ボブキャットは現在、『Bobcat's Big Ass Show』(FX)という変てこな番組でホストを務めている。一方トゥイギーは、マリリン・マンソンの新作アルバム『The Mechanical Animals』(『The Dope Show』ほか収録)で異彩を放っている。つまり、ボブキャットもトゥイギーも、ありふれた並のエンターテイナーではないということだ。こんなふうに休みなく新境地を開拓していれば、二人の手はどうしても汚れてしまうに違いない――もちろん、足もだ。どんなに突飛なことをするにせよ、人というのはいつでも身だしなみを整えて、清潔にしていなければならない。彼らの手がなぜ汚れたのかはさておき。
記事がボリュームたっぷりなので、補足は少しだけにとどめましょう。まず、ラストでステージを燃やした「ジョン・スチュワート・ショー」は、1995年6月にマリリン・マンソンが出演したテレビ番組。『Lunchbox』を演奏中、MV同様にランチボックスを燃やしています。「Marilyn Manson - Jon Stewart Show」で検索すると、動画サイトで映像が見つかると思います。燃やす直前の、トゥイギーのホラーな動きにもご注目ください。
T:一度、黒人の女性コーラスたちと、コーラスをやるポルノ女優たちがやって来たことがあるよ。同じ日に来たんだ。『I Don't Like The Drugs (But The Drugs Like Me)』っていう曲なんだけど、最後のギターソロを弾いていたのは、ぼくの友達のデイヴ・ナヴァロだったんだ。さらに、(70年代のティーン・アイドル)レイフ・ギャレットがスタジオに入ってきてさ。コーラス隊とポルノ女優、デイブ・ナヴァロ、レイフ・ギャレットが一堂に会してるなんて、かなり奇妙な光景だったよ。
――『I Don't Like The Drugs (But The Drugs Like Me)』は完全にディスコ・ナンバーですね。KC&ザ・サンシャイン・バンドっぽくて、素晴らしい!
T:え? 『Kiss Meets The Phantom Of The Park(邦題:地獄の復活)』の続編ってこと? そういえばジーン・シモンズに、“今日はマリリン・マンソンにおれたちの姿を見せつけにやってきたぜ”って言われたことがあったな。すごいセリフだよね。まわりからは“あんなこと言われて、怒らないの?”と言われたけど、怒るわけないよ。それどころか、最高にうれしかった。KISSがぼくのために戻ってきてくれたなんて! ジーン・シモンズは“お前たちにおれたちの姿を見せてやるぜ。みんなに注目されるように、ちょっとはメーキャップしろよ”とか言ってたけど、彼らの方こそ、『Animalize(邦題:アニマライズ)』の頃に戻るべきだよ。それが彼らのやるべきことなんだ。KISSはもう一度『Heaven's On Fire』をやるべきだよ。それから『Lick It Up(邦題:地獄の回想)』と、『Animalize』もね。
T:ある日、家でヴァン・ヘイレンのファースト・アルバムかなにかを聴いてたんだ。気をつけてほしいんだけど、ぼくが聴いてたのはファーストの『Van Halen(邦題:炎の導火線)』だよ。時期的に、彼らはすでに『1984』を発売してたんだけどね。自分が影響を受けたものを隠したがる人が多いけど、ぼくはメタルで育ったのさ。モトリー・クルーの『Shout At The Devil』とアイアン・メイデンの『Piece Of Mind(邦題:頭脳改革)』がきっかけで、ロックスターになりたいと思うようになったよ。そして13歳の時、母がぼくの部屋に入ってきて、“ギターかドラムセットを買ってあげようか?”って言ってくれたんだ。ギターが欲しいって答えたんだけど、大正解だったね。レッスンを受けたりはしなかったけど、家にはいつもギターがあって、ジューダス・プリーストやアイアン・メイデン、モトリー・クルー、それから初期のメタリカのコピーをしていたよ。15歳になる頃には、友達の家でやってるいろんなバンドに参加して、みんなでお気に入りの曲を演奏してた。そういうのから始まって、最終的には自分でバンドを始めたんだ。
