中のようですね。二人とも、スタジオにいたときに比べてリラックスした表情です。

f:id:ankodama666:20211010171556j:plain

お疲れさまでした

 カメラのこちら側から、番組スタッフが「きみたちが成功するにあたって、ハワードがかなり力を貸してくれたと言ってたね。本当かい?」と質問します。残念ながらオンエアには使われていませんが、スタジオでそのような話題が出たのでしょうか。「そうなんだ」と、ゆっくり歩きながらマンソンが説明を始めるのですが…あのーすみません、はっきり言って、画面から見切れたりまた入ってきたりするトゥイギーが気になって、話がまったく頭に入ってきません。

f:id:ankodama666:20211010174654j:plain

ちょろっ

f:id:ankodama666:20211010174927j:plain

並んでみました

f:id:ankodama666:20211010175413j:plain

いったん消えたと思ったら…

f:id:ankodama666:20211010175549j:plain

そろり、そろり…

f:id:ankodama666:20211010175914j:plain

あっ、映ってる?

f:id:ankodama666:20211010234118j:plain

ようやく立ち位置安定

 狭い場所を移動しながら撮影しているので、おそらく二人を画面の中におさめるのが難しかったのでしょうが、それにしても、トゥイギーがやたらと落ち着かない動きをしています(笑)。というか動き以前に、こうやって蛍光灯の下であらためて見ると、トゥイギーの見た目が妖怪レベルのおそろしさですね! もし夜道で突然この二人に出くわしたら、トゥイギーをとっさに”この世のものではない”と判断して、マンソンに助けを求めてしまいそうです。って、本来はマンソンも、トゥイギーと同じく妖怪側なんでしょうけどね!
 それはともかくとして、スタッフの質問に対して真面目に答えるマンソン。「バンドを怖がる人もいた中で、ハワードは早くからぼくたちを応援してくれたんだ。嬉しかったから、忘れられないよ」。なんと、今回の番組出演の裏には、そういう経緯があったのですね。スタッフが「じゃあ、また番組に出てくれる?」とたずねると、マンソンよりも早くトゥイギーが…

f:id:ankodama666:20211011001606j:plain

「もちろんだよ!」

 声が小さいのでかなり聞きとりづらいのですが、即効で「いいとも!」的な返事をしています。よほど、今回の収録が楽しかったにちがいありません。で、その後にマンソンが「ぼくたちにトイレでフェラチオしてね」的なジョークをとばしますが…

f:id:ankodama666:20211011003508j:plain

ほじほじ

 ご覧ください。一瞬で話に興味を失ったトゥイギー、鼻をほじりながら聞いています。はっきり言って、青少年の教育のためには、マンソンの発言に「ピー」音をかけるよりも、トゥイギーの姿にモザイクをかけたほうがいいんじゃないでしょうか?

 その後、ドアの前にたどりついたところで、スタッフが「二人とも、今日は本当にありがとう」とお別れのあいさつをしています。しかしみなさん、ここで気を抜いてはいけません。スタッフがマンソンと握手を交わす直前のトゥイギーに注目してください。

f:id:ankodama666:20211011005106j:plain

ねえちょっと

 スタッフの耳元でなにかささやくトゥイギー。なんとまた、鼻をほじっています! 周囲の雑音にかき消されて、いったい何を話しかけたのかは聞こえませんが、冗談を言ったのか、それとも、普通にお礼の言葉をかけたのでしょうか? まあ、何を言っているのかはこの際、たいした問題ではないでしょう。問題は、彼が鼻をほじっているということです(笑)。

 とはいえ、見方によっては、ただクセで鼻を触っているだけのようにも受け取れるので、このまま見過ごすこともできますよね。というか、普通の番組ならそうしますよね! しかし、扉が閉まった瞬間に「ちょっと、信じられないよ!」と別のスタッフが声をあげます。

f:id:ankodama666:20211011011411j:plain

え、なに?