マリリン・マンソン加入前からトゥイギー(トゥイグ)と呼ばれていたということは、筆者は初めて知りました。本家ツイッギーとの共演、きっと一族全員鼻が高かったに違いありません。彼女のリクエストでカバーしたという『I Only Want To Be With You』。何度聴いても“なんじゃこりゃ”という珍作ですが、不思議な愛嬌があって憎めないので、“なんじゃこりゃ”という気分を味わいたい方はぜひチェックしてみてください。ちなみにアーティスト名は「Twiggy & Twiggy」。そのまんまです(笑)。
ニューアルバム『Mechanical Animals』のリリースにより、バンドの人気はさらに高まりそうだ。本作は、マリリン・マンソンを発掘し、自身のレーベルNothing Recordsと契約を結んでこれまで彼らの全作品をプロデュースしてきたトレント・レズナー(ナイン・インチ・ネイルズ)の手を離れて制作された初のアルバムである。彼に代わってサウンドガーデンのプロデューサーであるマイケル・ベインホーンが起用され、驚くような仕掛けがたっぷり詰めこまれている。まず、『Antichrist Superstar』の特徴だったあのポスト・インダストリアル的で拷問のようなシャウトや、渦巻くスラッシュギターの音は今回ほぼ使われていない。代わりに、グラムロックやディスコ、80年代初期シンセポップなど軽めのスタイルを取り入れ、キャッチーなメロディ中心のアプローチに挑戦。これらを融合させて、ダークなコンセプト・アルバムに仕上げている。前作で評価されたサタニズムもほとんど登場せず、古き良き時代の“セックス、ドラッグ&ロックンロール”に重きをおいているように見える。アルバムからの初シングルとなる『The Dope Show』では、セクシーで悩ましいビートとワウ・ペダルで歪ませた不穏なギターサウンドにのせて、“We're all stars in the dope show(ぼくたちはドープ・ショウのスターだ)”と歌われる。
T:作り方は曲によって違うんだ。一つのアイディアをふくらませながら一緒に作っていくこともあるし、ぼくたちの中で意味が通じるコードをいくつか思いついて、それをもとに組み立てていくこともあるよ。『The Dope Show』なんて、5分ぐらいで書き上げちゃったんだ。だからお気に入りの曲なんだけどね。このアルバムの他の曲、たとえば『The Great Big White World』や『Mechanical Animals』あたりは途中で何度か形が変わったんだけど、『The Dope Show』は最初からほぼ完成バージョンに近い形だったよ。『The Beautiful People』を作った時と同じ感じだね。『I Wanna Disappear』(筆者注:アルバム収録タイトル『I Want To Disappear』)も、あっという間にできた。ぱっと作れた曲は気に入ってるんだ。正直で、ウソがない感じがするから。
ラミレス(以下R):60年代に活躍したピーター&ゴードンのピーター・アッシャーは知ってる? デイヴィッド・レターマンの番組のバックステージで彼の奥さんに会ったんだ。レターマンと友達か何かだったらしくて、娘さんがマリリン・マンソンを好きだってことで来てたんだよ。彼女は本物のツイッギーと知り合いで、今ロスの自宅にツイッギーを泊めてるって言うんだ。思わず「ぼくもロスで遊ぶのが好きなんです」って反応したら、彼女が「あなたたち、一緒に過ごすべきだわ」って言ってくれてね。それで実現したんだ。自分の名前の由来になった人に会えるなんて、すごく素敵だったよ。マリリン・マンソンのアルバムを制作中だったんだけど、二、三日ひとりでいる時間があったから、彼女に「何か歌わない?」って声をかけたんだ。ダスティ・スプリングフィールドが好きだっていうから、大急ぎで『I Only Want To Be With You』の別バージョンの音源を作って、歌ってもらったよ。ベイ・シティ・ローラーズもこの曲をカバーしてるんだよね。ぼくがやってるのを見て、スマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンは「それ、他の人もカバーしてるけど知らないの?」って言ってたけど。ぼくにとっては彼女の声をテープに録ること、そしてそのバックでぼくが演奏してるってことが重要だったんだ。ツイッギーが60年代にどれほど大きな存在だったかは、意識しないようにしてた。マーチャンダイズ展開の元祖といえば、やっぱりビートルズとツイッギーだよね。大量にグッズが発売された最初のポップスターの一人だと思うよ。