 振り返った彼に向かって、声の主がいったい何を言ったのかというと…「インタビューの間じゅう、トゥイギーが鼻をほじってたんだけど」。それを聞いた瞬間に踵を返してトイレに向かい、「彼が? 本当に?」と信じられない様子で手を洗うスタッフ。そこに、ご丁寧にもスローモーションで証拠映像が挿入されました。

f:id:ankodama666:20211011012953j:plain

先生、こいつです

 そうです。わたしたちが目に焼き付けた、あの姿です。スローモーションで見ると、ひどさが倍増しています! 半信半疑のスタッフに対し、声の主が興奮気味に「すごく笑えたよ。インタビューの間中ずっとだよ!」と追い打ちをかけます。そしてなんと、このタイミングで番組がCMに入りました。まさかこの後、彼らはこの話題をふくらませる気でしょうか!?

f:id:ankodama666:20211016005517j:plain

世界一くだらない「続きはCMの後で!」

 そのまさかでした。スタジオにいるハワード、まるで緊急ニュースでも入ってきたかのような深刻な顔で興奮気味に語っています。「スタッフから、インタビューの間中、トゥイギーが鼻をほじっていたと聞かされたんだ。ぼくはインタビューをしていて気づかなかったよ。彼、その手でみんなと握手をしてたんだ。ぼくなんて二回も握手した上、自分の顔を触っちゃったんだけど」。

f:id:ankodama666:20211016012504j:plain

信じられないよ

 ロビンも、「彼、みんなと握手を…」と、驚きあきれている様子。気配り満点の彼女も、さすがに今回の事態には気づけなかったようです。

f:id:ankodama666:20211016012905j:plain

笑うしかないわ

 「嘘だよね? 本当に確かなの?」とハワードがまだ疑っている中、さっき振り向いていたあの番組スタッフが登場します。

f:id:ankodama666:20211016013537j:plain

最悪だよ!

 「ぼくも気づかなかったけど、彼らと握手して別れた後、同僚のガンジーに言われたんだ。トイレに駆けこんで、ゴシゴシ手を洗ったよ」。”被害者仲間”の悲痛な証言に、ハワード、もはや叫び声をあげています。「あの役立たずの太っちょ野郎め、なんですぐに言わなかったんだ?」。というわけで今度は、事態に気づいていながら、なぜか黙っていたスタッフのガンジーがスタジオに呼ばれました。ビデオカメラを持参しています。さっき、カメラ越しに声をかけていたのが、きっとこの彼ですね。肩書はアソシエイト・プロデューサーとなっていますが、カメラマンも兼ねているのでしょうか。

f:id:ankodama666:20211016015239j:plain

超怒られそうな雰囲気

 大急ぎで席に着こうとするも、「おっと! 彼が使ってたヘッドフォンには触らないよ」とちゃっかり冷静なところを見せるガンジー。ハワードに「ちょっとは役に立ってくれよ! なんで言ってくれなかったんだ?」と怒鳴られて、あわてて説明を始めました。その第一声は、「気づいてると思って」。ガンジー、どうやら人の感情を逆なでするのが得意なタイプのようです。しっかり逆なでされたハワードに問い詰められ、「こんな感じでほじってたんだよ」と、わざわざトゥイギーの様子を再現してみせました(笑)。

f:id:ankodama666:20211016020949j:plain

こんなふうに…

 彼の提案で、撮影したばかりの映像をみんなで確認することになりました。映像が出るのを待つ間、ハワードが「その場で教えてくれてたら…」とがっくり肩を落としていますが、ここは完全に、気づかれそうで気づかれないギリギリのラインで攻めたトゥイギーの勝利ですね! ハワードたちと同様、トゥイギーと握手をしてしまったというロビンも、諦め顔です。そうこうしているうちに、映像の準備が整ったようです。もう、これ以上解説の必要はないでしょう…。後は、彼らの叫び声をお聞きください。

f:id:ankodama666:20211016023012j:plain

「オーマイゴッド!」

f:id:ankodama666:20211016023330j:plain

「嘘でしょ!?」

f:id:ankodama666:20211016023609j:plain

「まるで鼻を掘ってるみたいだよ! これを見逃すなんて! 悪魔みたいに鼻をほじってるじゃないか! 金でも採掘してるのか? 彼、狂ってるよ!!  あ、オジーはかっこいいね!」

 最後はロビンと二人で、「何も出てこなかったけど、少なくとも探すチャレンジをしたんだろう」「鼻の中の異物を、みんなにバレないように動かそうとしたのかも」とため息をつくハワードでした。

 いったいトゥイギー本人は、この放送をどんなふうに見たんでしょうね(笑)。こんな展開になるのを予想していたのか、それとも放送を見て初めて自分が大きく取り上げられていることを知ったのか…。いずれにせよ、きっと大笑いしながら楽しんだに違いありません。仕掛けたトゥイギーもすごいですが、逃さなかった番組サイドもすごいですね! というわけで、最高にばかばかしく、最高に面白い「ハワード・スターン・ショー」でした。

f:id:ankodama666:20211016031339j:plain

してやったり

★★目次★★